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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

DANCE 360 ー 舞踊分野の振興策に関する有識者ヒアリング

今後の舞踊振興に向けた手掛かりを探るため、総勢30名・団体にわたる舞踊分野の多様な関係者や、幅広い社会層の有識者へのヒアリングを実施しました。舞踊芸術をめぐる様々な意見を共有します。

2018/05/28

DANCE 360 ― 舞踊分野の振興策に関する有識者ヒアリング(4)タイムアウト東京株式会社 代表取締役 伏谷博之氏

2016年12月から2017年2月までアーツカウンシル東京で実施した、舞踊分野の多様な関係者や幅広い社会層の有識者へのヒアリングをインタビュー形式で掲載します。

DANCE 360 ― 舞踊分野の振興策に関する有識者ヒアリング(4)
タイムアウト東京株式会社 代表取締役 伏谷博之氏
インタビュアー:アーツカウンシル東京、宮久保真紀(Dance New Airチーフ・プロデューサー)

(2016年12月28日)


–日本及び東京の芸術文化の現状について

伏谷:クールジャパンの取り組みも、ポップカルチャーとか、オタクの分野でいえばサブカルチャーまで入るかもしれないですけど、そういったところにフォーカスされがちという状況で、例えば村上隆さんのように、エスタブリッシュメントというか、権威のある、いわゆるアートの世界で認められている人たちの領域と、2つに分かれていて、両方ちゃんとやらないとダメなんじゃないのという話が私の周りでも言われ始めていますし、私も思っています。
クールジャパンと言っているのに、なぜアニメやオタクカルチャーだけなの?という批判はあったけど、では具体的に、ハイアートとストリートアートを結びつけていきましょう、両方プロモートしていきましょう、という声までは上がってなかったと思います。それが上がり始めてきたと思いますね。内閣府がやっているクールジャパン戦略会議に(経営コンサルティング会社の)A.T.カーニーの梅澤(高明) さん※1 や、ハイアートの文脈で長谷川祐子さん※2 らが初めて入りました。きゃりーぱみゅぱみゅの事務所(アソビシステム※3)の中川悠介社長のような、原宿系、「kawaii」系の人たちがクールジャパンの顔として今までは入っていたんだけれども、ハイアートの世界の人たちもそこにようやく混じるようになりました。

※1 梅澤高明:A.T. カーニー日本法人会長、WBSコメンテーター、クールジャパン機構社外取締役、グロービス社外取締役。NEXTOKYO、内閣府・税制調査会、同・知財戦略ビジョン専門調査会、経産省・産業競争力とデザイン研究会。著書「グローバルエリートの仕事作法」「最強のシナリオプランニング」。(参照: https://twitter.com/takumezawa
※2 長谷川祐子:キュレーター。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授、東京都現代美術館参事。
※3 ASOBISYSTEM(アソビシステム株式会社):2007年に設立し、日本独自の文化である“HARAJUKU CULTURE”に焦点をあて、ファッション・音楽・ライフスタイルといった、原宿の街が生み出すコンテンツをサポートして成長させ、国内はもとより、世界に向けて発信している。(参照:https://asobisystem.com/

今まではアニメとかポップカルチャーと伝統芸能というような両極端しかなくて、この間が全然なかったわけですよね。

長谷川さんがものすごく高いレベルで海外で認められているアートを例示しながら、「kawaii(かわいい)」とかアニメなども大切なコンテンツで素晴らしいけれども、それだけでいいのか、ということを初めて語り始めている。今まではアニメとかポップカルチャーと伝統芸能というような両極端しかなくて、この間が全然なかったわけですよね。そこが今やっと。だから、そこはいい方向に向いていると思うし、後押しするべきじゃないかなという気がしますね。

–今まであまり見られていなかったところが逆に注目されるようになってきた状況について。

私が「タイムアウト」で接している海外の人たちがよく話すのは、例えば日本文化がすごく好きだけど逆に「kawaii」とかの話が出てくると、途端に「そんなこと言っているから日本はダメなんだ」という感じになる。そういう外国人は多いんです。
インバウンド(政策)では、外国人にアドバイザーとして入ってほしいと言われますが、日本の地方に住んで、すごくその生活が好きだというような人は、どちらかというと本当の伝統的な日本とか、昔ながらの日本とかを愛していて住み着いたというような人が多いから、話の調子を合わせるのが意外と難しかったりするんですよね。そこをブリッジすることで、もう少しプロダクティブな話ができるようになるのかなという感じになっていることが一つ。
それから、カルチャーとかコンテンツで、日本の経済ももう一回盛り上がっていきましょうと言っているわりには、その世界で食えている人が減っているよね、という問題がやっぱりあって、そこは音楽ももちろんそうだし、アートの世界でも同じことが起きているんじゃないかなと思います。
先日もある会合で、今年は映画のヒット作も結構あったけど、あれだけのヒットで監督や製作者らにお金がなかなか行かないということが一つの問題として話に挙がっていました。クールジャパンの戦略とか都の取り組みなどでも、もともとの業界のルールや慣習というようなものを少し変えていくサポートをしないと。そもそもコンテンツを売ると言っているけど、誰がつくっているんでしたっけというところがおざなりになり過ぎているかもしれないですよね。

(支援するだけでなく活動する上での経済的なことを)アーティスト自身に学んでもらうというか、啓蒙するようなことも必要かもしれないですよね。

–支援の在り方も、戦略的に、労働環境やそういったものも含めて取り組んだほうがよいと。

伏谷:グローバル市場に届けるコンテンツをつくるスタジオはやっぱり海外にあって、日本国内でそういったものがつくられているわけではない。でも、今までは例えば、韓国や中国、ニュージーランドなどのスタジオのほうがコスパが良かったということがあったのかもしれないんだけど、今や日本もそんなに高いわけではないじゃないですか。これは言っちゃいけないかもですが(笑)。だから、今まではそれを理由にできていたけど、これからは、日本も高いわけじゃないのに何で日本につくらなかったんだっけ、というような話をしていかないといけないのかもしれないですよね。

–つくる人を支えるということに、今はまだなっていない状況ということですね。

伏谷:例えば海外であるアニメがヒットしました。では、それに憧れて、アニメのクリエーターになりたいという人たちが、日本に来て何をするのか。まだまだ(海外の人を受け入れる)場所がつくられていない気がするんですよね。今、齋藤貴弘さん(弁護士)が取り組んでいるのですが、すし職人になりたいという人が日本に来ても、すし職人になるまでの修行期間のビザはどうするんだというような、業界の課題があったりするわけじゃないですか。そういうところをオープンに変えていかないと。日本で学んで、世界に行って、活躍する。そして日本も潤っていくというような、そういうすごく大きいエコシステムをつくる設計がないとダメなんだろうなとは思いますよね。
…日本ではタコ部屋にいる時代から始まって、売れてきたら個室がもらえて、さらにスタジオもらえてというような出世魚的な仕掛けだと思うのですが、それがだんだん時代に馴染まない部分も出てきているのかもしれないですね。そういう意味では、特に成功したときの報酬というのが少ないと思います。売れたら投資回収ができると見込み、売れていない頃にものすごく投資をしてもらえるという仕掛けだったら、アーティストやクリエーターらも納得できると思うのですが。
…創作のモチベーションと、お金が必要だよねというところが、どうしても日本は美徳的に分けられてしまうから、村上隆さんみたいに、お金の話をし始めるとすごいバッシング受けちゃったりする。でも、やっぱりお金がないと創作活動を続けられない。だから、そこはそういう仕組みをサポートするようなことがあってもいいのかなという気はしますね。
…(支援するだけでなく活動する上での経済的なことを)アーティスト自身に学んでもらうというか、啓蒙するようなことも必要かもしれないですよね。例えば、ヨーロッパだとこうなっているよ、アメリカだとこうなっている、アジアだとこうなっている、でも日本は今こんな感じ、どう思う?というようなことをアーティストも知れば、「じゃあ俺はヨーロッパでやったほうが向いているかもしれないな」とか「やっぱり日本の仕組みを変えたほうがいいよね」というような話になるかもしれません。そういう情報も提供してあげないといけないのかもしれないですよね。

–芸術や文化というものが社会の中でどのような位置づけで、どのような強みや存在意義があると考えますか。

伏谷:文化的な活動というのが、人間にしかできないことという意味でいえば、大事なものとは思いますよね。もちろん経済活動も犬とか猫とかやらないですけど(笑)。経済活動と違って、別になくてもいいけど、何か必要だよねというところで、より人間の付加価値の部分で大きい位置を占めるのかなと思いますよね。
…焼き物もそうですけど、ふだん使うものと芸術的な焼き物というものの差が、あんまりちゃんと認識されていないので、芸術とか芸能とかのポジションをしっかり確立しづらい。
…アーティストというのを一つの職業として確立するという部分がすごく難しいのかなと思います。その業界や世界では確立されていても、一般的な認知がなかなか進まないのかなと。だから、クールジャパンとかインバウンドの戦略でも、どうしてもそこが抜けちゃっているんじゃないかなという気がするんですよね。例えば瀬戸内国際芸術祭とか地方でやっている大きな芸術祭というのは、やっぱり外国人をめちゃめちゃ呼んでいるし、世界に向けた日本のプロモーションという意味では、最も貢献しているものの一つだと思うんですよね。

お芝居やダンスは、実際現場に行くとすごく入っていると思うのですが、情報があまり流通してないですよね。要するに、好きな人たちだけでいっぱいになっているという感じなんだと思うのですが

–今、地域の芸術祭がまちづくりの文脈で活用されている面があると思うのですが、クールジャパンなどの国レベルの文化戦略と少し乖離があるように感じる面もあります。コンセプトが重なるような、共通項を見出せていないということなのでしょうか。

伏谷:これから来年以降、地域アート、まちおこしというようなものが地方に乱立してくると思うんですよね。そうするとアートという言葉がすごくデフレしていくわけじゃないですか(笑)。そうすると、自分は芸術の世界にいるという人とか、評論家の人にとっては、“やっぱりあれはアートじゃないよね、まちでやっている遊びでしょう”というような感じになってしまうだろうし。でも、“それとこれは、ここは一緒で、ここは違うんです”と説明できる評論家の人もいないから、そうすると、やっぱり価値がわからなくなるんですよね。自治体の仲間でやっているアートという名前のついた、ちょっとクリエイティブなまちおこしと、瀬戸内国際芸術祭は何が違うんでしょうか、というようなところがわからないままに、こっち(前者)がどんどん増えていくと思うんですよ。本当のアート文脈のキュレーターが入る案件って少ないと思うんですね。
…もっと高尚な世界とのギャップというのが常にあって、そこをどうやって埋めるべきか、埋めなくてもいいのかということがとてもわかりづらいなと思います。ヨーロッパだと、王室とか伯爵にはアートがあって、庶民にはなかったわけで、それに対してカウンターで、ストリートアートが出てくるわけだけれども。そういう文脈が日本ってないから。そこが難しいなと思いますよね。もったいないなと思うんですよね。
…やっぱり日本人の美的レベル、感覚のレベルは、庶民レベルで相当高いと、海外の人が日本に来ると思うわけですよ。それは僕はやっぱりすごい強みだと思うし、大事なことだと思います。でも逆に、日常生活がそうなので、ハイアートとの違いのつけ方は難しいなと思いますよね。だからうまくメディアを使って、プロモーションや施策でこことここをつなげば、わっと入っていくと思うんですよね。もともとそういう感性は持っている人たちだから、自分ごとで近づいてくれば。

–「タイムアウト」のコンテンツで人気が高いトピック、一番よく注目されているものはどういうものですか。

伏谷:やっぱりフードですよね。一番人気は。食はやっぱり毎日食べるので、どこ行こうかなと皆さん思っているので、食は一番人気ですよね。でも、アートとか音楽ももちろん人気があります。ただ、一番難しいのは外国人がチケットを買う方法がないという。これがいま一番の課題になっていると思います。

–アート、カルチャーの中で、音楽、演劇、美術、ダンス、日本の伝統文化とかもあると思うのですが、その中で一番人気が高いのは何ですか。

伏谷:やっぱり伝統ものは、日本に来たら、東京に来たら触れてみたいという人がヨーロッパを中心にいると思うので、安定した人気があります。一方で、日本のポップカルチャーというのは、若い人を中心に本当に人気があるので、そこの情報を欲しがっていると思いますね。

–いろいろなジャンルがある中で、ダンス分野についてはどんな印象がありますか。

伏谷:ノンバーバルな表現なので、非常に伝わりやすいというところでは強みがあるなというのと、あと、日本的な動き。(日本)舞踊であるとか、能の動きというのと、西洋のものというのは全く違うと思うので、そういう日本人の動きというのには、外国人は実は、振る舞い含めて、相当興味があるんじゃないかと思っていますね。
外国人の方々に聞くと、日本に来る時、実はみんなドキドキしてるんですよ。そう見えないだけで。マナーはこれで合っているのかとか、ここでこういうふうな姿勢でいていいのかなとか、地下鉄って座るときってこれでいいのかなとか、エスカレーターに乗っているときって、ここ空けなくていいのかなとか、そういうのを見ながら、みんな(日本人の作法を)真似してるんですよ。だから、やっぱりそういったところ(日本の文化、慣習)にはすごく興味があるので、そこをうまく伝えるというのは、私は引きはあると思いますけどね。日本独自のものと、グローバルな尺度で安心して見られるパフォーマンスもあると思うので、その両方をうまく見せていくというのが大切なのかなと思いますよね。

–「タイムアウト」は都市ごとの特集があると思いますが、日本の文化以外の海外の文化の紹介のされ方や、流通はどのようにお感じになってらっしゃいますか。

伏谷:そうですね。海外の「タイムアウト」と比べて、ちょっと日本で少ないというか、うちも取り組めてないなと思うのは、やっぱりシアターものですかね。やっぱりお芝居やダンスは、実際現場に行くとすごく(客が)入っていると思うのですが、情報があまり流通してないですよね。要するに、好きな人たちだけでいっぱいになっているという感じだと思うのですが、そういったものが海外の「タイムアウト」はかなり網羅しているように思いますね。今はあんまりやってないんですけど、「タイムアウト」立ち上げのころは、ほかの情報誌、例えば「(TOKYO) WALKER」(株式会社KADOKAWAが運営するタウンガイド)さんとかとも差別化しなきゃいけないとので、一時期バレエとかそういったハイアートものの情報をあえて取り上げていたんですけど、そういうのはすごく食いつきがいいんですよ。

アートの世界もそういうロングテールのビジネスをどういうふうにつくって、メジャーな人たちのパフォーミングアーツを初めて見た人に、こういう地道な活動をされているすばらしいパフォーマンスをする人たちを、どうつなげていくかという作業をしないといけないんですよね。

–海外のビッグネームが来日公演をするとすごいポンと売れたりする。日本の人気の高いアーティスト公演も売れるんですけど、一方で若手や中堅のちょっとマニアックな層になると、情報のチャンネルも少ないし、格差が出ているという状況があります。

伏谷:アマゾンなんかで言われているロングテールという形にならないと、インディペンデントなところとか、ファンの母数は少ないけど、いいものをやっているという人たちにスポットが当たらないんですよね。
…タワレコ(タワーレコード)に買いに来たら、視聴コーナーで渋谷のコアなラッパーのCDとかが視聴できるようになっているんです。聞いてみると、あっ、これ、いいじゃないとなって。今までテレビに出るようなトップアーティストしか見てない人が、世の中であんまり知られてないけど渋谷ですごいと言われているラッパーのCDを始めて手にとって買う、というような仕掛けなんですよね。これで今度はじゃ、洋楽のヒップホップってどうなんだろうというような感じにどんどんアリ地獄に落としていくというのがタワレコの仕組みなんですよ(笑)。アートの世界を見ていると、それがあんまりないんですよね。どんどんはまらせていくという仕掛けがやっぱりないなと見ていて思いますね。
結局、何が起きるかというと、タワレコのお客さんってほかのレコード屋さんに比べると、月に音楽に使うお金が倍とか3倍の人たちが集まってくるわけです。そうしたら音楽マーケットがガーンと冷えたところで、そっちは残るじゃないですか。でも流行りものだけが集まっていると、そうはならない。やっぱり最初に淘汰されていくというふうになっていくので、そういう意味では、アートの世界もそういうロングテールのビジネスをどういうふうにつくって、メジャーな人たちのパフォーミングアーツを初めて見た人に、こういう地道な活動をされているすばらしいパフォーマンスをする人たちを、どうつなげていくかという作業をしないといけないんですよね。
…そこは育てなきゃいけない部分だと思うんですよ。音楽もやっぱり今、若い人たちが離れちゃっていて、どうしようというような話になっているんです。例えばきゃりーぱみゅぱみゅの事務所は何をやっているかというと、もう本当に7年とか8年前から、クラブカルチャーをベースにしているんですね。自分たちがそういうのを好きで、きゃりーもそこから生まれてきたし、そこからビジネスになっているから、そういうカルチャーをやっぱり育てていかなきゃいけないということで、昼間に中学生とか小学生の高学年の子たちが遊びに来れる「TAKENOKO!!!」というクラブイベントをもう10年近くやっているんですよ。“育てる”という視点がある。きゃりーとか中田ヤスタカとか、所属トップアーティストが出て、DJやったりするわけですよ。そうすると、中学校とか小学校のときに好きになっているから、高校を卒業しても、イベントを打つと成長したお客さんとして来てくれるわけじゃないですか。自分たちで育てたお客さんが来るわけですよね。それがまた友達を誘ってくるというようにだんだんなって。もう一つは、サカナクションというバンドがリキッドルーム(恵比寿にあるライブハウス)で「NF」というイベントをずっとやっていて、彼らもそのバンドが好きで集まっている人たちに、自分たちはこういう音楽が好きなんだ、こういうカルチャーが好きなんだというのを啓蒙していくイベントにしているわけですよね。
…そういう(未来の観客やクリエイターの)育成というようなことをやっているアーティストは、僕はその2つしか例を知らないけど、やっぱりいるんですよね。だから、アートに関してもそういうことをやるのは必要かもしれないですよね。

–アーツカウンシル東京もパフォーミングアーツ関係だと「パフォーマンスキッズ・トーキョー」という事業をやっています。

伏谷:それをポピュラーなアーティストがやるというのが大事かもしれないですね。うん。変な話、ワークショップはいっぱいあるじゃないですか。でも、そのワークショップに行く動機を、例えば、森山未來さんとかがやるとかだったら注目が増して来られるわけです。そのワークショップ自体に興味を持たせる、その辺の工夫ですよね。

–普通の市民生活の中でダンスは魅力を持っているか。どういう受けとめられ方をしているものか、客観的にはどういうふうに思われますか?

伏谷:盆踊りとかはありますが、機会がないというか、ちょっと前の話に戻りますけど、自分事にならないんですよね。(音楽と比べると)全然つながってないんだと思うんですよね。

–80年代後半ぐらいから90年代、00年代にかけて、ダンスシーンが盛り上がって、その当時の創り手が今のシーンの中核を担ってはいる。そこが実は停滞している現状があると思います。公的な劇場も予算は減る一方で、大きなレベルでの仕掛けも弱まってきてしまっている。同時にアーティスト主体の活動も以前に比べてスケールが小さくなってきている傾向です。

伏谷:なるほど。やっぱりあの当時の、要するに、西武とかパルコとか、バブルのころにメセナという言葉が流行って、文化事業をやっていた時期とはどうしても比較しづらいとは思うんですよね。あとはやっぱりインターネットが普及したことによって、垂直方向のつながりというのはすごく強くなっているんですよ。
…インターネットで世界に広がれるんだけど、コミュニティペーパー的なネットワークをつくるためのインターネットみたいになっちゃっている気が私はしていて。メディアブランドというのはそこをつなぐものだと思うんですよ。例えば「ブルータス」がパフォーミングアーツを特集しましたとなったときに、今までだったら、「ブルータス」というブランドに人が集まっているから、だから、パフォーミングアーツを好きじゃない人にもバッと情報は流れて、自分が信頼しているメディアブランドが言っているから見てみようとか、これ知ってないとやばいよねということになるけど、そういったもの(メディア発信力)が今ものすごい衰退している。逆に言うと、こういうブランドメディアの役割というのがあるんじゃないかなと思ってやっているんですよ。
…集客力もあって、信用度の高いブランドの役割というのはそこ(ブランドメディアが嗜好性の高いものも紹介すること)にあって、「タイムアウト」も私はそう思ってやっているんですね。ネットメディアと比べると小さいし、でも、個人商店に比べれば大きいし、だけど、世界中に何千万人という「タイムアウト」のファンがいて、信用してくれているという。そういうメディアブランドの役割というのはあるなと思っていて、やっているんです。だから、その辺がどう変わってきたかというのを読み解かないと、情報が拡散しないんじゃないかなと思いますね。特に嗜好性の高いもの。
ネットが普及したことによって、自分たちのコミュニティの周りというのはどんどん強固な太いパイプでつながれていくんですよ。そうすると、何かコミュニティ自体がすごい活性化しているように感じると思うのですが、実際そうだと思うんですよ。だって、今まで電話でやりとりしていたのが、もうLINEで1日何回もやりとりしてという世界になっているわけだから。すごくコミュニケーションが発達しているからそう思うんだけど、でも俯瞰してみたら、タコ壺の中でやっていることでしかないってことが多いと思うんですよね。
…ある嗜好性が共感を呼ぶというようなネットワークはやっぱり今のインターネットってものすごく優れているから、活用していけば繋がっていくと思うんですよ。そうじゃなくて、潜在的な層に対してどうアプローチするかとなると、やっぱり潜在層が信用している何かを使って届けるというのが大事だということですよね。
…やっぱりお店というようなリアルな場所のほうが体験する情報量が圧倒的にネットより多いじゃないですか。ネットだと、この画面の中で、「あなた、これが好きだったらこれが好きかもしれません」と、出てくるのを見るぐらいだけど、お店だと(アーティスト名別で)Bのところで、今日買おうと思ったものを探していても、何かDの一番前に出ていたやつが目に入っちゃって、これ、何だろうとか、いろんなところに気が散るようになっているから、そこで新しい出会いということがあったりするんですよ。
…そういうところに人が行かなくなったというのがあると思うので、私は「タイムアウト」でそういうものをつくっていこうと思っているし、そういったものをつくっていかないといけないと思いますよね。

東京というのは、ヨーロッパの人も中東の人もアジアの人も言うんだけど、やっぱりすごく憧れなんですよ。なので、それをちゃんと伝えきれているのかなというところはいまだに「?」な感じで。

–紙面の展開とオンラインとだと違う点はありますか。

伏谷:接触数はオンラインのほうが圧倒的なわけですよね。ただ、深く読み込むという意味では、やっぱり紙のほうを読んでいる人のほうが深いと思うので、そこは接し方は大分差がありますよね。

–サイトの訪問者の日本語ネイティブの人と、ほかの言語の人との比率はどんな程度ですか

伏谷:今、6:4ぐらいで外国のほうが多いかもしれないですね。始めたころは日本人も多かったんですけどね。今は外国人が増えたので。外国人の中でも、国内からアクセスしている人は30%ちょっとぐらいですね。残りは海外から。東京にいる外国人はほとんど見ていると思います。

–ホームページで今年の「Love Tokyo Awards」※4 における審査のプロセスを公表していますね。審査員もあえて海外の方にもお願いしていたと思います。

伏谷:「タイムアウト」って各都市でやっていることは一緒なんですよね。なので、もう本当にまちのエキスパートなんですよ。アートからフードまでのエキスパートの人たちなので、彼らがある別の都市に行って、自分たちの目線で何がいいのかというのを、僕らが選んだものをベースにしてやっているので、そこの食い違いはないと思うんですね。
…すごくローカルにこだわっているけど、だからこそ、そのグローバルの垣根というか、ボーダーというのはあんまり引かないというのが「タイムアウト」の特徴です。どっちも気軽に行き来するけど、単にノマドで世界を放浪しているんじゃなくて、ローカルに軸足は置いているけど、世界にもボーダーレスで顔を出しているというのが「タイムアウト」のおもしろさだから、そこを活用した取り組みというのはもっとやりたいですよね。今回、海外の「タイムアウト」のエディターとか編集長を呼んで、審査をさせたアワードというのは、世界の「タイムアウト」でも東京が初めてなんですよ。
…ロンドンは四十何年やっててもう老舗メディアなので、ロンドンのエリアを9つぐらいのエリアに分けて、(自分たちの)エリアの今年最高のレストランとかを投票してくれと言って、選んでいるんですよ。でも、今、それを日本で、東京で、日本語でやっても、まだそこまで日本の人たちに「タイムアウト」は知られてないし、うそ臭くなってしまうんですね。なので、それよりは今、海外の人たちが東京に来ておもしろいものはこれなんだよというアワードに仕向けていったほうがうちのユニークさも出るし、逆に東京の人たちもそういう目線の切り口で見たことがないから新鮮なんじゃないかなと思って。だから、先日のアワード(の授賞式)も大使館の人々を中心に、20以上の国と地域の人が集まってくれて。もっと多様性のある東京というのを実現するために僕らが貢献したいという思いでやっているから、そういう意味では会場の200人の集まりに、未来の東京を見せているというような感じのあつらえでやったんですけど。思った以上に来てくれました。そんなイベントは東京でないんですよ(笑)。12月21日だったので、外国人みんな大体もう休みモードじゃないですか。だから来てくれないのかなと思ったんだけど。

※4 Love Tokyo Awards:その年ごとに東京で注目を集めたレストラン、ショップ、プロダクトや、東京に影響を与えた人物を分野別で選出する。タイムアウト東京が電通、JTBコミュニケーションデザインと共同で開催。(参照:http://lovetokyoawards.com/winners/

–2020年に向けて何か今考えていることはありますか。

伏谷:「タイムアウト」の海外の同僚と話すと、東京というのは、ヨーロッパの人も中東の人もアジアの人も言うんだけど、やっぱりすごく憧れなんですよ。なので、それをちゃんと伝えきれているのかなというところはいまだに「?」な感じで。うちだけじゃなくてね。いろんなメディアも含めて、海外に伝えきれているかというと、まだまだだなというのはあるので、そこはちゃんと伝えていきたいなというのはすごくありますね。
…ニューヨーク、パリ、ロンドンが発信するというのだとやっぱり足りないんですよね。掛ける幾つというぐらい発信しないと東京の魅力というのは発信できないんじゃないかなというのは思っていて。だけど発信する側の人たちも、グローバルで発信することってどういうことというのをあんまりわかっていない場合も多いので、外国人の層にこの情報を届ける方法やノウハウがわからないとかというのは見ていてすごく思うんですよね。だから、そこは「タイムアウト」に限らず、そういうところも何かサポートできることがあればいいなとは思っているんですけどね。

–2020年に向けて文化プログラムも取り組みが始まっています。

伏谷:(芸術文化のコンテンツを)直接見せにいくというのが一番大事なことだと思うのですが、やっぱりそこになかなかお金が割けない。(見に)行きたくてもお金がないという人たちがすごく多い。じゃ、来たときにどうやって見せられるのかというのをみんな考えようとしているけど、なかなかうまくいかないというのがエンタメの世界とかで見ていたり、相談を聞いてても一番多いんですよね。ちょっとずれてしまうかもしれないけど、例えばロシアとか、国立劇場クラスのトップランクの劇場が世界ツアーしたりするじゃないですか。日本の国立劇場の人と話をしたときに、彼らも最高峰なわけだからもっと海外に見せなきゃいけないと思っているけれども、そういうことをやれていないじゃないですか。
…歌舞伎がパリで公演するというと、それは松竹さんのような事業主が行う形になるわけですよね。だけど、本当は国立劇場をブランド化して、じゃ、リンカーンセンターに国立劇場のあれが来ますよ、というような仕掛けが欠けている。じゃ、みんな正装して見にいきましょうというようなムーブメントがやっぱりトップランクであって、それで、ポップカルチャーがあってというような幅がないとやっぱり伝わりづらいと思うんですよ。

何か東京発でやればいいのかなという気がしますけどね。アジア全体のパフォーミングアーツを盛り上げようぜと。

–プロフェッショナルのダンスアーティストを目指す人たちのある種のプラットフォームも無くなったり、縮小している傾向がありますが、広がっていくきっかけをどういうふうにつくっていけばよいか。

伏谷:マレーシアの友達でピート・テオというのがいて、彼は、俳優で映画監督でミュージシャンでもあり、本も書くんですけど、インディペンデントでクレジットキャッシュムービー、キャッシングムービーと言って、要するにクレジットカードでキャッシングして、そのお金で映画をつくるという、すごくストリートなスタイルをやっていて、いろんな国際的な映画祭で賞を獲っていたんですよね。彼が何年も前に「東京国際映画祭」に呼ばれて来日したときに、「ピートやアジアの映画の業界の人たちからしたら東京国際映画祭ってどうなの?」という話をしたら、「正直、ハリウッドのコピーというふうにしかみんな思ってないよ」と。映画業界のみんなは、釜山映画祭はリスペクトしていてみんな集まっているけど、東京はスケジュールが空いていたら寄ってみるかぐらいの感じでしかないと。「何で?」と聞いたら、釜山の映画祭は始めた人がアジアのインディペンデントの映画を世界に伝えたいという思いを持って始めていて、開催中に、その(創始者の)おっちゃんがスクーターに乗って、全ての会場に顔を出しているのがすごい有名らしくて。釜山はそういう思いでやっているから、ハリウッドより大きいと言われる中国の映画業界の重鎮も来るし、ハリウッドのプロデューサーとかディレクターも集まっているし、それが狭いエリアの中で開催中、バーで会ったりとかしながらいろんな話ができるので、みんなそこに行って、交流したいと、みんな集まってくる。
東京国際映画祭は、何を目指しているのか、まずメッセージがわからない。あと、今は改善されているかもしれないですけど、当時ピートが言っていたのは、ハリウッドから呼んでいるゲストと、アジアから呼んでいるゲストにすごい格差をつけ過ぎていると。まあ、彼がそのとき例えで言っていたのは、中国の映画業界のトップ俳優とか監督とか女優とか、言うなればハリウッドより大きいから、ハリウッドに呼ばれても「別に行かなくてもいいわよ」というような人たちなんだよと。でも、ハリウッドから来たゲストはリムジンで、レッドカーペットの前で登場しているけど、アジアから呼んだ人は普通のタクシーだったりするんだと。タクシーで着いた映像がもし中国で流れたら、ものすごい下に見られて、ばかにされているのかというふうに中国の人は思って、その人自体の評判も下がるし、あり得ないんだよねというような話をしていました。何を言いたいかというと、やっぱり日本のことだけを考えない、というのをどういうふうに演出するか、つくっていくかというのが一個大事なのかなという気がします。
…何か東京発でやればいいのかなという気がしますけどね。アジア全体のパフォーミングアーツを盛り上げようぜと。俺たちのところにはこういう伝統芸能もあって、能とかそういうのがあって、しかも、そういう所作の美しさもあるし、そういうものも交流しながら何かやろうぜというような感じで、ボーンとやったらいいのかなという気もしますけどね。

–パフォーミングアーツのアーティストも東京から他の都市に移住したり、活動の拠点を移動したりということが最近割と多い傾向です。

伏谷:やっぱりボトムアップのものは、今、地方は結構熱いと思うんですよ。コストがかからないので。東京でやろうと思うと、やっぱり資金をどうするとか考えてやらなきゃいけないので動きが遅くなっちゃったり、仕掛けが大がかりになり過ぎちゃったりするんだと思うんですが。ただ、やっぱりボトムアップでやっているものも、どこかではそういう資金を投下してやるというフェーズに入らないと、なかなか世界的なものにはならないような気はします。
…地方の若い人々が仕掛けているようなことを、なぜ東京でできないのかというところはもうちょっと考えてみる余地はあるかなとは思いますね。

–東京は借りる場所も少ない。そして、借りる料金もやっぱり負担が大きいとかそういうことはよく言われています。

伏谷:村上(隆)さんのあの活動を支えるにはこれだけのスタジオ(カイカイキキ)が必要なんですとか、千住博さんだったら、アメリカにこんな飛行機の格納庫というようなスタジオがあるんですよとか、みんな想像つかないじゃないですか。本当にそういう(大きなスケールで)ダンスカンパニーやるんだったら、これぐらいのものは必要だから、どうする?というような。じゃ、そこを助成するためには何が必要かというようなことが何か必要かもしれないですよね。
…空き家にアニメスタジオをつくるとかあるかもしれないですけど(笑)。じゃ、大田区のこの辺の倉庫を使ってないんだったら、そういうダンスカンパニーが使えるようにしましょうよとか、何か絵を描く人が使えるアトリエ、でっかいのをつくりましょうとかね。

ずっと無償で提供するわけではなくて、ブレークしたらちょっと回収させてねというような仕組みがあってもいいのかもしれない

–日本の舞台芸術市場の仕組みや経済的な循環がもう少しピッチが上がる仕組みがあると、場所を提供してくれる人が出てきたり、資金を回収しやすいとか、そういうことがあるかなと、今のお話で感じました。

伏谷:梅澤(高明)さんとも話しててよく思うのですが、やっぱりお金の回し方を変えないと、もう難しいと思うんですよね。だから、例えば、じゃ、家賃は激安にするからブレークしたときに、別に全部絵を持っていかないけど、10%だけ返してねとか。家賃ただで渡していた分というような、リスクマネーを大家さんが背負ってあげるような施策とか。ずっと無償で提供するわけではなくて、ブレークしたらちょっと回収させてねというような仕組みがあってもいいのかもしれないし。どちらにしても、アーティストとかパフォーマーとかクリエイターの人たちがそういうビジネス的な感覚を持たないといけないので、もしくはマネジメント側でもいいんですけど、その啓蒙というのはまず一つ必要だと思います。場所を貸したりとか、助成した対象からの何らかの成果を回収するという形等、まだ選択肢が狭いので、そこを少し広げていく作業が必要なような気がしますね。
…例えば、クリエイターに集まってもらい渋谷のおもしろさを演出してほしいんだったら、家賃をただで場所を提供して、そのかわりブレークしたら、ここの権利の5%だけ頂戴ねとかいうような話に切りかえてしまうというのも必要かもしれないですね。なかなか難しいですけど、でも、多分そういう発想に変えていかないと、難しいと思いますよ。
…村上隆さんがすごいのは、仕組みを最初から想定しているじゃないですか。ある時期まで来たときに、ああいう仕組みをつくらないと、自分の芸術活動がこれ以上発展しないし、それをつくるためにはどれぐらいの価格で自分の作品が売れるマーケットに出せないといけない、というのはすごい考えていると思うんです。アーティストを志向している人たちにそこまでの発想はないと思うんですよ。もう自分の作品で精いっぱいで、すばらしかったよと言われるために頑張っているというレベルで大体とどまっちゃっているから。でも、それを本当に一生涯お金を回しながらやっていくためには、こういう仕組みが必要だし、ロールモデルとして、例えば村上さん、千住さんはこうやっているからこうお金が回っているんですよというのを見せてあげる機会がないと…そんなこと、どこにも載ってないですよね(笑)。本を読んでも、雑誌読んでも、テレビ見ても、そういうやり方ってどこにも載ってないんですよ。そういう本を出すのもいいかもしれないですね。それが高校の図書館とかに並んでいればいいじゃないですか。変な話。大学でもいいけど、高校とか中学の子が、「ああ、自分はアーティストとして生きていきたい」と思ったときに、今、何にもないですからね。そういうケーススタディを提供する。
…劇団四季だったら、『ライオンキング』に出たら、これぐらいギャラもらえるのかなとか、それぐらいは思うかもしれないけど、ギャラリーのビジネスモデルってどうなっているんだろうとか、高校生のときにふと疑問に思っても、なかなか情報にたどり着かないかもしれないですね。「えっ、(売り上げの)半分持ってってしまうの?」「うそでしょ?」というような(笑)。だったら、それ、つくらなきゃと思うやつが出て、また新しいイノベーションが出たりするかもしれないけどね。
…時代も変わってきたから、クリエイティブな仕事とか、アートをやる人もお金をどう回そうかというのはすごく気になる世代にはなっていると思うんです。昔の吟遊詩人みたいに、旅をしながら詩を書くというような人はもうあんまりいない気がするんですよね。だから、「(あいだ)みつを」と書いたら結構お金儲かる、これビジネスモデルらしい、とか言うと、嫌らしく聞こえてしまう世界だけど、詩人を志向する人も興味を持つみたい(笑)。でも、そういうのはやっぱりちゃんと啓蒙したほうがいいですよね。

–そういう意味で、アーティストは社会の中でどのような役割を担うのでしょうか。

伏谷:1日のなかで、非日常と日常をいくらでも行き来できるような時代になっちゃったので。だから、自分の日常にない刺激を受けるためのアートとかパフォーマンスを観に行ったり体験したりという役割は若干薄れているのかもしれないと思いますよね。ただ、圧倒的な力はあると思うので、ちょっと説明してあげないとひっかからない時代になっているような気もしますね。例えば、最近、スプツニ子!さんとかが取り組んでポピュラーになってきている、スペキュラティブデザインとかバイオアートという世界の人たちは、もう完全にその最先端、テクノロジーで裏づけしたアートをつくって、社会に問題提起をしますというふうに言い切っちゃっている。確かに、じゃ、バイオテクノロジーが進んで、世の中どうなるんだろう、どういう問題が起きるのかな、課題があるのかなと思ったら、まあ、ちょっと見にいってみようかみたいになるかもしれない。何か先に説明しきっちゃうとおもしろくないけど、少し説明してあげないと伝わらない感じなのかな。
…そこは少しわかりやすく、入り口はちょっとわかりやすくして体験させてしまうという仕掛けをもう少しつくらないと。何となくこのアートの領域だとこういうトーンで、このトンマナ(トーン&マナー)でつくろうというようなのは、それはそれでカルチャーなので大事にしなきゃいけない部分だと思うのですが、それプラス、何かそういうものがちょっとあったほうがいいような気がしますね。

–メディアの役割がキーにもなりますね。

伏谷:メディアもそうだし、何かメディア的な手法を当事者の人たちがもっと持ってしまったほうがいいような気がしますよね。世界観をトータルで表現する部分と、もうちょっと外す部分。全然違うかもしれないけど、ユニクロってテレビのCM見てたらすごいスタイリッシュだけど、新聞の折り込みチラシはスーパーと一緒じゃないですか。あの二刀流は、私はすごいなと昔から思っているんですよ。やっぱりかっこつけたくなってしまうと、チラシもかっこいいのをつくりたくなるじゃないですか。でも、新聞には必ずフリース1,500円、バーン、黄色、赤というようなスーパーのチラシスタイルのやつが入っているじゃないですか。あの二刀流が必要なんじゃないかなと思います。
…すごくかっこつけたまま生きている人は今すごく苦しいし。かっこつけているけど、何かちゃんとビジネス回ってそうだねという人は、必ずこのかっこつけている後ろ側で、ちょっとベタなことを見えないようにうまくやっている人が多い気がします(笑)。まあ、そこは一歩、アーティストとしてはかっこいいところを見せながら、こっち側ですごいわかりやすい戦略を用意するというのも必要だと思いますよね。



伏谷博之
タイムアウト東京 代表取締役
1966年島根県生まれ。91年関西外国語大卒。大学在学中にタワーレコード入社、2005年、社長に就任。同年、ナップスタージャパンを設立し、社長を兼務、日本初の音楽サブスクリプションサービスを開設。09年タイムアウト東京を設立し、代表に就任。


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