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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2020/12/16

アーツアカデミー2020 第2回レポート:ヴィジョン、ミッションを磨く ~受講生による課題・目標の提起と深堀り、共有機会の設定~[講師:山元圭太さん]

第2回は「ヴィジョン、ミッションを磨く ~受講生による課題・目標の提起と深堀り、共有機会の設定~」題し、アーツアカデミーではおなじみのゲスト講師、山元圭太(やまもと・けいた)さんの回です。アーツアカデミーでは欠かせないヴィジョン、ミッションの棚おろしの講座、今回もオンライン上で質問が飛び交い、受講生の気づき、納得が詰まった内容となりました。

自宅から講義を行う山元さん

山元さんご自身活動の紹介の後、受講生に問いが投げかけられました。それは、「皆さんの事業、活動は、エコノミック、ソーシャル、ライフの3つに分けたときにどれに当てはまりますか?3つの割合は何対何対何になりますか?」というものです。過去2年間の山元さんの講座でも出された問いで、ヴィジョン、ミッションを作っていくことや、自身の活動の課題に向き合うための基本になる捉え方になります。エコノミックは、利益の最大化が目的の経済的な事業、ソーシャルは社会課題の解決や社会的価値の創造を目的にしている事業、ライフは理想のくらしの実現を目的とするような事業とのこと。芸術文化に携わっている受講生はエコノミックではないけれど、ソーシャルとライフどのようなバランスになるのだろうかと迷う受講生が多くいました。ソーシャルとライフの比率の判断がつかないという受講生には、一度極端にどちらかに振って考えてみると良いと山元さんからのアドバイスがありました。「解決したいと思っている社会課題を解決できるけど自分がやりたいことではないものと、自分の実現したい機会があるが社会課題として掲げているテーマとは全く関係のないもの、どちらを選ぶかというふうに考えると、ソーシャルとライフの微妙な差がついてくる」とのこと。
まずは、このように自分の活動の特徴に自覚をもつことが大事であると山元さんはいいます。どの特徴が強いのか、「ソーシャルをかぶったライフ」ではないか等、きちんと自覚を持つことで、活動にあった戦略をとれるようになります。

目的、起点、戦略、同業者との関係性がそれぞれぜんぜん違うタイプなのがわかる

また、さまざまなソーシャルの活動の分類も大きく2つに分けられます。1つは課題解決型、もう1つは価値創造型です。課題解決型は社会課題に取り組みそれがなくなることがゴールで、マイナスをゼロにする活動。価値創造型はなくても誰も困らないかもしれないが、あったほうがよりよくなるという価値を生み出す、ゼロからプラスにする活動です。この2つは同じソーシャルでも組織や戦略の作り方が全然違います。課題解決型の活動の場合はゴールがはっきりとしているのでそれに向かって逆算をして戦略が立てられますが、価値創造型の場合ははっきりとしたゴールがない代わりに、とにかくやってみてその結果を組織内で共有していくということがとても大事とのこと。活動のタイプによってとるべき戦略があるので、まずは自覚することでもっと楽に活動できるようになります。自身の活動や事業のタイプを自覚せずに目の前の課題に取り組んでしまい、遠回りをしてしまったり、疲弊してしまったという経験は、芸術文化に携わる方であれば思い当たるところもあるのでは。まずはどのタイプになるのか改めて考えてみることは自身の活動の道すじを明確にするための近道となりそうです。

ソーシャルのタイプでも特色が違うと事業の進め方が大きく異なる。

続いて休憩をはさみ、「『◯◯(受益者)』が『✕✕(目指す状態)』な『△△(活動対象エリア)』をつくる」を各事業・活動に当てはめて埋めていくという課題が出され、これについて受講生が1対1で発表し合うというグループワークを行いました。あてはめていくことでヴィジョンが出来上がるという課題です。そしてグループワークでは、発表者はこのヴィジョンを相手に正確に伝えるということ、聞き手は知ったかぶりをせずに好奇心をもって色々質問するということを意識して行いました。誰かに話し、質問を受けることで自身のヴィジョンはよりクリアになり、考えが磨かれていきます。
また、グループワークは、同じような悩みを共有できたり、異なるジャンルや立場からの視点による発見が得られる機会です。アーツアカデミーではこのグループワークの時間が自身の活動へと向き合う糧にもなっているのですが、こうした交流をオンラインでも実現することができたことは、受講生の活動の課題解決へと向かう気持ちの強さがあってからこそだと改めて感じました。

今回の講座では、日頃感じているモヤモヤが整理されていく気持ちよさを感じる受講生が多くいたようです。そして整理されたからこそ湧き上がる課題や疑問を、質問として山元さんに積極的に聞きに行く姿勢が印象的でした。
最後にソーシャルインパクトについてお話がありました。ソーシャルインパクトとは、社会的課題を解決するための事業に資源を集中しようということで、その波がきているとのこと。「限られた資源でちゃんと成果が出るもの、出せるものに集中する」という方法で、逆に「成果としてちゃんと定義できないものに関してはアクセスしづらい」というデメリットがあるそうで、次回の講座にもつながるお話でした。
次回は、第3回「活動の意義を伝える評価軸を磨く ~活動を振り返り、改善・変革していく術を磨く~」というテーマで源由理子さんが講師の回となります。今回学んだことの次のステップは、昨今必要性も高まっている評価についてです。


講師プロフィール

山元圭太(やまもと・けいた)
株式会社Seventh Generation Project取締役 / NPO法人日本ファンドレイジング協会理事・認定ファンドレイザー / 島根県雲南市地方創生総合戦略推進アドバイザー
経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして5年、認定NPO法人かものはしプロジェクトでファンドレイジング担当ディレクターとして5年半のキャリアを経て、非営利組織コンサルタントとして独立。「本当に社会を変えようとするチャンジメーカーの『想い』を『カタチ』にするお手伝い」をするために、キャパシティ・ビルディング支援や講演/セミナー、コーディネートを行ってきた。2015年に株式会社PubliCoを創業して代表取締役COOに就任。
2018年にPubliCoを解散し、故郷の滋賀県草津市で合同会社喜代七を創業。現在は、「地域を育む生態系をつくる」をミッションに掲げ、滋賀県で実践すると共に、全国各地で支援を行なっている。専門分野は、ファンドレイジング、ボランティアマネジメント、組織基盤強化、NPO経営戦略立案など。

執筆:アーツアカデミー広報担当 山崎奈玲子(やまざき・なおこ)
運営:特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)

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