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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2018/02/20

映像の「いま」が見えてくる恵比寿映像祭が開幕

アートと映像の国際フェスティバル、恵比寿映像祭。東京都写真美術館を中心とした恵比寿の街を舞台に、展示、上映、ライブ・パフォーマンス、トーク・セッションなどが行われます。

2009年から毎年開催され、これまでに参加した作家・ゲストは840名以上。10回目を迎える今回は94組が参加し、15日間の祭りを彩ります。

開幕前日の2018年2月8日(木)、取材チームはひと足先に会場を巡るプレスツアーに参加してきました。多くのメディア関係者でにぎわったその様子をお伝えします!

今回の総合テーマは「インヴィジブル」です。
映像は、現実世界を映し出す一方で、時に可視化できない現実までも浮かび上がらせるメディア。この不可視性=「インヴィジブル(見えないもの)」を通して、映像の過去と未来をさぐろうという試みなのです。

プレスツアーは、メイン会場である東京都写真美術館からスタート。
1階のホールで上映作品のダイジェストを鑑賞します。

心の健康や病気に関わるカナダの映画祭「ランデヴー・ウィズ・マッドネス」から選ばれた作品や、先天性全盲の加藤秀幸が監督した短編映画とそのプロセスを追ったドキュメンタリー《ナイトクルージング》、ミャンマー/台湾の映画監督であるミディ・ジーがミャンマーの労働者を描いた長編と短編など、国内外のさまざまな映像作品が紹介されました。

開催期間中は、このホールで毎日1〜3本が上映されます。

上映作品に続いては、展示作品。東京都写真美術館の3フロアにわたって、国内外の作家による映像やインスタレーション作品がずらりと並んでいます。




インターネットアートで注目を集めてきたラファエル・ローゼンダール(オランダ)の「Into Time」シリーズ。見る角度によって絵柄が変化する「レンチキュラー」を使った作品です。


この日はローゼンダールさんも来日。自身の作品についてお話ししてくれました。


ポール・シャリッツによる16ミリフィルムの4面インスタレーション《シャッター・インターフェイス》。本展が日本初公開です。


ガブリエル・エレーラ・トレス《適切な運動による神への近寄り方》


mamoru《あり得た(る)かもしれないその歴史を聴き取ろうとし続けるある種の長い旅路、特に日本人やオランダ人、その他もろもろに関して:第7章 Firando Tayouan Batavia / ヒラド タイハン ジャガタラ》


「コティングリー妖精写真」。このシリーズは1917〜1920年に英国のふたりの少女が妖精の姿をとらえた写真として有名になりましたが、のちに偽造であることがわかりました。それでもなお、見る人を魅了し続けています。


2階の展示室では、仕切りのない空間に清野賀子、ジェイ・チュン&キュウ・タケキ・マエダ、高嶋晋一+中川周らの作品が点在。見わたすだけで映像表現の多様性を感じます。



青柳菜摘《孵化日記 2014-2015》


横溝静《PRAYER》



東京都内の電力消費の多い街を写したモノクロ映像に原爆のイメージを重ね、風景が消滅していく様子を表現したスッティラット・スパパリンヤの《東京の10ヶ所》。1945年の原爆投下や、原発事故を引き起こした東日本大震災から着想を得た作品です。


ISISとの遭遇のトラウマを、耳の聞こえない少年が身振り手振りで打ち明けるエルカン・オズケンの《ワンダーランド》。


ナターシャ・ニジック&䑓丸謙《恐山》。盲目のイタコの最後のひとりとも言われている「タケさん」が半生を語ります。

続いて一行は、東京都写真美術館から歩いて5分ほどのところにある日仏会館へ移動しました。こちらの会場では、姉弟ユニットSHIMURAbrosの作品を個展形式で紹介。

この日は弟のケンタロウさんが来場し、作品を解説してくれました。


SHIMURAbros《フォーカス・チャート9》


SHIMURAbros《Towards Film Beyond Film》


『アンダルシアの犬』などの映画からシーンを抜き出し、そのシルエットの動きを3Dプリントで立体的に出力したSHIMURAbrosの《映画なしの映画》シリーズ。

さらに、恵比寿ガーデンプレイスのセンター広場に移動すると、クリエイティブチームinvisible designs lab.の大型インスタレーションが展示されていました。


《予言》と名付けられたこの作品は、中央の赤いピアノを弾くと、まわりにある木琴のようなものがランダムに音を奏でたり、ランプがついたりする「テレパシー現象装置」。
誰でも自由に体験することができ、見えないなにかと対話をしているような気分を味わえます。

この後スタート地点の東京都写真美術館に戻り、恵比寿映像祭をひと足先に体験するプレスツアーは終了。

上映やライブなどの定員制のプログラム以外は鑑賞無料というのも、この祭典の大きな魅力です。

スマートフォンの普及でますます身近な存在になった映像は、まだまだたくさんの可能性を秘めています。恵比寿映像祭でそれを体感したら、いつもの風景が少し違って見えるかもしれません。


第10回恵比寿映像祭

  • 日程:2018年2月9日(金)〜2月25日(日)10:00〜20:00(最終日は18:00まで)
    ※2月13日(火)・19日(月)は休館
  • 会場:東京都写真美術館、日仏会館、ザ・ガーデンルーム、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所 ほか
  • 主催:東京都、東京都写真美術館・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、日本経済新聞社
  • ・イベントページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/22935/

撮影:鈴木穣蔵
取材・文:平林理奈

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