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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

“もりりゅう”のアー(ッ)ト驚く、ためになる通信

アーツカウンシル東京 企画室広報調整担当課長、森隆一郎がアーツカウンシル東京の事業やアートにまつわる様々な現場を訪ね、「アー(ッ)ト」驚いたポイントやこれはためになるな、と感じたことなどを記してゆきます。あぁ、世代がわかりますよね。アーっと驚くタメゴロウ…

2017/09/29

「秋の夜長に夜のことを考える」~ナイトタイムエコノミーって何?

2017_blog_moriryu_nighttimeeconomy1Photo:Zürich by night(club) – 18  作者:abstrkt.ch CC-BY2.0

明日、六本木で私達の主催する「六本木アートナイト」が行われます。六本木アートナイトのようなイベントの意味、というか、こういう深夜の文化活動について、今日は考えたいと思います。

9月25日付けの日経新聞朝刊では、”訪日需要眠る「夜遊び経済」”というタイトルの記事が出ました。

「夜遊び経済」なんていうと、ちょっと、チャラい感じがしてしまいますが、これ、世界の都市が注目する「ナイトタイムエコノミー」のことなんですね。

日経新聞では、今、夜の遊びというと、飲食やカラオケ、クラブなどが主体で、例えば近年増え続けている訪日外国人観光客にはバリエーションも少なく、敷居もやや高い、と、ありました。

また、昨年の風営法の改正で、これまで法的にグレーゾーンだった深夜のダンス営業などの分野に大手企業(例えば、大手のホテルなど)が参入できるようになっていくだろう、なんていう指摘がなされていました。

ところで、深夜の遊びといっても、流石に朝まではきついから、やっぱり深夜2時とか3時位で上がれると、無理なくあそべるかな、と思うんですけれど、その時の東京の弱点が交通機関ですよね。

例えば、NYでは地下鉄は24時間営業で、深夜でも1時間に1本は動いていて、それで帰れるんですよね。でも、昔からそうだったわけではなくて、ジュリアーニ市長の時代に治安回復をはかって、その成果で地下鉄が安全になり、今のNYのナイトカルチャーの基礎を固めてるわけです。

一方、ロンドンでは、「ナイトチューブ」という名称で、主要地下鉄の週末24時間化をはかり、約1年で、1.71億ポンド(約240億円)の経済効果を生んだと言われています。さらに、今年の7月には、サディク・カーン市長がロンドンを世界一のナイトカルチャーの都市にするんだ、と言って「24-hour London Vision」(英語)を発表しました。

このビジョンが、とても興味深くて、まずカーン市長による前文に、都市には、よい家とよい仕事と安全な通りと便利な交通機関が必要だ、とした上で、さらに成功する都市は創造的な都市なんだ、としています。都市の創造力(クリエイティビティ)は、私達の魂の糧になり、精神を刺激してくれるんだと。そして、その創造的な都市の繁栄は夜作られるんだ。と書いてありました。

ちなみに、
ロンドン市のナイトタイムエコノミー市場は毎年263億ポンド(約4兆円)。日本のナイトタイムエコノミーの市場規模は不明なんですが、訪日外国人客2400万人が一人1万円使ったら、インバウンドの消費だけで2400億円に登るわけですね。

まぁ、お金のことも大事なんですけれど、
私としては、このビジョンで、ロンドンの最大の魅力は「文化」なんだ、と言い切っている点に「そう!」と、膝を打ちたいわけです。これくらい私も言い切りたい。

さて、私達のまち、東京、これからオリンピックもやってくるわけですが、ニューヨークやロンドンが苦心した夜の治安の部分は、もともとレベルが高いわけです。ならば、もっと大胆なナイトカルチャーを作れるはずですね。

これからは、芸術や文化のソフトが街の経済成長に貢献していく時代。例えば、オオバコと言われるような1000人規模のライブハウスが、夜7時開演のメジャーな公演のあとに、0時開演の部を設定して、深夜帯には若手が出演する、ライブのあとは朝までDJパーティーなんてことも考えられるんですね。(これまでももちろん、こういうイベントありましたけれど、何より違うのは、これまで法的にグレーゾーンだったのが、会場の性格により違いはありますが、昨年の風営法改正で基本的にOKになりました)

バンドをやっている方やDJの方、ダンサー、エンターテイメントの仕事がどんどん増えていく。あるいは、会場の警備にあたる人、ドリンクやケータリングの人、さらに、普通は夜やっていないような職種にも夜間の仕事が生まれてくるかもしれません。夜シフトがおわってから、買い物や食事が普通にできること、なども、多様な生き方が共存する都会では、もっと考えられてもいい課題だと思いますし、先程のロンドンのビジョンには、まさにそういうことまで書かれているんですね。

そして、今、ロンドンだけではなくて、パリもベルリンもニューヨークも、そしてここ東京も、このナイトカルチャーを都市の成長の鍵だと捉えているわけです。引き続き、「文化がリードする夜の経済」ナイトカルチャーやナイトタイムエコノミーのテーマを考えていきたいなと思っています。

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