スタートアップ助成は、東京の芸術シーンで活動を展開していこうとする新進の芸術家や芸術団体等がチャレンジする新たな芸術活動を支援する助成プログラムです。2024年度 第1回の本公募では、287件の申請があり、前回(令和5(2023)年度 第4回)の196件から大幅に増加しました。昨年度(令和5年度)より申請方法が郵送からオンラインに変わりましたが、誤ったファイルが添付されているなど、提出書類の不備が目立ちました。申請書の作成にあたっては、公募ガイドラインやQ&Aを事前に良くご確認いただくことをお願いします。オンライン申請フォームでは、どの画面にも公募ガイドラインのリンクがありますので、申請フォーム入力中でも、不明点がある際には公募ガイドラインを参照していただくことをお勧めします。また、公募説明会も複数回開催していますのでご活用ください。なお、スタートアップ助成は、2024年度から年間3回の公募に変更になっております。申請受付期間と助成対象事業の実施期間をご確認いただき、適切な時期にご申請いただきますようお願いします。
《音楽分野》
音楽分野では72件の申請があり、うち14件が採択となりました。多様な音楽ジャンルからの申請がありましたが、採択されたのはいずれも、申請者のこれまでの実績を踏まえたチャレンジ性や独自性を読み取ることができる事業で、結果として現代音楽やクラシック音楽が多くなっています。特に、当該領域の歴史や状況を考察した上で、異なる専門性や地域・時代の文脈を掛け合わせることによって、新たな創作の糸口を見つけようとする事業が多く見られました。また、個人申請や20代の採択者が多かった点も今回の特徴です。一方、申請事業者名義での過去の実績が不十分であった申請、事業の実現にあたって適正でない予算計画となっている申請については、採択に至りませんでした。音楽ジャンルは問いませんが、コンセプトや具体的な内容を良く計画した上でご申請いただきますようお願いします。
《演劇分野》
演劇分野では令和3(2021)年度 第1回に続き過去2番目に多い申請件数(101件)で、18件が採択となりました。採択に至った事業は、先行世代の芸術的達成や今日の芸術創造の状況を踏まえた上で、申請者におけるオリジナリティ・独自性が打ち出されている内容でした。また、扱う戯曲や主題・演出方法などのプランが明確であり、それらを演劇表現としてどのように作品化するかが申請書類に具体的に書き込まれていました。主題としては、家族など親密な人間関係のあり方を問い直そうとしている事業が複数採択されました。さらに、創作における権力均衡や対等でフラットな事業実施体制が目指されており、作品発表に至るまでのプロセスで用いる手法や段階が検討されている事業が採択の半数を占めたのが今回の特徴です。公募ガイドラインに記載の審査の観点をご確認の上、意欲的な申請をお待ちしております。
《舞踊分野》
舞踊分野には25件の申請がありました。ジャンルは、コンテンポラリーダンスが最も多く、次いで舞踏、民族舞踊、バレエ、ジャズダンス、日本舞踊、ストリートダンス等の申請がありました。ここ数回は舞踏関連の申請が徐々に増えている傾向にあります。世代としては、20代前半の若手アーティストと、40代中堅アーティストからの申請が多くみられました。自身の課題や挑戦が明確に示され、申請者のさらなるステップアップが期待できる事業が採択されています。不採択となった申請の中には、企画の具体性や、収支バランスの見直しが必要とされる申請もみられました。なお、団体名義での実績が確認できない申請や、一般公開を伴わない事業は、申請要件を満たしませんのでご注意ください。
《美術・映像分野》
美術・映像分野は55件の申請があり、個展やグループ展など8件が採択に至りました。海外での展示企画など、自身が取り組んできたテーマや創作の延長線上でさらに飛躍を目指すものが多く、独自性の高さに加え、コンセプトや展示プランが明確に示されている点が評価されました。映像分野の申請が複数ありましたが、このうち実験映画の制作・上映会が1件採択に至っています。また、社会包摂や地域活性化を主な目的とした事業については、アーツカウンシル東京の他の助成プログラムへの申請もご検討ください。なお、研究考査に関わるもの、申請者が主催者とならない公募展への参加は助成対象になりませんのでご注意ください。
《伝統芸能分野》
今回は7件申請があり、3件が採択に至りました。いずれも個人や団体における活動の指針が明確で、事業内容の具体性が高い事業でした。個人や団体にとって新たな取り組みや活動のステップアップになる事業はチャレンジ性を高く評価しています。不採択となった事業には、事業の目的や課題意識に対する具体的な内容が読み取れない申請が多くありました。伝統芸能分野における観客層の拡大や継承を目指し、分かりやすさや親しみやすさに重きを置く事業もありましたが、具体的な方法が読み取れない申請は採択に至りませんでした。ご申請の際には、目的・内容・取り組みの適合性と具体性を明確に記述いただきますようお願いします。
《複合分野》
複合分野での申請は27件あり、詩や文章を創作・公開するものが2件、活弁上映会が1件、プロダクトデザインと映像を組み合わせた展覧会が1件、音楽と演劇を掛け合わせた新たな表現形態を模索する事業が1件の、計5件が採択となっています。領域横断的に活動するアーティストや異なる分野のアーティスト・音楽家などが協働で行う事業など、独自性の高い取り組みが多い中、目的と取り組みに一貫性があり、事業計画が明確なものが採択に至っています。