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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

F/T16 special

フェスティバル/トーキョー(F/T)16 プログラム・コーディネーターで、ドラマトゥルクの横堀応彦が、今年のF/Tの見どころを独自の視点でお伝えする限定ブログ。

2016/12/08

若い世代へ、知識や経験を惜しみなく伝えるヨーロッパの巨匠たち

世界には色々なフェスティバルがありますが、毎年7月~8月にウィーンで行われるイムプルス・ダンス・フェスティバルでは1か月の会期のあいだに250ものワークショップが開催されています。私もこの夏に訪れて、有名振付家のワークショップを受けに世界中から多くのダンサーが集まっている熱気を肌で感じることが出来ました(その模様は一部映像でも見ることができます)。

このように作品の上演だけでなくワークショップやトークの場を設けることで、作り手と観客との双方向のコミュニケーションが可能になります。今年のフェスティバル/トーキョー(F/T)でも参加アーティストによるワークショップやトークが行われています。特にメインプログラムとして上演した『Woodcutters –伐採–』の演出家クリスチャン・ルパがF/Tキャンパスに参加した大学生向けに行ったスペシャルトークでは、作品の内容や創作プロセスに関する活発な議論が交わされ、若い世代へ自身の知識を惜しみなく伝えようとする姿勢には感銘を受けました。

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Photo: Kazuya Kato

今年のF/Tではヨーロッパ演劇の巨匠であるルパ(1943年生まれ)と並び、ドイツのタンツテアターを牽引してきたダンサー・振付家のスザンネ・リンケ(1944年生まれ)を招聘し「ドーレ・ホイヤーに捧ぐ『人間の激情』『アフェクテ』『エフェクテ』」を上演します(12月9日〜11日、あうるすぽっとにて)。ドイツの舞踊評論家ヨッヘン・シュミットは、タンツテアターをリードした人物としてピナ・バウシュ、ゲルハルト・ボーナー、ヨハン・クレスニク、ラインヒルト・ホフマンとスザンネ・リンケの5人を挙げていますが、このうちリンケは未だ現役で活動している最後の振付家です。リンケはこれまでブレーメン州立劇場(1994年~2000年)などで自身のカンパニーを率いてきましたが、昨年2015年にトリアー市立劇場のダンス部門芸術監督に就任してからは新たなカンパニーを立ち上げて創作活動を行っています。12月4日~6日には公演に先立ちリンケによるワークショップも行われており、タンツテアターの歴史を次の世代へと繋げていこうとする強い思いが感じられます。

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今回上演される作品はタイトルにも冠されている通り、ドイツ表現主義舞踊の振付家ドーレ・ホイヤーへのオマージュとして、ホイヤーの代表作である『人間の激情(Affectos humanos)』の再構成および同作品(アフェクトゥス・フマーノス)から想を得た『アフェクテ』と『エフェクテ』の計3作品が上演されます。リンケ本人にとってホイヤーは「デヴィル!」だったようです(松澤慶信のインタビュー記事による)が、師から受け継いだダンスをさらに若いダンサーたちに手渡した今回の上演を見逃すわけにはいきません! F/T公式ウェブサイトの『FT Focus』にはリンケ本人とのメールインタビュー記事もアップされていますので、是非そちらもご覧ください。

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