この数ヶ月、私たちはえもいわれぬ不安を抱えて過ごしてきました。多少の落ち着きを取り戻したいまも、人と人との距離を保った暮らしを求められている状況にあります。コロナ禍を経験したいま、まちなかで多様な人と協働しながら展開するアートプロジェクトではどのように他者と出会い、想い、関係性をつくっていく可能性が考えられるのでしょうか。
今回は、社会福祉法人ライフの学校にて現在進行形で育まれているプロジェクト「嫁入りの庭」(宮城県仙台市)を軸に、このプロジェクトの施主である社会福祉法人ライフの学校理事長の田中伸弥さん、庭の設計を担当したtomito architectureの冨永美保さん・林恭正さんをゲストにお招きし、ディスカッションを行います。
老人ホームの庭を舞台にしたプロジェクト「嫁入りの庭」の起点となったのは、施設と歩道との境界線のようにあった垣根を取り払うこと。活動をひらいていくだけでなく、まちなかで収集した木々や石材、思い入れの家具などを嫁入り道具のように持ち込むことで、さまざまな人の想いや土地の文脈が滲みあい、多様な世代がともに過ごす場が生まれています。
庭をひらこうとしたプロジェクトを立ち上げた根っこの部分には、どのような想いがあったのでしょうか。この場所の文脈を読み取りながら風景を立ち上げ、活動をまちに滲ませていく工夫や対話とは。場をつくっていくプロセス、暮らしを豊かにしていく視点を紐解き、ひらくことで見えてきたことや今後の実践の可能性について探ります。
田中伸弥(社会福祉法人ライフの学校理事長)
1981年生まれ。秋田県角館町出身。社会福祉法人ライフの学校理事長。
2020年、福祉施設を地域に開くため、地域と施設とを隔てていた壁(生垣)を壊し、地域にひらかれた庭(嫁入りの庭)を作る。かつての嫁入り道具のようにやってきた家具や植木、まちの片隅に眠っていた懐かしい道具などが運ばれて、誰かの物語や土地の記憶が集まり、交差する庭となっている。ここに暮らすお年寄りはもちろん、学校帰りの子どもたちや地域に暮らす人たちが自然に溶け合うような空間を目指している。
そのほかにも施設の屋上を改修し「ライフの図書館」を開設。福祉施設としての役割を限定することなく、地域コミュニティの拠点となるような活動を行なっている。
社会福祉HERO’S TOKYO 2019 ベストヒーローズ賞受賞。
冨永美保 + 林恭正 |tomito architecture
2014年に設立した、神奈川県横浜市にある建築設計事務所。
大切にしているのは、日常を観察して、さまざまな関係性の編み目のなかで建築を考えること。小さな住宅から公共建築、パブリックスペースまで、土地の物語に編みこまれるような、多様な居場所づくりを行っています。
モデレーター:上地里佳(アーツカウンシル東京プログラムオフィサー)
アートプロジェクトにこれから関わりたいと思っている方、新たなプロジェクトのためのヒントを得たいと思っている方
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Tokyo Art Research LabのYouTubeチャンネルにて配信いたします。
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公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
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