アーツカウンシル東京が主催・共催するイベント情報

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連続ワークショップ
「多摩の未来の地勢図をともに描く―あわいを歩く」参加者募集

ジャンル:
  • アートプロジェクト ,
  • ワークショップ・体験

日々生活していると、自身がどこにいるのかわからなくなる時があります。戦争の勃発、災害の発生、様々な不条理、暴力や困難が溢れる一方で、一見、平穏な生活が営まれています。重層的に関係し合う様々な問題や解決の見えない状況の続く中、私たちはそれに何らかの形で加担し、大きな矛盾を抱えながら生きています。自身の生きている日々がどのように成り立っているのか。その中でこの現実とどのように関係を作っていくことができるのか。様々な土地を歩きながら、この答えのない時代の状況を共に考えます。

「あわい」という言葉には、「間」と「淡・い」という二つの漢字が当てはまります。「間」はものとものとのあいだや境界線、相互の関係、また古語では媒介という意味を持ちます。「淡い」は形や光がぼんやりしている、かすかであるさまをあらわします。今回、私たちが歩こうとしている「あわい」はこの二つの漢字の意味が混ざり合ったようなところを指します。あわいのさまは向き合う対象(風景、人、言葉、時代、距離、その他様々なこと)との相互関係によって変化し続けます。そのあわいのありようを探求することで、出会う対象への身体の傾け方が少しづつ変化していくのではないかと考えます。

不明瞭な、解決の見えない状況のなか、「あわい」について、あるいは「あわいの歩み方」を考えることは、これからの私たちの行方を考えるためにとても大切な営みです。
特に、未来を見据えつつ、多摩/東京に住まう私たちの今日の暮らしを成り立たせてきた歴史を振り返る時、東京にいて東京を問うだけでは、その実像が掴めないのではないかと考えます。歴史的に、東京は東京を取り巻く様々な地域、場所から、資源やエネルギー供給を得、人々の知恵や労力によって成り立ってきました。東京を東京たらしめてきたこれらの経緯を、それらを送り出したその地の風景、人々、作られてきたもの、損なわれてきたもの、複合災害(※)の構造について知りながら、そちら側からもう一度東京を見ることを通し、これからの私たちの暮らしをとらえ直します。

考えるという言葉の語源には「か身交(みか)ふ」という言葉があります。この言葉には「心」や「頭」だけで物事を理解するのではなく、「身体」という外の世界とつながる媒介を通して思考するという意味が含まれています。身体で感じることを頼りに様々な地を歩き、「か身交(みか)い」ながら土地との交わりを経験し、自身の問いにつなげていきます。単純に解決しがたい今日の様々な状況を、1かゼロかでとらえるのではなく、あわいを歩くことで、あわいの存在を持ち堪えながら考えます。

そして、アートは、物事をとらえる眼差しを更新する力を内包します。

本年度はこの「あわいを歩く」ことを軸に、アーティストや様々な土地に暮らす人々の参加を得ながら、ワーク/レクチャー、フィールドワークへの参加と、それらの経験を通したフィールドノートの作成を行い、新しい眼差しで世界と出会う方途について考え、経験し、参加者それぞれが問いを深め、東京/多摩地域におけるそれぞれの方の実践にフィードバックしていきます。

※複合災害
ここで使用する「複合災害」という言葉は、過去から現代に続く様々な出来事、事故、災害、(自然環境や社会経済状況の変化も含む)が要因となり、合わさって起こった事象のことを指します。

ワークショップの構成

ワーク/レクチャー~あわいを考える

あわいのさまは向き合う対象(風景、人、場、時代、距離、その他様々なこと)との相互関係によって変化し続けます。対象との向き合い方、たずねる姿勢、どのように耳や心、身体を傾けていけるのか、その出会い方をワークやレクチャーを通して共に考えます。
ワークでは、応用演劇の手法を用いながら「理屈」や「知識」ではなく、全身を用いて出来事と向き合うための身体について考えます。レクチャーでは、それぞれの土地、暮らしに由来する文化に光を当て活動しているゲストを招き、土地そのもの、そこに暮らす人たち、生み出された固有のものとの出会い方、向き合い方を尋ね、ディスカッションの場を設けます。その経験を、参加者自身のあわいを歩く方法に生かしていきます。

日程(括弧内はゲスト)
・2022年9月18日(日)13:00~16:00「出会う身体を整える」(花崎攝)
・2022年11月5日(土)13:00~16:00「未知に出会う歩み」(なかのまさき)
・2022年12月16日(金)19:00~21:00「出会いの作法」(曽我英子)
・2023年2月26日(日)13:00~16:00「今までの経験を受け止める」(花崎攝)
会場
小金井アートスポット シャトー2F、小金井市環境楽習館


フィールドワーク~あわいを歩く

自身の身体や心、その土地の力を頼りに、歩くことを通して、自身の気づき、課題を深めます。
古くから資源やエネルギーを介してきた首都圏と他の土地の相関性、それぞれの土地の成り立ち、それら様々な要因が合わさり生まれてきた複合災害とその構造について、知ること、考えることを、アーティストや現地ゲストの手法や視点を借り、移動しつつ地勢学的に経験します。その経験を私たちがどのように自然や社会経済の変化と向き合ってきたのか考えるきっかけとします。また、この経験がどのようなものだったか、皆と共有し多摩における自身の活動にフィードバックします。

日程(括弧内はゲスト)
・2022年10月8日(土)~9日(日)フィールドを歩く1「東京-飯館村のあわい」(藤城光+菅野栄子)
・2023年2月4日(土)~5日(日)フィールドを歩く2「東京-大熊町をか身交(みか)ふ」(木村紀夫+花崎攝)
※現地でのフィールドワークに参加ができない場合、ライブヴューイングでインタビューへの参加やインタビューの記録映像の共有を行いますが、それぞれの土地の言葉を体験するためには、その土地に立つことが最も重要です。極力現地参加をお勧めします。
※フィールドワークへの参加にかかる旅費・宿泊費等は参加者負担となります。参加方法は相談に応じます。


フィールドノート~あわい探求を深める

ワークやレクチャー、フィールドでの経験と共に「フィールドノート」を制作します。ここでいう「フィールドノート」は、必ずしも野帳を意味するわけではありません。自身の内省や問いを深め、つなげていくのに適したそれぞれのてだてを模索し、制作していきます。これはフィールドワーク、ワーク/レクチャーと参加者の問いをつなぐ一つの足がかりとなり、これらの経験を通して繰り返される、問い、問われるという過程を担うものになります。
また、問いの往還をもとに、自身の課題を深めるため、アーティストの岩井優の制作に参加することができます。個人的な経験をパブリックな場での制作に置き換える岩井の営みを参照しながら、自身の経験をどのように開き、共有していくのか、その方法を考えます。

岩井優との制作日程
・2022年10月23日(日)「経験的道路のプロジェクションをめぐって」
・2022年11月20日(日)「経験的道路のプロジェクション #1」
・2022年12月24日(土)「経験的道路のプロジェクション #2」
・2023年1月8日(日)~9日(月・祝)「経験的道路のプロジェクション #3」
※日程は参加者と調整の上、変更になる場合があります。
※多摩ー東京を取り巻く周辺地域のポイントで実施する予定です。詳細な場所や時間は参加者との調整を行い、現地集合、現地解散とします。参加方法などについては、相談に応じます。


■全体スケジュールをこちら(PDF)からご確認ください。
■ワークショップ終了後、この活動を通して得られた気づきを、東京、多摩、周辺の地域で共有する試みを行います。

定員

15名(年齢、性別を問いません)

参加費

無料
※フィールドワーク等への参加にかかる旅費・宿泊費等は参加者負担となります。参加方法については相談に応じます。
※日程や時間が変更になる場合があります。

申し込みについて

メール、FAX、googleフォームのいずれかの方法にてお申し込みください。
メールとFAXでのお申込みは、住所、年齢、名前、生年月日、電話番号、志望動機をお書きください。

・メール:mail@artfullaction.net
・FAX:042-316-7236
googleフォーム

応募締め切り
2022年9月12日(月)
※お申込みが定員を上回った場合は応募書類での選考をさせていただきます。参加の可否については9月13日(火)にご連絡します。

※日程、参加方法等について、質問や相談がある方は、事務局にご相談ください。
※個人情報は厳正に管理し、本事業の運営及びご案内のみに使用いたします。

ゲストプロフィール(順不同)

花崎攝
シアター・プラクティショナー、野口体操講師。ロンドン大学ゴールドスミス校芸術学修士。専門は、演劇を人々の生活の中で活かし演劇の可能性を広げる応用演劇。主な仕事に、公募で集まった人の経験を聞き合って演劇の形で表現し共有する「地域の物語」シリーズ(世田谷パブリックシアター)、胎児性水俣病患者と市民と共創した「水俣ば生きて」(水俣病公式確認50年事業)、横浜の寿町で精神科デイケアにつながる人たちと、てがみを書くことを通じた表現と交流を目指す「ことぶきてがみプロジェクト」など。武蔵野美術大学、日本大学芸術学部、立教大学非常勤講師。
https://vcd.musabi.ac.jp/web/?p=6817

岩井優
1975年生まれ、東京藝術大学美術研究科博士後期課程修了。国内外の地域にて参与的な手法で活動に取り組み、クレンジング(洗浄・浄化)を主題に、映像、インスタレーション、パフォーマンスを展開している。主な展覧会に、「見るは触れる 日本の新進作家Vol.19」(東京都写真美術館、2022年)「ヨコハマトリエンナーレ2020 AFTERGLOW ―光の破片をつかまえる」(横浜美術館、2020年)、「新・今日の作家展2018 定点なき視点」(横浜市民ギャラリー、2018年)、「リボーンアート・フェスティバル2017」(宮城県石巻市街地、牡鹿半島、2017年)、個展「公開制作83 岩井優 ハウツー・クリーンアップ・ザ・ミュージアム」(府中市美術館 、2021-22年 )、「コントロール・ダイアリーズ」(Takuro Someya Contemporary Art、2020年)など。

曽我英子
東京都生まれ。イギリス在住。ロンドン芸術大学チェルシーカレッジ、ロンドン大学スレードスクール卒業。現在オックスフォード大学にて研究を行っている。フィールドワークから得た知識や、出会う人々との記憶を辿りながら制作を行い、それらを、映像、テキスト、インスタレーション作品として発表している。アートの視点から、社会環境から感じる違和感をどう理解し「問う」ことが可能であるかを探求しながら活動を続ける。

藤城光
水戸市出身。大学で文化人類学を学んだのち、東京でデザイン業に就く。2010年いわき市に移住したことをきっかけに、土や植物、モノ、大地に刻まれた記憶などをテーマとした作品制作をはじめる。2011年の東日本大震災以降、聴き書きや場づくり活動などもしている。主な展示として、「VOYAGER」(さいたまトリエンナーレ[2016]、はじまりの美術館[2018])、「彼女の町、彼の海岸」(駒込倉庫[2017])、「地中の羽化、百億の波の果て」(しらみずアーツキャンプ[2020])等。
https://hikarifujishiro.com

なかのまさき
東京水産大学(現・東京海洋大学)大学院博士前期課程修了。1995年より北欧フィンランド、ノルウェーを訪れ、北極圏サーミランドの先住民族・サーミのサケ・マス漁やトナカイ飼育のようす、都市に住むロマ(ジプシー)の人びとなどを撮影している。

菅野栄子
昭和11年(1936年)生まれ 佐須地区出身。46年間を酪農に費やし、70歳からは夫とともに有機農業を手掛けてきた。農作業の傍ら、20年にわたって義理の両親の介護をしてきた。一方で、地元の女性とともに加工グループを立ち上げ、伝統的な飯舘村の食文化である「さすのみそ」「凍み餅」「凍み豆腐」などを作り、村に貢献してきた。夫を原発事故の前年2010年6月に、義理の母親を原発事故の1カ月前に亡くす。息子が農業を継ぎ、これからは息子とともに自分のために生きようという矢先、原発事故が起こった。伊達東仮設住宅で避難生活を送った後、避難指示解除後に飯館村に戻る。3人の子どもと6人の孫がいる。

木村紀夫
team 汐笑(ゆうしょう)プロジェクト代表・大熊未来塾塾長
1965年福島県大熊町の海沿いにある熊川集落に生まれる。自電車で放浪生活をしつつ自給自足的な生活に憧れた20代を経て、帰郷し、結婚。娘2人を授かる。45歳で東日本大震災により被災。津波で父と妻、次女を失い、原発事故で故郷を追われる。父と妻の遺体は見つかるが次女:汐凪(ゆうな)の一部発見までに5年9ヶ月を要する。捜索の傍ら、避難先の長野県白馬にて便利なものに頼らない生き方を追求し、震災の伝承だけでなくこれからの生き方に疑問を投げかけるようなイベントを開催。現在は福島県いわき市に拠点を移し、中間貯蔵施設内の自宅跡に通い発信をつづけ、自身の得た教訓を次世代に絶やさない未来を町で実現するために日々奔走している。

お問い合わせ

特定非営利活動法人アートフル・アクション
〒184-0004 東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井2F
FAX:042-316-7236
E-mail:mail@artfullaction.net

開催場所

小金井アートスポット シャトー2F(東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井2F)、小金井市環境楽習館(東京都小金井市貫井南町3-2-16) ほか

クレジット

主催
東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、特定非営利活動法人アートフル・アクション