アーツカウンシル東京の事業

Arts Council Tokyo Bridge Meeting(芸術文化団体広報ネットワーク会) 第10回「“文化情報プラットフォーム”の活用術
-出せばメディアに載る時代、効果的な情報発信とは-」

Arts Council Tokyo Bridge Meeting 第10回目のゲストは、文化庁 長官官房政策課の堀口昭仁さん、KADOKAWA 2021年室の玉置泰紀さんの2名をお迎えします。本Bridge Meetingでも多くの団体が、いかにメディアに情報を取り上げてもらうかを課題としている中、文化庁が2020年に向けて展開する“文化情報プラットフォーム”に関わるお話を通じて、今後、私たちがより多くの人々に事業を認知してもらい、実際に足を運んでいただくにはメディアをどう活用していけばいいか、そのヒントを探っていきたいと思います。

※実施レポート

2012年に開催されたロンドンオリンピックを機に、オリンピックは文化プログラムの新時代へと突入したと言われています。大規模な文化プログラムを開催都市であるロンドンだけにとどまらずイギリス全土で展開し、さまざまなレガシーをもたらすまでになったのです。オリンピック憲章にも、短くともオリンピック村の開村期間は、複数の文化イベントのプログラムを計画しなければならないと記されており、開催国の文化を掘り起こし、世界に広める機会としても位置づけられています。
そして、2020年の東京オリンピックに向けては、ロンドン大会を超えるべく、大会組織委員会が「東京2020文化オリンピアード」、国が「beyond2020プログラム」といった認証スキームを準備するなど、全国津々浦々で文化プログラムを推進する取組みが始まっています。

第10回となる今回のArts Council Tokyo Bridge Meetingでは、堀口昭仁さん(文化庁長官官房政策課)、玉置泰紀さん(KADOKAWA2021年室)をゲストに招き、文化庁が展開する「文化情報プラットフォーム」とその活用について、お話をいただきました。その後、森隆一郎(アーツカウンシル東京 PRディレクター)も交え、今後プラットフォームをどう活用していくべきか、参加者同士のディスカッションが行われました。


まずは文化庁長官官房政策課の堀口昭仁氏さん登壇。東京2020大会に向けた文化ブログラムや「文化情報プラットフォーム構想」の仕組み、課題などについて説明しました。

プレゼンテーション資料(PDF)はこちら
※上記資料に記載されている情報は、2017年9月27日時点のものです。

堀口昭仁|文化情報プラットフォームの活用、自走化に向けて模索を続ける

文化プログラムは大会組織委員会が主導する「東京2020文化オリンピアード」や国が主導する「beyond2020プログラム」、東京都が主導する「東京文化プログラム」などがあり、それぞれに認定要件が定められており、審査があります。そうした全国各地で実施される文化プログラムや文化施設などの情報を一元的に集約するプラットフォーム(データベース)を構築し、国内外に情報を発信するのが「文化情報プラットフォーム構想」です。将来的には民間事業者も活用できるオープンデータベースとして提供し、2020年以降のレガシーとするものです。
自治体、文化施設、イベント主催者、ボランティアなどに文化情報を入力・登録してもらう必要があり、多くの人の理解と協力が必要な「文化情報プラットフォーム構想」の現状について、「本格稼働、自走化に向けて顕在化した課題と向き合いつつ、『やりながら』『つくる・なおす・あつめる・かんがえる・ひろめる』を基本スタンスに改善を続けている状態」と、手探りで進めている日々の葛藤の様子を伝えました。オープンデータの難しさと、それに馴染みのない社会の現状を理解して、よりよいものにするために心を砕かれている様子でした。


次にKADOKAWA 2021年室の玉置泰紀さんが登壇。Walkerシリーズの変遷に見る読者ニーズの変化、ウォーカープラス(WalkerのWEB版)の他サイトとの差別化などについてお話されました。

プレゼンテーション資料(PDF)はこちら

玉置泰紀|WEBメディアの充実にはイベントなどリアルコンテンツとの融合が必須

『Walkerシリーズ』の始まりは、1990年3月創刊の『週刊トーキョー・ウォーカー・ジパング』。その後、地方展開や『ラーメンウォーカー』、『ひと駅Walker』、『季節Walker』のほか、企業とユーザーをつなぐ『カスタムWalker』などが手がけられています。近年はイベントに特化した『大河原邦男Walker』、『若冲Walker』、映画と連動した『シン・ゴジラWalker』『新海誠Walker』などが支持され、よりエクスクルーシブな媒体が注目されました。
ポータルサイト「ウォーカープラス」は、花火などイベントが多い時期には月間2億ページビュー(PV)がある人気サイト。紙媒体と同様に、「コンセプトカフェやバスツアーなど、イベントを軸にしたコンテンツ展開が欠かせません」と玉置さん。今後は、パソコン、スマートフォン、紙媒体、シンポジウム、SNSなどを交えて発信を続け、新たな形で都市情報の可視化を目指す予定だそうです。


コンテンツをリッチ化するために、いかにデータを収集しキュレーションするか

多くのWEBメディアは圧倒的な情報量を維持するために、イベント広報・PRサイトから情報を買い、掲載するフローができています。このような情報はよい意味で無味乾燥、発信者の熱やカラーがないのが特徴。コンテンツのリッチ化を図るためには、情報を編集して発信することが必須です。「『文化情報プラットフォーム』というオープンデータベースに、主催者や取材者が熱を込めた情報を直接書き込むことができれば効率よくリッチな情報発信になり得るのでは」と森。この仕組みが機能した際のメリットが、参加者全員に共有されました。
「文化情報プラットフォーム」をいかに構築するか、また集約されるデータの精度をいかに担保するかが課題であり、”出せばメディアに載る”オープンデータのメリットでありデメリットが明らかになりました。


グループディスカッション|行政機関の文化庁、民間のKADOKAWAの見解を踏まえ広報の現場が思うこと

ゲスト2人のプレゼンテーションを踏まえ、参加者の皆さんが5つのグループに分かれてディスカッションが行われ、「文化情報プラットフォーム」が積極的に活用されるための課題抽出と解決案が検討されました。文化団体の広報という使う立場としてだけでなく、システムや社会的な側面を踏まえた意見が見られました。

複数のグループからあがったのは、「『beyond2020』の認知度を向上させ、利用のモチベーションを喚起するインセンティブを用意しては」、「利用者の立場としては、Amazonのリコメンドサービスのような、出口までサポートする機能があると良いのでは」という意見。認知度を高め、情報発信者と利用者双方にとって「使いたい」「使える情報がある」という状態をつくることの重要性が指摘されました。
また、「プレスリリースを元に、常に新しい情報がアップされていることが担保されれば、汎用性は高いと思う」という情報収集力、拡散力に期待する一方で「情報がどのように扱われているかを把握しきれないのが不安」「アーカイブとして活用されることを期待するが、どこまで正確性を保持できるかが疑問」というオープンデータならではのリスクを不安視する声も聞かれました。


しめくくりに、現在の「文化情報プラットフォームの構想」の中心である、文化庁が構築する文化プログラムのポータルサイト「Culture NIPPON」をわかりやすく充実させることで、より魅力的なサイトにすることを前提に「文化庁が、メディアが自由に使える情報のアーカイブ(文化情報プラットフォーム)という仕組みを作り上げるという方向性で考えてみてはどうか」と玉置さん。情報サイトの運営におけるPV数の獲得には大きな予算も必要になるため、画期的なアーカイブという仕組みづくりを優先することを提案しました。「例えば、これから東京オリンピックを参考にするであろうパリ、ロサンゼルスで文化プログラムを企画する方のために、英訳は必須で、そのコンテンツをベースに東京の文化プログラムを海外へプロモートしていくことも考えたい」と森。長く活用できるアーカイブの可能性を指摘しました。
オリンピックという国際的なイベントを機に、行政、民間企業が連携し、オープンデータという新しい情報の仕組みを定着させ長く活用するために、さらに検討を深めていくことになりそうです。

ゲスト

堀口昭仁
文化庁長官官房政策課専門職(文化プログラム担当)
東京生まれ。早稲田大学卒業後、呉服屋勤務を経て、2004年10月に文部科学省入省。教育行政を担当した後、2007年7月より文化庁。国際文化交流、予算総括、著作権等を担当し、2016年4月より文化プログラム担当。政策研究大学院大学文化政策プログラム修了(専門はフィルムアーカイブ政策)。

玉置泰紀
KADOKAWA/2021年室エグゼクティブプロデューサー・担当部長
京都市埋蔵文化財研究所理事。大阪府日本万国博覧会記念公園運営審議会委員。おおさかカンヴァス審査員。同志社大卒。産経新聞神戸支局・大阪本社社会部で7年記者、大阪府警本部捜査1課担当〜福武書店月刊女性誌〜角川、編集長4誌〜総編集長から現職へ。

対象

芸術文化団体等で主に広報を担当している方、芸術文化研究者等

定員

30名程度(要事前申込、先着順)

料金

無料

申込方法

必要事項(1.ご氏名、2.ご所属先、3.ご連絡先)をご記入の上、artscouncil-tokyo@prap.co.jpまでお申し込みください。

※お申し込みはご本人様に限ります。
※受付は先着順となります。
※お申し込みをいただいた方には事務局より返信いたします。3日以内に返信がない場合は、お手数ですが、下記事務局までお問い合わせくださいますようお願いいたします。
※お申込みいただきました方のご所属と個人名は当日の参加者へ共有させていただきます。表記について希望しない場合は事務局までご一報ください。

※法令及びその他の規範に従い、ご記入いただきました個人情報は当事務局が責任をもって管理いたします。 本事業以外、他で使用する事は一切ございません。

お問い合わせ

芸術文化団体広報ネットワーク会事務局
株式会社プラップジャパン 岩坂、金子、松葉
TEL:03-4580-9106
FAX:03-4580-9132
E-mail:artscouncil-tokyo@prap.co.jp

開催場所

アーツカウンシル東京 大会議室
(東京都千代田区九段北4-1-28 九段ファーストプレイス8階)

クレジット

主催
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)