アーツカウンシル東京の事業

Arts Council Tokyo Bridge Meeting(芸術文化団体広報ネットワーク会) 第12回「異なる立場からアート業界広報を探る -必要な視点、情報発信、SNS活用など-」

Arts Council Tokyo Bridge Meeting第12回目は、ガールズ・アートーク主宰 新井まるさん、アートメディエーター 冠那菜奈さんの2人をゲストにお迎えします。「ガールズトークをするように、アートの話をしてほしい。もっと身近にアートを感じて欲しい」という想いから、各分野で活躍する女性たちがリアルな目線で情報発信する、「ガールズ・アートーク」というアートメディアを立ち上げた新井さん。一方、アートメディエーターとして、大小様々なアートプロジェクトやアートバラエティ番組などにフリーランスでかかわりながら、自身で非営利法人も立ち上げるなど、様々なプロジェクトに多様な立場で参画する冠さん。メディア側と制作側、立場が異なるお二人とともに、これからの広報に必要な視点や考え方、手段、また今回特別に設けられた課題について、参加者の方々とディスカッションしながら考えていきたいと思います。

※実施レポート

アートメディエーターとして、大小さまざまなアートプロジェクトやアートバラエティ番組などにフリーランスで関わりながら、自身で非営利法人も立ち上げるなど、多様な立場でプロジェクトに参画している冠さん。一方、「ガールズトークをするように、アートの話をしてほしい。もっと身近にアートを感じてほしい」という想いから、各分野で活躍する女性たちがリアルな目線で情報発信する「ガールズ・アートーク」というアートメディアを立ち上げた新井さん。制作側とメディア側という異なる立場で活動されているお二人のお話を聞いた後、これからの広報に必要な視点、考え方についてディスカッションが行われました。


プレゼンテーション資料(PDF)はこちら
※上記資料に記載されている情報は、2018年1月31日時点のものです。

冠那菜奈|橋渡しがメディエーターの仕事。それをアートでやりたい

医療分野などで使われることの多いメディエーターという立場は、性質の違う人・物・事をつなぎ合わせてより良い場をつくる橋渡し役。フリーランスであることを活かし、大小様々なアートプロジェクトなどに多様な立場で参画しています。業務内容は、広報活動だけではなく、企画・運営・進行・実施・調整といったマネジメント業務や、資金調達・会計・経理といった経理業務、さらには活動終了後の検証、評価まで、その時々によって様々な業務を担います。そんな冠さんは、0から1を生み出すことより、1を100に作り上げることが得意だといいます。「新しいことをしたいと思っている人の考えは、なかなかすぐ周りから理解を得られるとは限りません。ですが、それを見過ごしてしまうと次の文化が生み出されなくなってしまうので、私自身はどんなことにも好奇心を忘れないように心がけています。アートの企画は非日常を作るもので、ハレとケでいうハレを作ることが多いですが、ケの部分も大事にしたい。日常にアートを根付かせるために地域密着型や恒常的な活動にも重きをおいています。」と話しました。そんな冠さんが関わった具体的な活動事例を通して、広報活動に活かせるポイントは何かを考えてみたいと思います。


事例|様々な立場でプロジェクトに関わるからこそ見えてくる、広報に必要なこと

芸術文化を通して世界とつながることを目指した都市型総合芸術祭である、「東京芸術祭」。元々独立していたフェスティバルや芸術祭を統合し、2016年からスタートしたこの大規模フェスティバルに、広報・SNS運用担当として参画した冠さん。「当初、SNSのアカウント自体は存在していたものの、積極的に運用するまでには事務局も手が回っていないのが現状でした。さらには複数のフェスが統合したことでプログラム数も多く、それをどう発信していくかが課題でした。そこで、投稿数を増やしながら、2017年の東京芸術祭のオープニングイベントで、いわゆる芸術好き以外にも興味を持ってもらえそうでSNSにアップしたくなるカラフルフォトブースを設置したり、トークイベントがあったときは、ログを残しておいて、後からまとめてみてもらえるようにしたり、リアルとSNSの相乗効果を考えた企画を実施していきました。」こうした小さな工夫の積み重ねで、Facebook前年比+800、Twitter前年比+500のフォロワーアップにつながったとのこと。SNSと聞くと、何か特別なことをしなくてはいけないのではないかと思いがちですが、できることを地道にやっていくことが、ファンを増やす秘訣かもしれません。

豊島区にある施設を活用し、市民が文化活動を行うことを支援する「としまアートステーション構想」。地域住民が主役になるこのプロジェクトに、全体のマネジメント業務を行う立ち位置で参画した冠さん。「ただ単に、活動を行う場をこちらが提供するだけではなく、地域住民自身が、”アートステーション”を自分たち自身で創造するようになることを最終的な目標にしていました。」と話します。民間企業が所有する、上池袋の風呂なし木造アパートをアーティストと一緒にリノベーションし、街の魅力を再発見する展覧会やツアーを行ったり、区役所の中に数日間だけ「アートステーション構想推進課」を開設し、アーティストがパフォーマンスをしたり、住民が窓口対応をしたりと、地域住民が企画する活動のヒントになるようなプログラムを実施していきました。中でもユニークなアプローチが、「としまアートステーションのつくりかた」という、アートステーションをつくる心得えをまとめた冊子とカードゲーム。カードゲームでは「人」「場」「活動」「お金」「マネジメント」という5種類のカードを組み合わせながら、プロジェクトを動かす側になったつもりで、自分だけのアートステーションをつくるというもの。ゲームを用いた”追体験”でプロジェクトへの理解を手助けするという手法は、広報活動においてもヒントになるかもしれませんね。


プレゼンテーション資料(PDF)はこちら
※上記資料に記載されている情報は、2018年1月31日時点のものです。

新井まる|もっと多くの人たちに、気軽にアートのある人生を楽しんでもらいたい

新井さんが主宰を務める、アート専門ウェブ・マガジン「ガールズ・アートーク」の読者層は7割が女性で3割が男性、20代後半から40代半ばが全体の75%を占めています。扱うジャンルも絵画、デザイン、建築、音楽、ファッションと幅広く、記事も毎日アップされています。編集部にはプロのライターはもちろん、料理家や臨床心理士、デザイナー、学生、オフィスワーカーなどアート好き女子が約30人集まり、情報を発信しています。人気のコンテンツは、女性読者がアートデートを疑似体験できる連載企画『イケメンと行く妄想アートデート』や、美術館の常設展示にフォーカスし、アート初心者にもわかりやすいよう美術評論家の花房太一さんが天使役となって会話が進む『アートオタクな天使のスパルタ鑑賞塾』など。アート特有の敷居の高さを下げて、身近に感じられるコンテンツが人気を博しているようです。取り上げる作品や記事について”クオリティは下げずに、敷居だけを下げる”ことに日々試行錯誤を続けているという新井さんは「記事を書く際に大事なのは、まずはタイトル。シンプルかつキャッチーであることが大切です。お送りいただいているプレスリリースも、タイトルが素敵だと目に留まるし、読んでみたいと思いますね。また、いいね!が付きやすい=目に留まりやすいSNS投稿のポイントとして言えるのは、人の顔の写真を使うことです。特に、女性の顔の写真は、ユーザーの反応が良いですね。」と、メディアならではの視点で情報発信のコツを話してくれました。


グループワーク|ガールズ・アートークと、あなたが所属する組織・団体がコラボレーションするなら?

プレゼンテーションを踏まえ、今回は、「今年5周年を迎えるガールズ・アートークが5月に行う記念イベントで、もしあなたの組織や団体がコラボレーションするとしたら?」というお題に対し、参加者の皆さんが5つのグループに分かれてディスカッションを行いました。
周年イベントの参加料がネックになっているという課題に着目した、「ダンスと香道を楽しむイベントにいくら払う?という値付け参加型イベント」や、会場のアドバンテージを最大限に活かした「『スパイラル』のクローズドスペースを80年代のバブリーな雰囲気で飾って行うアーティストイベント」、模型作りという斬新かつアーティスティックな方法で参加者の交流を図る「模型×合コン in 東京工業大学百年記念館」、など、所属する組織・団体の特性や得意分野を最大限に活かした、オリジナリティあふれる企画が続々と飛び出しました。新井さんは「この短時間で、実現できそうなアイデアがいくつも出てきてびっくりしました。今の仕事は人とのつながりで成り立っていますので、これからも皆さんとご一緒できる機会があればぜひお願いしたい」と話していました。

今回のディスカッションでは、メディアとの共同企画を広報活動に生かす方法をシミュレーションしましたが、今後も様々な立場・視点から、広報業務に必要なことが何なのか、さらに検討を深めていくことになりそうです。

ゲスト

新井まる(あらい まる)
アート専門webマガジン「girls Artalk(ガールズ・アートーク)」代表 / 株式会社maru styling office代表取締役
イラストレーターの両親のもと、幼いころからアートに触れ、強い関心を持って育つ。大学時代からバックパッカーで世界40カ国を巡り、美術館やアートスポットなどにも足を運ぶ旅好き。新卒採用で広告代理店に就職し営業として3年間勤務の後、アパレルEC部門の販促に約1年間関わる。その後、一念発起して独立。アート専門webマガジン「girls Artalk(ガールズ・アートーク)」を立ち上げ、アートの魅力を伝えることに日々奮闘している。好きなものは、餃子とお酒と音楽と旅。

冠那菜奈(かんむり ななな)
アートメディエーター / Tiarart.com代表 / 一般社団法人オノコロ理事
1987年生まれ。武蔵野美術大学芸術文化学科卒業。大学在学中から、様々なメディアを駆使し、ヒト・モノ・コトをより良い形でつないでいくアートメディエーターになることを目指し、2011年大学卒業後フリーランスとして今も奮闘中。それぞれのニーズに合わせて企画やコーディネート、マネージメント、広報等を担当。主な活動として、フジテレビ特番アートバラエティ番組「アーホ!」、としまアートステーション構想、茨城県北芸術祭、寺田倉庫アート事業企画などがある。 http://www.tiarart.com/

対象

芸術文化団体等で主に広報を担当している方、芸術文化研究者等

定員

30名程度(要事前申込、先着順)

料金

無料

申込方法

必要事項(1.ご氏名、2.ご所属先、3.ご連絡先)をご記入の上、artscouncil-tokyo@prap.co.jpまでお申し込みください。

※お申し込みはご本人様に限ります。
※受付は先着順です。
※お申し込みをいただいた方には事務局より返信いたします。3日以内に返信がない場合は、お手数ですが、下記事務局までお問い合わせください。
※お申込みいただきました方のご所属と個人名は当日のゲストへ共有させていただきます。共有を希望しない場合は事務局までご一報ください。

※法令及びその他の規範に従い、ご記入いただきました個人情報は当事務局が責任をもって管理いたします。 本事業以外、他で使用する事は一切ございません。

お問い合わせ

芸術文化団体広報ネットワーク会事務局
株式会社プラップジャパン 岩坂、金子、松葉
TEL:03-4580-9106
FAX:03-4580-9132
E-mail:artscouncil-tokyo@prap.co.jp

開催場所

アーツカウンシル東京 大会議室
(東京都千代田区九段北4-1-28 九段ファーストプレイス8階)

クレジット

主催
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)