「カテゴリーI 単年助成」には236件の申請があり、55件を採択いたしました(採択率23.3%)。助成予定総額80,257千円です。うち「創作環境サポート費」は6件で予定総額409千円です。
《音楽分野》
◆申請件数(採択件数):75(18)
内訳:都内での芸術創造活動 59(12)
国際的な芸術交流活動 16(6)
◆採択率:24%
第2期では過去最多となる75件の申請がありました。申請傾向としては、過去数回に比して、活動成熟・トップ期の活動ステージにある事業者からの申請が増え、全体の約4割に達しました。その中から採択となったのは、これまでの活動を振り返りつつ芸術創造活動の主体としての独自性や存在意義に言及し更なるステップアップに挑む企画、若手の育成や次世代への継承に対する新たなアプローチを試みる事業でした。また、国際的な芸術交流活動が活発となっており、コロナ禍前も含め過去最多の採択件数・採択額になり、採択額はカテゴリーⅠ音楽分野の総額の5割を超えました。採択事業はいずれもヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカなど国際的な場において、高い評価が期待されるとともに牽引力のある企画です。
《演劇分野》
◆申請件数(採択件数):69(12)
内訳:都内での芸術創造活動 66(11)
国際的な芸術交流活動 3(1)
◆採択率:17.4%
申請件数は前年同期比約2割増で昨年、一昨年に引き続き第2期として過去最多となりました。活動基盤形成期の申請の割合が最も大きく、初申請は全体のほぼ5割を占め、アーツカウンシル東京のスタートアップ助成から移行した団体は昨年と同数となっています。企画内容としては、LGBTQにおけるパートナーシップの多様なあり方を描き、恋愛感情と友情を区別しないクワロマンティックを扱う事業のほか、時代の潮流に即した翻訳戯曲の言葉の刷新により作品の新たな魅力を探求する事業、断片的なテキストや映像、音、身体をモンタージュの手法で舞台として構築し、演劇表現の拡張に取り組む事業など、独創的なテーマや手法に挑む事業のほか、創作活動の深化や活動基盤の強化、新たなカウンターパートとの協働で次のステップにつなげる事業が採択となりました。前年同期比で、国際的な芸術交流活動が減少しており、今後、意欲的な申請を期待しています。
《舞踊分野》
◆申請件数(採択件数):22(7)
内訳:都内での芸術創造活動 17(4)
国際的な芸術交流活動 5(3)
◆採択率:31.8%
例年は、申請件数及び採択件数が、第1期より第2期の方が減少する傾向にありますが、今回は微増しました。活動ステージでは、活動基盤形成期からの申請が第1期より増加し、活動拡大・発展期と合わせて8割以上を占めました。初申請から採択となった事業は、個人申請の1件でした。都内での芸術創造活動は、いずれも音楽家、美術家、役者、哲学者、舞踊研究家等と編成メンバーを組み、同時代性のあるテーマを設定しリサーチを行い、そこから独創性のある身体表現を創出する事業が採択となりました。国際的な芸術交流事業は、台湾と米国の国際フェスティバルから評価を得た作品の招聘公演が2件、イタリアのバレエ団とのクリエーションと公演を実施するダンスカンパニーの事業が1件採択となっています。また、申請書に具体的な事業内容が示されていないものが複数見受けられましたので、事業内容の明確な記述に留意してください。
《美術・映像分野》
◆申請件数(採択件数):21(4)
内訳:都内での芸術創造活動 18(2)
国際的な芸術交流活動 3(2)
◆採択率:19%
申請件数及び採択件数は今年度の第1期と同程度で、活動基盤形成期と活動拡大・発展期にある個人や団体からの申請が多数を占めています。採択となった事業は4件で、その内容には現代社会におけるプラスチックのゴミ問題や過去の戦争や歴史に関してリサーチを行い、それらを展覧会として発表するものがありました。また令和5(2023)年度第2期から続く傾向として、映像・映画に関する申請で、特にドキュメンタリーに関する独自の視点をもった上映イベントを開催するものがあり、海外の芸術祭や海外での発表等、キャリアの転機となりうる国際的な事業も見られました。更に2025年は戦後80年の節目にあり、戦争をテーマにした事業に関する応募が複数あったことも特徴的でした。
《伝統芸能分野》
◆申請件数(採択件数):20(10)
内訳:都内での芸術創造活動 15(9)
国際的な芸術交流活動 5(1)
◆採択率:50%
今期は、当助成第2期の申請として最多件数となりました。この内、国際的な芸術交流活動にあたる申請が5件あり、コロナ禍前の水準に回復しています。ただし、申請事業全体としては、コロナ禍以来の観客減少に加え、東京における伝統芸能の上演会場休館に伴う出演する機会の減少も相まって、芸の継承や人材減少に対する危機感の強い事業が多く見受けられました。古典の上演にあたっても育成や現代社会に作品を届けるための意識が実践の工夫となって表れている事業が採択となっている傾向にあります。
《複合分野》
◆申請件数(採択件数):29(4)
内訳:都内での芸術創造活動 24(3)
国際的な芸術交流活動 5(1)
◆採択率:13.8%
オペラをはじめミュージカル、ダンス、アートイベント、演劇、レクチャー、映像、文学などさまざまな要素を取り入れた企画や、先人の創作活動を継承するのためのフェスティバルの開催など、申請内容は多岐にわたりました。その中から、国際コラボレーションによる創作と上映を行う事業や、小説から着想を得て美術家や音楽家と共同制作で新作を創作する事業、過去の原爆や放射能に関する調査を元にした作品の展覧会とシンポジウムを実施するものなど、独創的な活動と見込める事業が採択となっています。