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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2023/02/17

アート×テクノロジー×デザインの新たな創造拠点 「シビック・クリエイティブ・ベース東京(CCBT)」、渋谷に誕生!


提供:CCBT

渋谷駅から徒歩7分。公園通りをNHK方面に向かい、坂を登りきる少し手前にある渋谷東武ホテル。その地下2階に、2022年10月、東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京が手掛けるアート×テクノロジー×デザインをテーマにした施設「シビック・クリエイティブ・ベース東京」(以下「CCBT」)が誕生しました。一体どんなところなのか──。取材チームは現地に向かいました。


提供:CCBT

ホテルの外階段を降りていくと、CCBTのサイネージが見えてきました。まるで隠れ家のような入り口です。


提供:CCBT

地下2階のエントランスに到着。ガラス扉の横にはCCBTのスタイリッシュなロゴマークが。


撮影:スタジオアモン石原

迎えてくれたのはアーツカウンシル東京の廣田ふみさん。早速、施設を案内してもらいながらCCBTについて詳しく聞きました。

CCBTは市民に開かれた“デジタル公民館”

──まずは、CCBTがどんな施設なのか教えてください。

廣田ふみさん(以下「廣田」):CCBTは、デジタルテクノロジーの活用を通じて、人々の創造性を社会に発揮する“シビック・クリエイティブ”のための活動拠点となる施設です。

──もう少しわかりやすく言うと……?

廣田:“デジタル公民館”と言ったらイメージが湧きやすいでしょうか。これは、芸術ユニット・明和電機の土佐社長がオープニング記念特別企画の際におっしゃった言葉なんです。

──ぐっと身近に感じます。

廣田:公民館って、地域住民にとって身近な学習や創作・文化活動の拠点(施設)ですよね。CCBT も基本は同じ。アートやテクノロジー、デザインをテーマにした様々なプログラム体験ができる誰にでも開かれた施設なんです。さらにそうした体験を通じて、アーティストやクリエイターだけでなく、子供から大人まで参加するすべての市民(シビック)の創造性(クリエイティブ)を喚起する拠点となることを目指しています。

──なるほど。どんなプログラムがあるんですか?

廣田:現在は、【アート×テックラボ】【CCBT Meetup】【未来提案型キャンプ】【アート・インキュベーション】という4つのコアプログラムを展開していて、これらを軸に多彩なイベントを開催しています。【アート×テックラボ】ではアート&テクノロジーがテーマの主に子供向けのワークショップを、【CCBT Meetup】ではアートやテクノロジー、デザインの多様なトピックを学べるトークイベントやレクチャーを実施しています。【未来提案型キャンプ】はアーティストやエンジニア、研究者、市民がアート&テクノロジーを学び、協働して社会課題に取り組む5日間ほどのワークショップです。【アート・インキュベーション】はCCBTのパートナーとなるアーティストならびに企画を公募する、アーティスト・フェロー(客員芸術家)制度のことで、選出されたフェローの企画展示やフェローによるワークショップなどを行っています。フェローの方は、CCBT内で制作を行っていることもあるので、タイミングが合えば見ることができますよ。

──ここでしか味わえないような内容ですね。

廣田:CCBTでは、伊藤隆之さん(山口情報芸術センター[YCAM]R&Dディレクター)、齋藤精一さん(パノラマティクス主宰)、杉浦太一さん(CINRA, Inc. CEO / Inspire High, Inc. CEO)、田坂博子さん(東京都写真美術館学芸員)という4名のコラボレーションメンバーの協力の下、運営にあたっています。デジタルテクノロジーが目覚ましい勢いで進化する中で、様々な分野で活躍される方々の視点を取り入れて、運営方法やCCBTの広域的な役割について検討しているところです。

子供達大満足!【アート×テックラボ】ワークショップ


提供:CCBT

──これまでに開催したワークショップで印象的だったのは?

廣田:オープニング記念特別企画「明和電機・渋谷工場 in CCBT」の一環で、世界最小サイズのベースギター「ゴムベース」を作る電子工作ワークショップを実施しました。小学3年生以上が対象で参加者の多くは子供達でした。


提供:CCBT

──反応は?

廣田:子供達が講師の明和電機・土佐社長の話を食い入るように聞いて、明和電機によるハンダ付けの極意「いち・に・さん・ぽん」を実践できていたのが印象的でした。将来、「青い制服のおじさんにハンダ付けを学んだなあ、あれは明和電機さんだったんだ!」と感激するときがくるといいですよね。アンケートも「とても満足した」「次回も参加したい」という声が大半で嬉しかったですね。次世代を担う子供達にこそ、「自分でつくる」という体験を通してテクノロジーを楽しく学び、創造力を高めて欲しいと考えています。

──このワークショップはどこで行われたんですか?

廣田:<オープンスペース>です。CCBTは、<スタジオA><スタジオB><テックラボ><オープンスペース>の4スペースで構成されていて、それぞれ可動壁で仕切っているので利用目的に合わせてフレキシブルに使えるようになっています。

<スタジオA>


壁・床が真っ白なホワイトキューブ空間。「明和電機・渋谷工場 in CCBT」期間中は、明和電機のプロダクトを展示。
提供:CCBT

<スタジオB>


壁・床・天井がすべて真っ黒なブラックアウトスペース。「明和電機さんにはここでミニライブもしていただきました」と廣田さん。
提供:CCBT

<テックラボ>


ファブリケーション機器が揃いワークショップやアーティストの創作活動スペースにもなる「テックラボ」。「明和電機・渋谷工場 in CCBT」期間中はおかしなオモチャ工場と化したそう。
提供:CCBT

<オープンスペース>


明和電機のワークショップが行われた「オープンスペース」は、トークイベントやレクチャーにも使用されています。
提供:CCBT

これまで開催した主なイベント

【CCBT Meetup】

妄想リバースエンジニアリングvol.1 国民的人気歌番組のあの演出、どうやったんだろう?

テクノロジーを活用した演出や作品を、エンジニアリング視点で読み解くトークイベントを開催。

【未来提案型キャンプ】

Future Ideations Camp vol.1: Import *

多様な領域で応用される「コンピューターによるデザイン(Computational Art and Design)」の基本概念を学び、未来の子育てや遊び、街のシンボルやプロダクトの開発、そしてプログラミング教育をテーマとする5日間の集中キャンプを開催。

【アート・インキュベーション】

野老朝雄+平本知樹+井口皓太「FORMING SPHERES」プロトタイプ公開

CCBTアーティスト・フェローとして活動中の野老(ところ)朝雄+平本知樹+井口皓太による新作を恵比寿映像祭2023(東京都写真美術館)にて発表。本作の発表にあわせ作品の制作プロセスなどを紹介する展示会を開催。

東京からイノベーションを生み出す原動力に


撮影:スタジオアモン石原

──今後の展開について教えてください。

廣田:アートやテクノロジーの「現在」を映したCCBTならではの展示やレクチャーなども企画してきたいと思っています。例えば、「Web3.0ってよくわからない」という声をもとにした企画で、【CCBT Meetup】の中でハンズオン形式(体験型)のNFTアート ※1 の創作ができたらと考えています。また、様々な鑑賞体験のある芸術文化ならではのプログラムとして、情報アクセシビリティ ※2 の新しいシステムをテーマにした【未来提案型キャンプ】も大学と他施設との連携事業として構想中です。
CCBTは、東京都の「『未来の東京』戦略」の一つ「文化・エンターテイメント都市戦略」、そして「東京文化戦略2030」を推進する役割も担っていて、次のような4つのミッションを掲げています。これらを踏まえ、企画・構想中のイベントを含めて各コアプログラムイベントのさらなる拡充を図るとともに、アート×テクノロジー×デザインの創造拠点として東京からイノベーションを生み出す原動力となっていければと思います。

※1 NFT(代替不可能なトークン)を活用したデジタルアート
※2 障害の有無などにかかわらず、誰でも情報の取得・利用・発信するためのバリアフリー化

CCBTの4つのミッション

  • 発見:アート&テクノロジーに出会い、創造的に生きるための学びの場をつくります。
  • 共創:多様な人々が協働して未来の東京について考え、これからの社会を共にデザインします。
  • 開発:アーティストやクリエイターをパートナーに迎え、新たなアート表現を創造、発信します。
  • 連携:街や人とつながり、国内外でのネットワークを形成し、デジタルクリエイティブの拠点をつくり出します。

──最後に、これからおすすめのイベントはありますか?

廣田:「連携」をテーマに「ハロー!ラボラトリーズ!Vol.01:ラボで駆動する、世界の文化拠点」を開催します。世界5都市の文化拠点を事例に、各都市の芸術文化活動を紹介するトークイベントです。また、CCBTアーティスト・フェローのTomo Kihara+Playfoolによる「Deviation Game:AIと競争&共創するワークショップ」もおすすめで、AIが世界を認識する方法を遊びながら学べる、小学4年生以上を対象にしたプログラムです。どちらも無料でご参加いただけますのでぜひお越しください。
その他にも色んな発見と創造を楽しめるCCBTならではのプログラムを企画していく予定なので期待していてください。


今後のイベント

CCBT Meetup
「ハロー!ラボラトリーズ!Vol.01:ラボで駆動する、世界の文化拠点」

CCBTオープニング記念特別企画第2弾として、世界5都市の文化拠点を事例に、各都市の芸術文化活動を紹介するトークイベント。第1回のテーマは「ラボで駆動する、世界の文化拠点」です。

  • 日時:2023年2月25日(土)15:30~19:00(開場15:00)
  • 登壇者:Clare Reddington(Watershed)、Lucas Evers(Waag Futurelab)、LIU Yu-Ching(Taiwan Contemporary Culture Lab (C-LAB) )、菅沼 聖(山口情報芸術センター[YCAM])、廣田 ふみ(シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT])
  • 参加費:無料(事前申込制・先着順、定員90名)

※日英同時通訳有
※当日は CCBT YouTubeチャンネルからも配信予定
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/meetup_hellolab01

アート×テックラボ
「Deviation Game:AIと競争&共創するワークショップ」

2023年3月にCCBTにて行う展示「Deviation Game」に合わせて開催するワークショップ。AIと競い合う実験的なお絵描きゲームを通して、AIが世界を認識する方法を遊びながら学びます。

  • 日時:2023年3月4日(土)・5日(日)・10日(金)・12日(日)・17日(金)・19日(日)
  • 講師:Tomo Kihara+Playfool(CCBTアーティスト・フェロー)
  • 対象:小学4年生以上
  • 定員:各回10名
  • 参加費:無料

https://ccbt.rekibun.or.jp

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