スタートアップ助成は、東京の芸術シーンで活動を展開していこうとする新進の芸術家や芸術団体等がチャレンジする新たな芸術活動を支援する助成プログラムです。2024年度第2回の本公募では、197件の申請があり、47件の採択となりました。申請件数は、前回(2024年度第1回)の287件より減少しました。
本助成はオンラインによる申請方法となっておりますが、誤ったファイルが添付されているなど、提出書類の不備や、誤って記載されたと思われる入力内容の不備が目立ちました。オンライン申請フォームに記載のある住所と所在地確認書類の住所が一致していないものや、「主催者」に申請者・団体名の記載がないものが見受けられましたのでご注意ください。また、団体申請に関しては、過去実績の資料において申請団体名と同一の団体名が確認できない場合は、実績不備となりますのでご注意ください。申請事業につきましては、5つの分野から該当するものを選択することになっていますが、複数の分野を選択することが可能です。どの分野にも該当しない場合や、核となる分野を特定できない活動の場合は、「複合」を選択することが可能です。なお、複合分野を選択した場合も、複数の分野を選択することが可能です。
本助成では、目的が明確であり、実現にあたっての予算やスケジュールが適切に計画されているものが採択となっています。申請書の作成にあたっては、公募ガイドラインやQ&Aを事前に良くご確認いただき、対象期間を確認の上、事業の具体性や実現性を明確にして適切な時期にご申請いただきますようお願いします。
《音楽分野》
音楽分野では47件の申請があり、うち10件が採択となりました。いずれも、これまでの活動を踏まえた上で、申請者独自の新たな発想やコンセプト、方法を実践する事業で、それを実現するために適切な事業計画が提示されているものが評価されました。特に、複数の作曲家が共同制作を行うことで協働の在り方を模索する事業や、インタラクティブな音響表現を探求するインスタレーションなど、集団的な創作手法を試みる事業が多く採択されています。また、委嘱新曲を発表する事業もいくつか採択されていますが、既存作品を演奏する公演であっても、プログラミングのコンセプトが練られた事業は採択に至っています。一方、販売促進や教育普及を主な目的とするものや、内容の具体性・明確性に欠ける申請、所在地や収支予算書に不備がある申請は、不採択となりました。助成対象となる要件や審査の観点を確認の上、意欲的な申請をお待ちしています。
《演劇分野》
演劇分野では63件の申請があり、12件が採択となりました。採択事業全体の傾向としては今後の展開を見越した事業計画・ステップアップが示され、その中での申請事業の位置づけや創作における活動段階が示されていました。演劇表現として作品化するために内容や空間設定及び、具体性・実現性のあるスタッフィングなど総合的に計画された事業や、演劇活動を継続する上で発生する諸問題に対し、自分なりの方針をもち実践を試みる事業も採択されました。一方で、作家・演出家や戯曲などの選定意図が不明瞭であったり、事業目的と内容が一致していない事業は採択されませんでした。また上演内容やテーマの選定に際して今日の演劇創造の動向を踏まえ、自身にとっての上演意義や理由が書き込まれていない申請は採択に至っていません。今回は申請者の実績不備、申請者と主催名義の不一致による書類不備も複数ありました。公募ガイドライン「3.申請の資格」を確認の上、申請をご検討ください。
《舞踊分野》
舞踊分野では18件の申請があり、6件が採択となりました。ジャンルとしてはコンテンポラリーダンスが最も多く、次いでフラメンコ、舞踏、バレエ、民族舞踊、ジャズダンス等の申請がありました。申請内容は、20代前半の若手アーティストによる新作発表の企画が多く見られたほか、複数アーティストがコレクティブを組んで活動する事業、国際フェスティバルに参加する事業なども複数見られました。意欲的な申請が多い中でも、申請者にとっての目標が明確に示されており、目標達成のための計画が十分に練られたものが採択されています。なお、事業内容において重要な箇所に未定事項があり実現可能性を判断できない申請、教室や発表会にあたる活動、鑑賞の普及を主な目的とするものは、当助成の対象外となります。公募ガイドライン「2.助成対象とならない事業」の項目を再度ご確認ください。
《美術・映像分野》
美術・映像分野は30件の申請があり、個展やワークショップ、上映会、パフォーマンスなど10件が採択に至りました。作家が自身の体験を通して制作した作品を、展示・上映するのみに留まらず、その体験をいかに共有するか、ケアやコミュニケーションに繋げるか、という点にも重点を置いた事業が高く評価されました。海外での展示、海外作家と協働を行う事業についても、今後のキャリアを見据えた上で国際的な展開を目指すものが3件採択に至っています。一方で、事業の参加者に関する資料は十分に提示されていても、事業自体の内容に不明瞭な部分が多いもの、参加作家の選定や企画の趣旨に必然性が読み取れないもの、これまでの活動から飛躍が見られないものについては不採択となっています。また、過去の実績資料において、申請者・団体名が確認できないものは要件不備となりますのでご注意ください。
《伝統芸能分野》
今回は11件の申請があり、3件が採択に至りました。20代の若手が古典を深く探求し新たな発見を目指す事業と、経験ある中堅が集い新たな挑戦を試みる事業が採択となっています。いずれもこれまでの活動実績を踏まえた課題や目標が明確かつ具体的で、申請事業を通してさらにステップアップを目指すものが採択になっています。不採択になった事業は、事業の目的に対して具体的な方法の記載がないものや、活動の指針や継続性が不明確なものが目立ちました。伝統芸能分野では伝承や継続を念頭に企画された事業の申請も毎回複数ありますが、申請事業が申請者/申請団体においてどのようなチャレンジとなるのか、公募ガイドライン「4.審査の観点」に照らして明確に記載いただきますようお願いします。
《複合分野》
複合分野は28件の申請があり、申請者/申請団体として取り組んできた創作テーマやスタイルがはっきりしており、その延長線でさらに飛躍をめざそうとする事業が6件採択に至っています。特に、現代社会や歴史において見落とされがちな事象について、自身の身体感覚や経験を糸口に問い直そうとする事業が、その独自性を高く評価され複数採択されました。また、一つの主題に対し複数のメディアを用いて作品発表を行う事業も採択に至っています。一方で、創作における新たな取り組みや、申請者/申請団体としての新たな挑戦が読み取れないもの、事業計画や実現性が不十分なものについては、不採択となっています。