Arts Council Tokyo Bridge Meeting 第13回目のゲストは、C Channel株式会社 代表取締役社長 森川亮氏をお迎えします。日本テレビ、ソニーを経て、2007年にはLINE、現在は女性向け動画メディア「C CHANNEL」で、常に時代の先をいく新しいサービスやプラットフォームを作り上げてきた森川さん。SNSユーザーの心理と行動のお話や、現在構想している新規事業や今後の市場予測などを通して、アート作品やプロジェクトを、人々の消費行動や生活習慣などに寄り添ったものにしていく、つまり”時代に最適化”させていくためにはどうすればいいのか、広報視点で考えていきます。
日本においてSNSの利用者が急激に増えたのは2011年の東日本大震災で、SNSを通じて身近な人の安全を確認するといった活用法が注目を集めました。それに端を発し台頭したのがLINEです。他のSNSで情報が公開されすぎることによるトラブルが増加する中、クローズドな仕様が特徴のLINEは若者の圧倒的な支持を受けて普及していきました。
第13回となるArts Council Tokyo Bridge Meetingでは、そのLINEを立ち上げた森川亮さん(現C Channel株式会社 代表取締役社長)をゲストに招き、現在運営している女性向け動画メディア「C CHANNEL」の話とも絡めながら、情報発信のトレンドについてのプレゼンと質疑応答が行われ、その後のグループワークでは、アート業界における情報発信の課題などを共有しました。
メイク、料理、DIY、ファッション、恋愛など「女子の知りたい!」を15のカテゴリーに分け、1分前後の動画で紹介するアプリ「C CHANNEL」。国内の女性向けメディアではトップクラスの人気を誇り、海外9か国でも展開しています。
「今の若い人は長い文章を読むのが苦手です。日々受け取る情報量が多すぎるため、LINEで配信されるニュースやメルマガもほとんど読まれないのが現状です。サイトを作る側はページがどれだけ見られたかという指標だけではダメで、見た人がコメントやシェアをしたかというエンゲージメントが重要になってきています。」と森川さん。
CMで有名人が使っていると言っても信用されないように、動画も自分に近い等身大のモデルが発信する方が信ぴょう性をもって受け入れられる時代で、シェアしたくなるような動画が喜ばれます」とも話します。押し付けを嫌う傾向が強い若者には、楽しさや心地よさの結果として購買につながるような、さりげない紹介が有効だとのこと。特に、メイクや料理のレシピなどの「How To」系動画の人気が高いとのことで、動画を見る人にとって役立つような情報を魅せていくことがキーなのかもしれません。
続いて、森川さんのプレゼンを受けて質疑応答が行われ、マーケティングのポイント、工夫点、将来の展望などをお話いただきました。
「アートは時代の流れを作ることが大事だと思いますが、日本は美術館・博物館の作法が厳しく、気軽に写真を撮ってSNSに投稿することができないところが多いのではないでしょうか。PRの観点からするとSNSを活用することは非常に重要で、そこからファンを獲得し、拡散してもらえるような仕組みがあると良いと思います。ただ、作品をちゃんと楽しむことも大事であって、SNS映えする写真を撮って投稿することが一番の目的になってしまうのは本末転倒とも言えるので、難しいですね」と森川さん。作品を鑑賞する、楽しむという本質から外れないようにしながら、ファンを増やす仕組みを考える必要がありそうです。
ユーザーの興味を引くためのポイントを問われると、「人は最初の1.5秒で判断すると言われるのでそこに刺激的な画像を入れたり、アルゴリズムの研究をしたり、検索で上位にくるようなSEO対策など、テクニカルも重視しています。デジタル上で目に触れる機会を増やすことが大事なので、C CHANNELではつねにデジタル分析をし、スマホのメディアブランドとなることを目指しています。」と森川さん。SNS施策をするにしても、ただ漫然と投稿するのではなく、ユーザーの反応が良かったものと悪かったものを比較し、改善していく。この見落としがちな当たり前の作業が、とても大切なのです。
また、参加者のインスタスポットづくりの事例については「どのようなものがインスタに上がりやすいかについてはその時の流行りがありますので、トレンドに合ったものを用意するのが一つの手です。また皆さん共通で人気の出そうなインスタタグを作れば、タグ付けすることでプロモーションになるので良いのではないかと思います」といったアドバイスも。そして「2020年の実用化を目指す5G(第5世代移動通信システム)ではテレビとスマホが融合し、動画でコミュニケーションすることが当たり前になっていると思うので、今からとても楽しみです」と将来の展望と期待をお話しされました。
今年度最後のワークでは、今回のプレゼンを受けての感想や課題、できることなどを共有する場となりました。
「文豪ブームがきていて文豪好きの若い女性に向けたツイートに反応がある」「自治体組織なのでSNSを使うことへのハードルがあるが、その中で何ができるか考えたい」との声が聞かれる一方で、「若い世代にウケることも大事だが、内部で企画を通すにはすべての年齢層を視野に入れることが不可欠」との意見も。所属団体の状況や場面によって、何をすべきなのかは異なります。一方で、「編集の人間として文字で何かを伝える、ということをしてきたが、そこに捕らわれていてはだめで、動画もやらなければいけないと思っている」「ファストファッションのように、ファストアートとはいかずとも気軽に興味を持ってもらえるような努力が必要」など、現状に課題を感じつつも、前向きな姿勢で取り組んでいきたいという意見が多く聞かれました。その時々の状況によって、何が最善の施策なのかを判断し、実行していくために、今後も様々な立場から広報活動に生かすための知見を探りながら、さらに検討を深めていくことになりそうです。
森川亮(もりかわ あきら)
1989年筑波大卒。日本テレビ、ソニーを経て2003年ハンゲームジャパン(現LINE=ライン)入社、2007年同社代表取締役社長に就任。2015年3月同社代表取締役社長を退任し、現在C Channel株式会社代表取締役社長。
芸術文化団体等で主に広報を担当している方、芸術文化研究者等
30名程度(要事前申込、先着順)
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