スタートアップ助成は、東京の芸術シーンで活動を展開していこうとする新進の芸術家や芸術団体等がチャレンジする新たな芸術活動を支援する助成プログラムです。2024年度第3回の本公募では、219件の申請があり、50件の採択となりました。申請件数は、前回(2024年度第2回)の197件より1割程度増加しました。
スタートアップ助成はオンラインによる申請方法となって2年が経ちますが、今回の公募でも誤ったファイルや白紙の予算書が添付されているなどの提出書類の不備や、誤って記載されたと思われる入力内容の不備が多く見られました。申請フォームの入力が終わっても、再度入力内容を見直し、アップロードしたファイルも間違いがないかのチェックを行ってから提出ボタンを押していただくようお願いします。また、締切が迫ると内容の確認が甘くなることも考えられますので、締切までに余裕を持った申請書作成のスケジュールをご検討ください。
本助成では、事業内容が明確であり、実現にあたっての予算やスケジュールが適切に計画されている事業を助成対象としています。申請書の作成にあたっては、公募ガイドラインやQ&Aを事前に良くご確認いただき、対象期間を確認のうえ、事業の具体性や実現性を明確にして適切な時期にご申請いただきますようお願いします。
《音楽分野》
音楽分野では、42件の申請があり、うち7件が採択に至りました。採択された事業の多くは、一定の修練を積んだ演奏家を主体とした演奏会で、プログラミングや演出における挑戦が見られる内容でした。また、採択に至ったものは、いずれも申請者の過去の実績を踏まえた上で、実現可能な計画が組み立てられている事業です。一方、事業内容についての説明が不足している申請、予算計画が適正でない申請、販売や普及を主な目的としている申請については、採択に至っていません。また本助成プログラムは、公開を伴う事業を対象としており、そのジャンルや発表形態は問いませんが、公開の時期や方法が明確でない申請も目立ちました。過去の申請で不採択だった事業も、練り直した再申請によって採択に至っています。申請にあたっては、申請要件や審査の観点をよく確認したうえで、事業の内容や計画について具体的かつ明確に記載していただくようお願いします。
《演劇分野》
演劇分野では79件の申請があり16件が採択となりました。採択事業全体の傾向としては、日常生活における違和感や問題意識を起点とし、今日演劇作品を上演することに対する動機が申請書・企画書において明示されていました。また、既存戯曲の上演や自作の再演を行う事業で採択に至った事業は、申請書において戯曲の選定理由や演出方法の工夫が明確に書き込まれていました。俳優が主導する企画においては、自身の経歴を踏まえた事業目的が設定され、今後の活動を広げるようなチャレンジングな申請が採択に至っています。過去の申請で不採択だった事業者が別事業の申請において採択となった事例もありますので、申請事業の内容を検討したうえでの再申請もご検討ください。なお、今回の書類不備の中では誤ったファイルのアップロードが複数見受けられました。申請の際には提出ボタンを押す前に今一度ファイルの内容をご確認ください。
《舞踊分野》
今回は22件の申請のうち10件が採択となり、舞踊分野における採択率は45.5%で過去最高となりました。20代の若手アーティストによるチャレンジ性の高い事業が多く採択されているほか、キャリアのあるアーティストによる新たな挑戦となる事業も採択されています。キャリアに関わらず自身にとっての課題と挑戦が明確に示され、具体的な計画が練られた事業が採択に至っています。「国際的な芸術創造活動」の申請が多いのも舞踊分野における特徴で、今回は3件が採択されています。なお、事業目的が明示されていても計画に具体性が認められない申請や、事業内容に対して予算やスタッフの配置が不適合な申請は、実現性を評価できず不採択となっています。また、当助成の趣旨とは合わないものの別の助成プログラムにより適していると認められる申請も見受けられましたので、アーツカウンシル東京の他の助成プログラムもご参照ください。
《美術・映像分野》
美術・映像分野は35件の申請があり、個展、グループ展、上映会など8件が採択に至りました。自身や家族のルーツなど、これまで継続して取り組んできたテーマをさらに掘り下げたもの、表現や展示方法において新たな試みがあるものが高く評価されました。特に、会場の特性を生かしたサイトスペシフィックな展示など、場所も含めて効果的な作品展開を試みようとする事業が複数採択されています。一方で、参加アーティストやテーマの設定に必然性が読み取れない個展・グループ展、事業計画や展示内容が具体性に欠ける事業、創造性・挑戦性が低く鑑賞の普及を主な目的とする事業などは不採択となっています。また、作品の販売を含む事業、過去実績において申請団体のクレジットが確認できない事業は要件不備となりますのでご注意ください。
《伝統芸能分野》
今回は9件の申請があり、3件が採択となりました。実演家以外のプロデューサーが企画・制作を担う事業と、実演家が自身の課題に向き合い新たな挑戦を試みる事業が採択に至っています。いずれも分野や種目、自身の現状への課題を踏まえ、事業を行う目的が明確で、実現への工夫や計画が具体的な事業でした。一方、残念ながら不採択となったものは、目的が曖昧なものや計画の実現性、具体性に欠けるものが目立ちました。また要件不備となる申請も複数ありました。ご申請の際には公募ガイドラインを今一度ご確認いただき、不明な点は事前にお問い合わせください。伝統芸能分野では新規性のある事業を計画することは難しい面もありますが、自身の活動の中での切実な課題や困難に対し挑戦や改善を試みる事業も申請することができます。身近な課題などから発想を広げ、これまでの活動を深化させたり、一歩を踏み出すための事業を企画される際は、是非ご申請をご検討ください。
《複合分野》
複合分野の申請は32件あり、既存の分野に属さない事業、複数分野のアーティストによる協働など、6件が採択に至りました。リサーチやワークショップ、トークを通じて観客とともに考えるための仕組みを作ろうとするもの、分野の枠にとらわれない新たな表現方法を模索するもの、海外での発表を含むものなどが、挑戦性を高く評価され採択に至っています。一方で、芸術創造活動を主な目的としないもの、事業計画に具体性がないもの等は不採択となっています。