ACT取材ノート
東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。
2016/09/21
外国人向けの日本の伝統文化体験プログラム「江戸手描提灯」文字入れ体験で職人技を学ぼう
アーツカウンシル東京が主催する日本の伝統文化に触れられるプログラムの一貫で、8月20〜21日の土日に「江戸手描提灯」の文字入れ体験と「江戸簾」コースター作成のワークショップが行われました。
この伝統文化体験プログラムは、日本の本格的な文化に触れられるイベントで、主に日本に来る外国人に人気です。様々なジャンルの伝統芸能・文化を、気軽にお試し体験できます。
今回は、20日にMOSHI MOSHI BOX 原宿観光案内所で行われた「江戸手描提灯」文字入れ体験の様子をお届けします。
受け継がれる伝統技術「江戸手描提灯」とは
高いところに吊るされることの多い高張提灯(たかはりちょうちん)
室町時代に籠提灯(かごちょうちん)が使われたところから始まったと言われる、江戸手描提灯。特徴は、江戸文字と言われる太く力強い筆使いです。細い線だと中にロウソクを入れた時、文字が見えづらくなることから、はっきりと目立つように、このようなスタイルに洗練されていきました。
昔から提灯は、和紙を張る人や骨組みを組む人など分業制で作られており、東京には文字入れをする江戸手描提灯の職人さんがいます。2016年8月現在では都内の、墨田区、葛飾区、荒川区、台東区などを中心に50人ほどの職人たちが仕事をしています。都内のお祭りに使われる提灯の多くは、現在でもこの江戸手描提灯だそうです。
「江戸手描提灯」の文字を書いてみよう!
ワークショップでは、机に置けるほどのサイズの小さな弓張提灯を使用します。いろいろな国から訪れた方々が参加していたため、最初に日本語と英語の通訳スタッフによって、手順の説明がありました。
赤い半纏を着ているのが通訳スタッフ、オレンジの半纏が東京提灯業組合の職人さん
はじめに、提灯に書く文字を決めます。自分の好きな漢字や名前を書く方もいれば、用意された一覧から選ぶ方もいました。
別紙に見本を先生に書いていただき、それを見ながら鉛筆で提灯の表面に下書きをします。そして、黒い絵の具でその線をなぞっていきます。
筆者も体験。表面は凹凸で、特に縦の直線を描くのが見ている以上に難しいのです
輪郭が描けたら、下書きをした鉛筆部分を消し、中に色をつけていきます。本来は墨で塗りつぶすのですが、今回は海外からの参加者の方が多いのもあり、ビビッドカラーの絵の具がメインで並んでいました。
できあがったら、乾燥させて折りたたみ、完成です。
「江戸手描提灯」で職人技のスゴさを体感
最後に、参加者の方々に職人の技術に触れた感想を伺いました。
「日本のカルチャーが大好きで、イラストなどを描くのも得意だったから、今回のプログラムに参加するのが楽しみでした」という、こちらの日本在住のイギリス人女性。日本での生活をブログに書いて発信しているとのことで、作っているところをYoutubeにアップするため、ご自身の手元をずっと撮影されていました。
こちらの男女はインド出身で、一緒に参加されていました。女性は「美」、男性は「日本人男性の名前によく使われていたから」との理由で「勇」という文字を選んでいました。漢字は、そのまま文字として書くと難しいけれど、今回のように塗り絵の手法で描いてみると、その意味や形とじっくり向き合えるため楽しかったとお二人とも話していました。
こちらの中国人の女性は「漢字は日常的に使いますが、提灯に描くのでは全然違いました」とのこと。提灯に雄々しく描かれた文字は、熟練の職人技の賜物なのです。
日本人の方々も参加していました
アーツカウンシル東京では江戸手描提灯の文字入れ体験以外にも、日本舞踊や演芸など、訪日外国人向けの伝統文化体験プログラムを数多く行っています。
10月に開催する華道体験・東京くみひも・着物着付けの体験プログラムも、熟練の技に触れられる貴重な機会です。興味のあるイベントを見つけ、日本の伝統文化を体験してみてはいかがでしょうか。
今後の伝統文化体験プログラムの予定
「伝統文化体験プログラム」では、今回ご紹介したプログラムの他にも様々なプログラムを実施しています。詳しくはこちら
写真:鈴木穣蔵
取材・文:立花実咲