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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2018/06/29

「自分の辞書」の言葉を更新する―プログラムオフィサー1年目日記①

「東京アートポイント計画」のプログラムオフィサー(以下、PO)とは、どのようなことを考えながら、日々、仕事をしているのでしょうか?仕事の具体的なイメージやPOが様々な人と一緒に思考する姿をお伝えすべく、今年4月よりPOとなった岡野恵未子が、「1年目」ならではの視点から日々の経験、問いや気づきを記録するブログシリーズを始めます。


意外と緑の多いオフィス周辺。田舎育ちなので落ち着きます。

こんにちは。
2018年4月からPOとなりました、岡野と申します。東京アートポイント計画の情報発信と、そして何においても1度しか経験できない「1年目」を自分のなかによく記憶するための挑戦として、このブログシリーズを担当します!どんな仕事をしているときに、何をどう感じて、どう消化したのか。そんな状況を生き生きとお伝えできればと思っています。

POとなって早3か月、POの先輩方との会議や、共催事業の団体との打合せなどでじりじりと感じている焦りがあります。それは、自分の語彙力の限界です。

今まで使えていた言葉の数では、足りない。伝えきれない。

所変われば品変わる、仕事が変われば言葉も変わる。
勉強不足という意味での語彙力不足はもちろん痛感していますが、それに加えて、今まで使ってきた言葉であっても、その使われ方が今までと微妙に異なるため、以前と同じような感覚では使えなくなっていることに気づきました。その組織のなかで積み重ねられてきた議論や、共有されてきた情報によって、言葉の持つニュアンスが特有のものになっていたのです。

例えば、最近の会議や雑談では、「におい」という言葉が使われています。
この3か月は、人材育成プログラム「Tokyo Art Research Lab」のプログラムをPO全員で考えたり、平成30年度新規共催団体公募に応募していただいた団体のみなさんの書類を読んだり、継続事業のみなさんと今年度のプログラムを考えたりと、「そもそもを考える」機会が多い期間でした。そのなかで、やるべきかやらないべきか、何をすべきか、の判断をする際に使われていたのが「におい」です。「何か、面白いにおいがする」「その企画ってアートのにおいがするかなあ」。

「におい」。日常会話でもよく使う何気ない言葉ですが、このような文脈で使われるのは良い意味で違和感があり、新鮮でした。本来は五感で捉えられない感覚を、あえて五感にまつわる身体的な言葉で表現する。それは、例えば「○○な感じ」と表現するよりも、少しだけ生々しくて、感覚の強さのようなものを印象づける言葉でした。と同時に、「私はまだ、この言葉を使えない」と感じました。「感じ」ではなく「におい」だと判断できる軸が、自分のなかにはまだ見えないと思ったのです。


会議では刺激的なフレーズがたくさん出てきます。

こういった特有の使いまわしをされ、そのニュアンスが組織のなかで積み重ねられてきた言葉は、「現在進行形」の時間軸を持っているような気がします。よく使われ、大事にされている言葉だからこそ、使われてきた時間の分だけ内包している歴史があり、今後も更新されていくような気がするのです。そのような言葉に立ちはだかられた記録は、自分の経験の記録である一方で、「ある言葉が更新されていく」という現象を記そうとすることにより、その組織の・その時の現場感を感じられる「記録」にもなるのではないでしょうか。

このブログを通して、私がどんな言葉(時には状況)を飲み込むのに時間がかかり、その言葉を更新したのかという「記録」を残していきながら、POの仕事や、PO像についても探っていけたらと思います。

では、前置きが長い初回となってしまいましたが、改めてよろしくお願いいたします。
1年後、ここで書き残していった言葉たちの時間軸に追いついて、使えるようになっていることを期待して。

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