シンガポール出身の現代アーティスト ミン・ウォン(1971年生まれ)を東京に招聘し、東京を舞台にした日本の大衆文化と関わりの深い映像作品を制作、展覧会形式で発表した。日本映画史において重要な位置を占めつつも十分な評価がされてこなかった日活ロマンポルノを現代のジェンダーの視点から扱うため、ソーシャルネットワークサービス(SNS)上で展開される現代の映像文法に着目。とりわけ中国における「偽娘」と呼ばれる女性を装う男性(クロスドレッサー)たちが近年とりわけ10代の若者の間で人気を博していることから、日活ロマンポルノをウォン氏扮する「偽娘」が演じるという制作の構想が生まれた。2019年夏、弊委員会のプロジェクトスペース「アサクサ」に簡易的な撮影スタジオを作成、一台のiPhoneのみで、時に自撮り棒などを活用しながら、作家、3人のスタッフで3日間に渡り撮影を行った。展覧会では会場を元ポルノ女優の「偽娘」の部屋と見立て、オープニングでは、ウォン氏扮する「偽娘」が登場し、「ピロートーク」と題したパフォーマンスイベントを行った。
【ミン・ウォン】
1971年シンガポール生まれ。ベルリンを拠点として活動するアーティスト。象徴的なワールド・シネマの傑作に、リメイクという手法を通じて自ら入り込み、語り口や脚本、演出技法に新しい解釈を加えるマルチスクリーン映像作品で知られる。これらの作品においてウォンは、自ら出演し、男女ともに複数の訳を演じることで、オリジナルの映画との差異を際出たせ、人種的・文化的アイデンティティー、ジェンダー、言語、ナショナリティーといった問題に言及する。2009年第53回ヴェネチア・ビエンナーレのシンガポール館を代表し、シンガポール人として最高の審査員特別表彰を受賞。その後、同展は世界各地を巡回した。以降、ミン・ウォンの活動は国際的な注目を集め、シドニー・ビエンナーレ(2010年)、光州ビエンナーレ(2010年)、シンガポール・ビエンナーレ(2011年)、リバプール・ビエンナーレ(2012年)、釜山ビエンナーレ(2018年)、アジア・アート・ビエンナーレ(2019年)などの国際展に参加し、世界中で認知されるようになる。ベネチア・ビエンナーレのシンガポール館での個展を再構成した原美術館(品川区)での個展「ミン・ウォン ライフ オブ イミテーション」(2011年)、小津安二郎の「東京物語」やアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」など、日本の映像文化から着想を得た新作を発表した資生堂ギャラリーでの個展「私のなかの私」(2013年)など、国内でも展示の機会に恵まれ多くのファン層を獲得してきた。
〒111-0035 台東区西浅草1-6-16
アサクサ実行委員会
委員長
大坂紘一郎
info@asakusa-o.com
アサクサ及びその近郊(東京都台東区)
※事業概要等の情報は、助成をしている団体及び個人より提供されています。