伝統芸能である江戸浄瑠璃新内節の伝承と発展のため、古典『男作出世員唄』を新内多賀太夫が語り、鶴賀㐂代寿郎と鶴賀伊勢一郎が三味線、新内勝志壽と鶴賀㐂代三郎が上調子を担当する演奏会を開いた。
内容は、曽我兄弟の家臣である鬼王新左衛門が主君の刀を探すため、白藤源太として身をやつし、喧嘩三昧の日々を送っている設定から始まる。源太は素行の悪さから、村を追放され、愛想もつかされようとしていたが、素性を明かした源太の忠義に妻が感じ入る。そこへ源太の悪仲間の猪熊雷元がやって来て源太に因縁をつける。喧嘩となり、雷元が刀を抜くとそれこそ源太が詮議していた重宝であり、源太は雷元を打ち負かし、刀を取り返し目出度しとなる。
前半の村の者の嘆きや妻のクドキ、後半の源太のミアラワシから悪仲間といった様々な人物描写を表現し分けることが肝心で、伝承された先達の表現と多賀太夫の表現法が合わさることで、後世につながる演奏になることを図った。また、音源や映像資料を残すことでも、後世への伝承につなげた。
【新内多賀太夫】
新内節冨士元派七代目家元で、東京藝術大学博士号を取得し、演奏家、作曲家として活動する。文化庁芸術祭賞新人賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、日本伝統文化振興財団賞、伝統文化ポーラ賞奨励賞などを受賞する。
創作曲に『寿猫』『空海』など、劇伴に『窯変源氏物語』『土御門大路』『黒蜥蜴』など、新作歌舞伎では『マハーバーラタ戦記』『風の谷のナウシカ』『FINAL FANTASY X』などの作編曲を担当する。令和6年の歌舞伎『江戸宵闇妖鉤爪』で初のタテ語りをつとめる。
紀尾井小ホール(東京都千代田区)
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