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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2013/09/12

佐藤POレポート4 事務局のジム

先週末の3日間をかけて、Tokyo Art Research Lab「集中セミナー:運営・記録・評価のサイクルをつくる」を実施しました。現場の最前線に立つ4名のゲストを招いた4つのトークセッションとワークショップ、参加者のみなさんと3日間のキーワードを振り返るグループディスカッション。計13時間半の長丁場のプログラムでは、これまでのTARLの成果も存分に活用し、実践に則した(テキストには載りにくい!)具体的な議論が繰り広げられました。

「継続」を前提としたプロジェクト運営を実現するためにやるべき「事務局」の仕事とは何か。多様なセッションに通底するテーマでしたが、それは東京アートポイント計画が向き合う現場で必要とされていることでもあります(詳しくは坂本さんのレポートを)。今回の投稿では、3日間の様子を、ごく簡単に振り返ってみたいと思います。

東山アーティスツ・プレイスメント・サービス(略してHAPS)ディレクターの芦立さやかさん(セッション1)と、横浜トリエンナーレ事務局長の帆足亜紀さん(セッション3)のお話は、数千万と数億という、携わる事業の予算規模の違いはあったものの、お2人の仕事ぶり、それに向き合う態度こそ、あるべき「事務局」の姿を感じさせるものでした。

多様な関係者の声へ耳を傾け、行動として応答すること。自らの活動を他者と比較し、俯瞰し、実践の立ち位置を確認すること。なにより、アート、アーティストの活動への深い理解と、想いを共にすること。「アートマネジメント」という言葉を、あらためて「アート」と「マネジメント」が分離したものではなく、一つの単語として語ることの意味も議論となりました。

レコードマネジメント・コンサルタントの齋藤柳子さん(セッション2)は、冒頭、今回のレクチャーの対象者を「運営スタッフ」と確認します。アーティスト、観客、地域社会、資金提供先、業務パートナーも含めた多様な関係者の接点となり、マネジメントを担う。その役割の人が「やらなければならないこと」が、記録や文書管理の方法であるレコードマネジメントである、といいます。

ご本人の言葉を借りれば、「詳細に」「厳しく」手を動かしながら学んだレコードマネジメントの手法からは、事務局の仕事は単純な事務作業だけではなく、その作業がもたらす意義を理解し、日常的に運用できる作業の設計や管理まで至ることを、身をもって感じさせられました。

現代美術家の北澤潤さん(セッション4)は、自らを代表とした「事務所」というチームで現場をつくりあげています。現場を動かし、その様子を記録し、編集し、メディアを制作する。それによって「山場のない」日々の活動を可視化し、社会に流通させる。「セルフビルド」で成立しているプロジェクトには既に事務局の仕事が内包されているようにも見えます。それでも北澤さんは「マネジメント」の役割の人は必要だと言います。

北澤さんのアーティストとしての仕事は、どんな「アート」なのか。「プロジェクト」ならば「終わり」があるはず。でも、実際は「ないもの」として動いている。北澤さんが必要だという「マネジメント」と同様に、ここで言われる「プロジェクト」とは何であるか。現在進行形(次世代?)の「アートプロジェクト」に触れることから、これまでの言葉の文脈を離れて、今を考える深い議論となりました。

現在のアートプロジェクトが目指すもの、そして、その事務局の仕事は、一定期間の企画を駆け抜ける短距離走なのではなく、多様な、もしくは反復した企画の実施と終了を重ねながら走り続ける長距離走なのだということ。3日間の(ほぼ合宿に近い)プログラムに参加することで体感できたように思います。そして、この経験を個々の実践の「戦略」へ、いかに落とし込んでいくのか。参加者に共通する宿題となったのではないでしょうか。

今回の投稿では、具体的な内容まで触れられませんでしたが、3日間のレポートはTARLのウェブサイトへ掲載予定です。また、集中セミナーは第Ⅱ期を12月中旬に実施します。事務局の仕事、その基礎体力の確認に、ぜひご活用ください!

東京アートポイント計画プログラムオフィサー 佐藤李青

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