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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2013/06/05

熊谷POレポート アートプロジェクト考察日記(その2)

「朝顔とともに育つ。」

東京アートポイント計画では、東京都内各地で事業を実施するばかりではなく、プログラムを実践していくための知を蓄えるべくTokyo ArtResearch Lab内で様々な研究プログラムを実施しています。その中で私が担当しているもののなかに『アートプロジェクトのインパクトリサーチ』があります。こちらでは「アートプロジェクト」というものが、長期的に見て、地域や関わる人々にどのような影響を与えたかについて、専門家チームとともにリサーチしていきます。

そのため、6月1日(土)にリサーチ対象である日比野克彦氏監修の『明後日朝顔プロジェクト』※生誕の地である莇平(あざみひら)に行き、今年のプロジェクトの立ち上げイベントである朝顔の苗植えに参加してきました。10年間続いたこのプロジェクトについて関係者の話を聞き、その影響についてリサーチすることにより、アートプロジェクトというものが持ちうるインパクトが、言葉として紡がれ、広く共有可能になるはずです。そしてここで得た知を、様々なプロジェクトに投入することによって、よりよい実践を可能にしていきます。

ところで、最初の回に「アートプロジェクトとは何なのだろう?」という問いかけをしましたが、その答えを,求める前に、身体的に感じている「アートプロジェクト」の豊かさを記述することが必要な気がしています。その豊かさには様々なレイヤーがあると思いますが、今回はその深度について感じたことを書いてみます。

例えば今回のイベント。写真のように、とてもたくさんの人が参加しています。関係者によれば、越後妻有トリエンナーレの実施年以外にこれほどの人が集まり、地元の方々が顔を出す集落はないのだとか。

莇平苗植え

実際、朝顔のためのロープ張りも苗植えも集落の方々の協力なくしては成立しません。ロープの結び方一つをとっても、日比野氏とともに東京からやってきた学生たちには難しく、何度も教えてもらいながら、ようやく出来るといったところ。学生は常駐しているわけではないため、朝顔の水やりも地元の方に頼らざるをえません。また、強風が吹いた場合には、ロープの張り具合を調整することも。地元の方々が、そういった日々のお世話に関して細かくケアしてくださっているからこそ、毎年朝顔の花が咲き、種を落とすことができるのです。こういったことも、現場に訪れ、人と話し、身をもって体験しなければ、なかなか実感がわきません。

莇平に訪れたアーティスト日比野克彦氏をきっかけにして活動が始まり、さらにその活動自体が地域コミュニティに深く根をおろすことができたからこそ、この『明後日朝顔』というプロジェクトは10年間も続くことができたのではないでしょうか。地域の人々が、ある活動をあるタイミングで、「自分事」としてとらえ、動いていく。このような状況があるからこそ、豊かで持続性あるプロジェクトが展開されうるのでしょう。もう一方で、アーティストや学生たちが1年間を通して主な行事ごとに集落を訪れることで、ある種の新鮮さが定期的に持ち込まれます。そこには当然小さな摩擦もあるはずですが、この関わる人々の微妙なバランスと関係性が、プロジェクト自体の緊張感を保ち、ゆるやかに活動にドライブをかけているようです。そして、そういった微妙な「何か」が記録され、活動の豊かさが輪郭を持つことによって初めて、そのインパクトについて語ることができるようになるはずです。

奇跡的なバランスを維持してきた明後日朝顔のプロジェクト。この活動の10年間のインパクトを探り、様々な現場に還元すべく、今年も意欲的なリサーチが動きだしました。これからどうなっていくか、とても楽しみです。

※『大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ2003』をきっかけに生まれたプロジェクト。以来、廃校になった小学校を舞台に毎年朝顔が育てられている。

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