アーツカウンシル東京が主催・共催するイベント情報

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想起の力で未来を:メタル・サイレンス2019

ジャンル:
  • 美術・映像 ,
  • アートプロジェクト

海外アーティスト招聘プログラム

今回招聘する海外アーティストは、 クリスティーナ・ルカスとフェルナンド・サンチェス・カスティーリョのスペイン出身の作家2名です。クリスティーナ・ルカスは、スペイン・ゲルニカの悲劇に発想源を置き空爆の開始から現在に至る世界の市民の犠牲者をたどる空爆地図を表す全6時間を超える3面映像インスタレーションの大作≪Unending Lightning(終わりえぬ閃光)≫を展示。この会場の持つ歴史とメッセージ性が重なり合う作品展示となります。フェルナンド・サンチェス・カスティーリョは、上野公園の多種多様な豊かな樹木にちなんだ、“折れそうになっても生存し続ける”ブロンズ製の木の新作≪Tutor(テューター)≫を展示します。
この両作品を合わせた今回の展示タイトル「メタル・サイレンス2019」は、人類史を声なき者の視線で再構成するクリスティーナ・ルカスの作品≪Unending Lightning≫の中で触れられる“死を導く鋼鉄の兵器”、そして、植物という言葉を持たない樹木≪Tutor≫の沈黙を表現できる芸術の素材としてのブロンズ、という金属の二面性も表しています。

招聘アーティストプロフィール

クリスティーナ・ルカス

1973年スペイン、ハエン生まれ。マドリード・コンプルテンセ大学、カリフォルニア大学アーバイン校で学ぶ。ライクスアカデミーとニューヨークでのレジデンス経験を経て、現在はマドリードで今も制作活動を行なっている。写真、映像、インスタレーション、ドローイング、パフォーマンスなど多領域に渡るメディアを用いて、一般的な通説への異なる読解をもたらす可能性を探り、現在へのより良い理解を提供します。
自らアーティストとして3人の司祭と会話しつつ、芸術と宗教との関わりを取り上げる作品、またラッシュアワーのタイムズスクエアの真ん中で、説教師が通行人に無視されても芸術のもつ力とその必要性を語り続ける映像などには、軽快な社会風刺も織り交ぜられています。ミケランジェロのモーゼ像の複製をハンマーで叩き壊しながら、創作の秘密を明かすように迫るパフォーマンス、またドラクロワの≪民衆を率いる自由の女神≫の絵の女神を、半裸の若い女性が演じる映像は、最後は男性に殴打される悲劇で終わり、歴史や美術史におけるジェンダー差別が提起されています。2014年に東京都現代美術館で開催された「驚くべきリアル」展に出品された≪君も歩ける≫(2006)は、村の飼い犬が二本足で歩いて町に出かけるコミカルな映像ですが、無理して男性のように振る舞う女性や、男性のあり方自体への皮肉も込められています。痛快な批評も交えたルカスの作品は、各地の展覧会に招かれ、賞賛を得ています。
ルカスが国際的に大きな評価を得たのは、紀元前5世紀の世界地図が現代まで変化する2次元のアニメーション≪Pantone -500 +2007≫で、パリのポンピドゥー・センターの収蔵となりました。上野文化の杜の博物館動物園駅での出品作≪Unending Lightning(終わりえぬ閃光)≫は、同様に地図をもとにしつつも、政治、社会構造、国家権力にまで言及する壮大な人類史へと発展しています。

展示作品
作品名≪Unending Lightning(終わりえぬ閃光)≫
ビッグ・データを応用し、各地で多数の専門家の協力を得て、5年をかけて調査制作した作品を展示します。昨年イタリア・パレルモで開催された「Manifesta 12」は、英国のガーディアン紙でその年の最高峰の一つと称賛されましたが、その展示作品の中でも本映像インスタレーションはとりわけ高く評価されました。スペイン市民戦争の真っ只中、フランコ将軍に加担したドイツ軍によるゲルニカの爆撃で多くの市民が犠牲となった史実はピカソの作品でも有名です。ルカスは、空爆が最初に行われたとされる1911年から世界中の民間人に対する全ての犠牲を現在に至るまで辿る3面スクリーンの6時間にわたる本作をライフワークにしています。
左面はどこの爆撃で何名の市民が犠牲になったか、中央はその地域の地図がクローズアップされ、爆撃の規模がドットで示され、右面はその出来事にまつわる写真で構成されています。日本での展示に際して、東京空襲、広島と長崎の原爆投下を含む第二次世界大戦中に日本各地で犠牲になった市民の数を再調査し、江東区にある東京大空襲・戦災資料センターの政治経済研究所戦争災害研究室主任研究員山辺昌彦氏の協力のもと、より正確な日本のデータが作品に反映されます。


フェルナンド・サンチェス・カスティーリョ

1970年、スペイン、マドリード生まれ、マドリード在住。マドリード・コンプルテンセ大学で美術、マドリード自治大学で哲学、パリ国立高等美術学校でも学ぶ。ライクスアカデミーでのレジデンスを経て、現在は、ジュネーヴにある国連の研究チーム(PIMPA、記憶、政治、芸術実践)メンバー。フランコ政権下で幼少時を過ごしたカスティーリョは、社会や歴史の出来事に鋭い関心を抱き、権力と表象に関わる作因を分析し、歴史的な言説を多角的に批評し、彫刻、絵画、映像で表現します。
スーツ姿の紳士が白馬にまたがり、大学の校舎を優雅に闊歩する≪馬に捧げる建築≫(2002)は東京都現代美術館の「驚くべきリアル」展でポスターにもなった作品で、学生のデモを警官隊の馬で鎮圧しやすいように、フランコ政権時に建てられた母校の建築を逆検証しています。通常はデモ隊を蹴散らす放水車が、水を吹き上げながら見事な踊りを披露する≪ペガサス・ダンス≫(2007)も同美術館のグループ展に出品されたことがあります。危険物を処理する精密ロボットが、抽象画を描き、マルセル・デュシャンのレディ・メイドを見事に制作する映像も同じように、深刻な社会状況においてのみ必要とされる機械や装置が、遊び心のある芸術的な活動を繰り広げ、価値観の転換と芸術の領域の拡張をもたらします。また革命や抑圧への抵抗をテーマとして、中国の天安門広場で、軍隊の前に素手で立った青年の像を3Dプリンターで大小制作し、≪マイナー・ヒーロー≫のシリーズを手がけています。モニュメント、記録、公共の場、伝統は身近な過去を明示する道具となります。芸術と権力の関係を精査することで、歴史的な集団の記憶を浮上させ、ある種のシンボルがいまだに社会を支配する力の構造を検証します。

展示作品
作品名≪Tutor(テューター)≫
上野公園は多種多様な樹木の宝庫です。こうした上野の森の豊かな自然から発想した新作の≪Tutor(テューター)≫(2019)は、細いブロンズ製の木の枝が、ともすれば折れそうにジグザグに造形された彫刻です。植樹された木々にも、すくすくと大木に育つものから、病気や害虫などで枯れてしまうものがあります。例えば、上野公園の歴史では、1879年の米国のグラント将軍夫妻によるロウソン檜と泰山木の植樹が有名で、動物園入口付近のグラント記念碑のそばに現在も2本が植わっています。しかし将軍が植えたロウソン檜は衰えており、現在、樹勢の衰えを治療する処置などが施されています。
カスティーリョの木の新作は、人間より寿命が長い樹木も同様に、社会や環境の変化で生と死が左右されること、人間のようにさまざまな生き方があること、そして健康とは、普通とは何かを問いかけ、寛容でインクルーシヴな社会を示唆する作品です。

料金

入場無料

  • 整理券は開催日の朝9時よりお配りいたします。配布数に限りがございますので予めご了承ください。
  • 入場を制限させていただく場合があります。
  • 内容が変更となる可能性があります。
  • 京成電鉄施設のため、鉄道業務に関する緊急の事態には作品が鑑賞いただけない場合がございます。
  • 車椅子の方は旧博物館動物園駅入り口内の階段までご覧いただけます。

お問い合わせ

上野文化の杜新構想実行委員会事務局
TEL:03-5834-2396

開催場所

旧博物館動物園駅 駅舎(東京都台東区上野公園13-23)

チラシ

クレジット

主催
上野文化の杜新構想実行委員会、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京