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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2013/06/03

司雑記—2 「ことば」をつむぐ

人目を引くタイトル。気持ちを盛り上げる誘いの文言。コンセプトを的確に伝えるワード。活動の主旨を諒解してもらえるテキスト。企画、および企画会議は「ことば」との戦いとさえ思えてくる。そして、手にしたイメージを伝える「ことば」の獲得。詩人でも文筆家でもない、実務家でしかない自分が、ことばを探して書を開き、ことばを求めて話しを聞く。

前回のブログのタイトルに冠した「情報共有と即時一報」は、既に手にした大切な二つの「ことば」だ。リスクを回避し、効率良く、且つ、チャレンジングな展開―つまり、プロジェクトを円滑に実施するための秘訣のことばだ。そして関与者の流動性が高い現場にこそしっかりとカルチャーとして浸透させたい、呪文のようなことばだ。適正な情報共有があらゆる現場でなされるようになったら、中間支援団体としてのわれわれの仕事の半分は終わった、と言えそうな気もする。たぶんそうにちがいない。それくらい重要な「ことば」だ。そして、行き渡らせる事が難しいことも認識している。どの状況をどのことばで伝達するか。ちょっと考えただけでもスキルフルな所作ではないか。それをエレガントに、そして時には泥臭いまでの熱意でしてみせて、現場を采配し成功に導く先輩諸氏の姿に、惚れ惚れし、自らの非力に肩を落とす。

ところで、6月1日に共催団体の皆さんと、今年の目標の発表(公約)を行った。持ち時間約8分では、事実確認的(コンスタティブ)な発言をもって、誠実に事業内容を語る、それには短すぎる。どうしても、行為遂行的(パフォーマティブ)な発言になる。説明ではなく伝達行為。明瞭に思いを伝えるために、有り余る内容を削り落とし、骨格や構造、背景にある想いを「ことば」にできる技量が求められる。仮説の構築力、問題点の編集力、事業の構成力だろうか。そのパートのいたるところで、繊細に気づくことと同時に言語化する習慣が求められる。

現場でことばを獲得する。逆に言えば、未だない「ことば」に出会い、紡ぎ、導くために現場がある。6月1日に口にした「ことば」が実態化できたかを2月8日に報告し合う。事業実施を通じ、さらに新しいモヤモヤを手にしては「ことば」を生み出す作業を積み重ねる。

「ことば」が用意されたことで、考え方や活動は一気に伝わる。広がりを持つ。としたら、「東京アートポイント計画」は未だ自らを語る「ことば」を用意できていないことになる(のだろう)。そのことには、薄々気付いているというよりも、語る「ことば」の不在を知りながらも、現場を優先させてきた。しかし、TARLで貯えてきた「ことば」が動き始める。われわれが施策する事業の概念の輪郭が、実態として、現前化しつつある(と思っているのだが)。

その上で、想いを語ることばが、行き交うようになれば、現場も状況もより活性化することだろう。「東京アートポイント計画」を語る「ことば」。そのことばを流通させることが、僕らにとっての最大のタスク。新しい仲間を求めるわれわれには、伝わることばの用意が急務なのだ。そのことを改めて肝に命じて、今年の事業の展開を進めていきたい。

APキックオフ会130601
6月1日「東京アートポイント計画キックオフ会」での8分間のプレゼン

東京アートポイント計画 ディレクター 森司

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