アーツカウンシル東京の事業

日本映画海外発信事業

海外での人気や需要が高い旧作の日本映画を、貴重な文化資源として戦略的・積極的に海外に発信する事業です。英語の字幕を製作し、より多くの海外映画祭等で上映される機会を創出することで、日本文化の海外での一層の普及・浸透を図ります。

プログラム内容

過去本事業において主に取り上げた渋谷実、川島雄三と併せて、木下惠介の「カルメン純情す」「肖像」「お嬢さん乾杯」の3本のニュープリントを作成したところ、海外の映画祭プログラマーたちからの好意的な反応があり、また「他にも未知の木下作品を見たい」との声が寄せられました。

そこで2012年が同監督の生誕100年にあたることから、今年は木下惠介作品の英語字幕付プリントを作成し、過去2年同様これまで海外では紹介されてこなかった作品群を掘り起こし、ストックの充実をはかり、海外で反響を呼びそうなパッケージとしてプログラミングします。

海外展開においては、海外の各映画祭、シネマテークのプログラミングに判断を委ねつつ、映画会社、フィルムセンターや国際交流基金等の既存プリントという資源の活用を図ります。

【木下惠介 監督作品】
「歓呼の町」

戦時下、人々が一人、また一人と疎開して消えてしまった町で、家を出たままの夫を待ち続ける母・きよとその息子・慎吾を中心に、なおも町に残ろうとする数少ない家族たちの人生模様を描く。戦時中の庶民の生活が生き生きと描写される。

「女」
主要な登場人物は二人だけという実験的な作品。踊子の敏子が彼女につきまとうヤクザな男・町田から逃れて再出発するまでを箱根や熱海のオール・ロケーションのみで描く。クライマックスに登場する火事のシーンが強烈な印象を残す。

「婚約指環(エンゲージリング)」
病弱で療養中の夫に代わって銀座で貴金属店を営む妻が、夫を担当するたくましい医者に惹かれてゆく。一時渡米した田中絹代の帰国第1作。相手の医者役にデビュー間もない三船敏郎が抜擢された。熱海でのロケ撮影が美しい。

「夕やけ雲」
魚屋の息子として生まれたものの、外の世界に憧れて船乗りになる夢を持ち続けていた少年が、父の死を始めとする厳しい現実の中、家業を継ぐことを決意するまでを描いた作品。高度経済成長期の下町の庶民の生活が詩情豊かに描かれた傑作。

「楢山節考」
70歳になると人減らしのため楢山で姥捨を行う村がある。齢69のおりんは、息子の辰平と孫たちを世話しながら、去年、妻に先立たれていた息子の後妻を探している。楢山祭りの日、辰平は隣の村から妻を迎える。おりんは楢山へ発つ準備を始めるが、自分の歯が立派であることを恥じて、石臼にぶつけて折る。そして正月の数日前に突然「明日山へ行く」と告げる。
深沢七郎の同名小説を木下が脚色・監督し映画化した一本。1983年に、今村昌平によってリメイクされ、カンヌ国際映画祭でパルム・ドール賞を受賞した。

※『楢山節考』は、第65回カンヌ国際映画祭(平成24年5月開催)で上映されることが決まりました。

「死闘の伝説」
太平洋戦争末期の北海道を舞台とする西部劇的な要素を持った異色の作品。疎開してきた園部家の娘に村長の息子との縁談が持ち込まれるが、園部家はこれを断る。以来、村人たちの園部家への嫌がらせが始まり、事態は意外な展開を迎える。

(作品紹介文 提供:東京フィルメックス実行委員会)

●第13回 東京フィルメックス
アジアおよび世界各国からの秀作を紹介することを目的に、2000年より始められた国際映画祭です。日本を含むアジアの新進作家によるコンペティション部門、世界の最先端を切り拓く映画作家たちによる特別招待作品部門、映画史に輝く珠玉の旧作を再検証する特集上映部門などがあります。
新作、旧作を問わず、初めて日本の観客に紹介された多くの海外の映画作家や、東京フィルメックスをきっかけに世界へ発信された多数のアジア・日本映画などの実績により、プロフェッショナルや映画ファンからの高い評価を集めています。

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(第13回東京フィルメックス特集上映会場)東劇