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ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2017/03/07

大人気「外国人向け伝統文化体験プログラム」レポート 〜本場・銀座の歌舞伎座で1日限定の歌舞伎体験〜

2017年2月12日(日)、眩しい冬晴れのお昼時に、銀座・歌舞伎座にある歌舞伎座ギャラリーにたくさんの人々が集まりました。

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彼らは、外国人向け伝統文化体験プログラムの参加者。この日は、1日限定の歌舞伎体験が行われました。

今回は当日の盛り上がりの様子をお届けします。

歌舞伎のイロハを学ぼう

満員御礼となった当イベント。参加者たちは、まず「歌舞伎にタッチ!」という展示コーナーへ。

ここは歌舞伎座ギャラリーの常設コーナーとして、普段から多くの方が訪れており、舞台で実際に使われる装置や音を出すための小道具などに触れることができます。

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その後、体験会場である木挽町ホールへ入り、まずは歌舞伎のイロハを学ぶ動画を視聴しました。

歌舞伎には400年以上の歴史を経て培われた、様々な知恵と技術が詰まっています。当イベントでは、その中でも隈取と女方について、簡単な解説がありました。

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隈取は、もともと顔の筋肉や血管を誇張したもの。3つの色を使い分けることで、キャラクターが観客にも伝わりやすくしているのです。赤は正義や若さ、力を表し、ヒーローや主役に施されることが多い色。青は冷酷さを表し、悪者に用いられることが多く、茶色は人間以外の妖怪や動物などに使われます。

また、歌舞伎のすべての演目で、俳優さんに隈取が施されているわけではありません。隈取が見たい場合は事前に隈取をした俳優さんが出演する演目かどうか、調べて行くのが良いとのことでした。

次に、女方についての解説。現代でもほとんどの歌舞伎は男性のみで行われており、女性役も男性が演じています。

体つきも声も男女で違うため、ただ女性の仕草を真似するだけでは真の女方とは言えません。骨格など、生まれ持った肉体を用いつつ、見た目だけでは分からない女性らしさを追求することで、女方が極められていくのだといいます。

歌舞伎のキメの場面を魅せる「見得」を体験

次に現役の歌舞伎俳優である松本錦弥さんと「ツケ打ち」の芝田正利さんが登場。錦弥さんが「見得」を、芝田さんが「ツケ」を指南してくれます。

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松本錦弥さん(左)、芝田正利さん(右)

ツケとは、俳優の動きに合わせて効果音を打つ役どころ。錦弥さんの見得に合わせて息のあったツケに、参加者も思わず「おおーっ」と声を上げていました。

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錦弥さんの動きに合わせて、参加者たちも立ち上がって実際に見得にチャレンジしてみます。

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初めは恥ずかしがってクスクス笑う声が聞こえてきましたが、芝田さんのツケが重なると途端に背筋が伸び、一気に本格的に。

徐々に、ツケに合わせる前に錦弥さんの動きに合わせて自分から動く参加者も。最後は全員、しっかりと見得ができました。

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歌舞伎の衣裳を着てみよう

最後は、歌舞伎の衣裳を実際に着てみるコーナー。今回は一人だけ、舞台上で衣裳を着ることができました。選ばれたのは中国からの留学生・シーさん。

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参加者の前で説明しながら着付けていくこと15分ほど。本番では約3分で着付け、俳優さんは舞台へと出ていくというのですから、まさに職人技です。

踊りや舞台上での振る舞いで、汗や着崩れなども多い歌舞伎の衣裳。俳優の個性やキャラクターを見極め、着付けを行うそう。

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今回の体験プログラムで使用した衣裳は、藤娘という演目で使われる娘役のもの。朱色と鶸(ひわ)色で役の二面性を表しています。ステージ上で記念撮影もでき、シーさんも嬉しそうでした。

初の歌舞伎体験、どうでしたか?

イベント終了後、参加者の方々に感想を聞いてみました。

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衣裳体験に選ばれたラッキーなシーさんは、普段中国人留学生向けのNPOのメンバーとして、日本の伝統文化に触れる活動をしているそうです。

「衣裳は思っていたよりもずっしりと重かったです。でも着付けで紐をきつく結ばれると、苦しかったけど背中がシャキッとする感じがしました」とのこと。

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こちらはメキシコから日本へ訪れている女性。「見得の所作は、最初はちょっと恥ずかしかったです。でも実際にやってみたら普段の動作とはまったく違っておもしろかった。歌舞伎は観たことがないけれど、新しく学ぶことがあって楽しめました」とのことでした。

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最後にインドネシアから参加した女性にインタビュー。日本で留学しているという彼女も、歌舞伎の公演はまだ観たことがないといいます。

「見得の体験は、最初は戸惑ったけれど、すごく興味深かったです。近々本物の歌舞伎も観たいと思います」とのこと。

イベント後も、衣裳や所作、ツケについて直接錦弥さんや芝田さんにお話を伺っている参加者の姿が多く見られました。

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歌舞伎の現場で活躍されている方々のお話は、とても貴重なもの。この日をきっかけに、歌舞伎への興味を深めることができた方も多かったのではないかと思います。

3月末までは、演芸日本舞踊など、気軽に日本の伝統文化に触れられるイベントが用意されています。敷居が高いと思われているけれど、触れてみるとおもしろい伝統文化の世界。この機会に、新しい世界を覗いてみてはいかがでしょうか。


イベント詳細

  • 開催日:2017年2月12日(日)13:00〜14:30、15:30〜17:00
  • 開催場所:歌舞伎座ギャラリー
  • 主催:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
  • 協力:松竹株式会社
  • ウェブサイト:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/17050/

写真:鈴木穣蔵
取材・文:立花実咲

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