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現場に行ってみた!! 宮本篇

東京文化発信プロジェクトが行う様々なプログラムにライターの宮本が出向き、現場からお伝えします。アート、音楽、舞台、地域プロジェクト etc… 文化は会議室ではなく、現場で生まれている!

2014/11/05

【東京発・伝統WA感動】「日本の笑い—古典と現代」 の現場に行ってみた!

10月7日(火)東京・国立能楽堂で開催された「日本の笑い―古典と現代」に行ってきました!
この公演は、伝統芸能・文化の魅力を国内外へ発信する「東京発・伝統WA感動」のプログラム。

狂言師・野村万蔵さんとお笑い芸人・南原清隆さんがタッグを組み、新たに生み出した新ジャンル「現代狂言」は今年で9年目を迎え、全国100ヵ所以上で公演、述べ50,000人を動員している人気シリーズ。本公演は「日本の笑い―古典と現代」と題し、野村さんと南原さんを中心に、「現代狂言」のメンバーである佐藤弘道さん、ドロンズ・石本さん、エネルギーのお2人、おはなし部分には、司会の大野泰広さんが登場し、古典の笑いと現代の笑いの違いや相似性をお話と実演で探っていくというものです。

公演は、休憩を挟んだ2部構成。前半は「おはなし」と「狂言コント」、後半は「古典狂言」と「おはなし」で進行していきます。本公演の特徴は、実演の前後に「おはなし」があること。「おはなし」で狂言の“いろは”を学び、実演でその学びを体感します。「おはなし」は、野村さん、南原さん、司会の大野さんの3人で展開されていきます。

【 おはなし① 】
冒頭のおはなしでは、「現代狂言」を始めるに至った経緯が2人の口から語られました。

南原:「コントを作ることに行き詰っていた時、テレビの企画で狂言に出合い、
学んでいくうちに自分が悩んでいたことが何だったのか知るきっかけになった。」

最初こそ“とんでもないことを企画したな”とあまり乗り気ではなかった野村さんも、南原さんの狂言に対するやる気と真面目さに心打たれ、2回目以降から真剣に「現代狂言」に関わることになったそうです。制約の中で笑いの奥深さを追求する「狂言」と、アドリブで変化する面白さを追求する「コント」。お互いの良い所を取り入れ、尊敬し合いながら、新たなものを作り上げる。現代的な笑いの手法を取り入れることで、敷居が高く感じてしまいがちな伝統芸能も身近なものに感じられます。実際、この公演で初めて狂言を観るという方が会場の半数近くでした。嬉しい歩み寄りです。

【 狂言コント 】
「現代狂言」から派生して生まれた新たな試みが、エネルギーのお2人が展開する「狂言コント」。

“遊び相手を探す少年と狂言師”が偶然出会い、少年が様々な遊びを狂言師に提案するものの、全てが狂言らしい表現に変換され、そこにたくさんの笑いが生れるというコント。随所に狂言独特の所作や“滑稽”さが取り込まれていて、狂言知識を高めるにはぴったりの演目でした。


「ジャンケン」では、狂言師は所作が遅いため全て後出し。「だるまさんが転んだ」では、やたらと舞いを披露する狂言師など。

【 おはなし② 】

再び、野村さん、南原さん、司会の大野さんが舞台に登場。「おはなし」も先ほどより深いものとなり、この回では狂言における様式美についてのお話がでました。会場である国立能楽堂は照明も派手なセットも一切ないとてもシンプルな舞台。だからこそ身体的表現が浮き彫りになります。美意識があれば、能舞台は受け入れてくれると野村さんは言います。
ここで急遽、来年「現代狂言 IX」2月公演で披露する予定の演目「棒しばり」の初稽古を舞台上ですることに!完全にシークレットだったため驚きを隠せない様子だった南原さんですが、さすが狂言を初めて9年目、稽古が始まると表情が一変、野村さんから次々出される課題をこなしていきます。


稽古の様子が観られるのも、今回のプログラムならではのこと。

【 古典狂言 】
いよいよ「古典狂言」体験。この日の演目は「口真似」。

― 口真似 あらすじ
主人はおいしいお酒と肴を手に入れたので、一緒に楽しく飲んで食べる相手が欲しいと思い、太郎冠者に誰かを呼んでくるように言いつけます。太郎冠者は知り合いのある男を連れてきますが、その男は大酒のみで、酔うと刀を抜いて暴れることで有名な佐藤弘道でした。
主人は失礼のないように、うまくあしらって帰ってもらおうと考え、太郎冠者には勝手な行動をしないで自分の言うとおりに振る舞うように言いますが・・・・・。

この演目至るまでの「おはなし」や「狂言コント」の学びのおかげで、
スーッとその世界に入り込み、古典独特の笑いを楽しむことが出来ました。


主人(左)の言ったことを忠実に守ろうとする太郎冠者(右)

通常の狂言ではありあえない野村さんのアドリブが、更なる笑いを誘いました。

【 おはなし③~そうかつ 】
最後は出演者全員が舞台に登場。この日の公演を振り返りながら、「現代狂言」のこれからを語りました。

「回を重ねるごとに“現代狂言”の目指す先が見えてきた」という野村さんの言葉通り、まだまだ探究される現代狂言。客席の方々に狂言の笑いを指導して会場全体で笑い締めとなりました。時代は違えど、今も昔も笑いのツボは変わらない!もっと狂言に踏み込んでみたい、そう感じられる、伝統芸能入門編にはぴったりのプログラムでした。

踏み出すならここで一歩、「東京発・伝統WA感動」!
まだまだ続く今後のスケジュールはこちらをご覧ください。
http://www.dento-wa.jp/

※本公演概要※
東京発・伝統WA感動「日本の笑い—古典と現代」
【日時】10月7日(火)18時30分開場/19時開演
【会場】国立能楽堂
【出演】野村万蔵、南原清隆、佐藤弘道、ドロンズ石本、エネルギー(森一弥・平子悟) 司会:大野泰広
【入場料】一般2500円、学生1500円(全席指定)
【主催】東京都、アーツカウンシル東京・東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、東京発・伝統WA感動実行委員会
【問い合わせ】東京発・伝統WA感動実行委員会事務局 TEL:03-3467-5421(平日10〜18時)

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