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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2023/07/04

路上プログラムが4年ぶりに復活!「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり2023」

江戸の風情が漂う街並みを残しながら、おしゃれでスタイリッシュな店も軒を連ねる神楽坂。新旧が混在したこの“まち”全体を舞台に、「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり2023」が5月20日(土)・21日(日)に開催されました。

さまざまな日本の伝統芸能を誰もが気軽に楽しめる2日間のフェスティバル。11回目となる今年は、4年ぶりに路上プログラムが復活し、神楽坂のまちが活気と熱気に満ち溢れていました。ここでは、取材チームが体験した2日目のプログラムを臨場感たっぷりにお届けします!

“言葉で描く”伝統芸能 [毘沙門天善國寺 境内特設ステージ]

■神楽坂楽座〜講釈場|講談

講談師の神田松麻呂氏
撮影:二瓶剛(SETENV)

「パンパンッ」
釈台(机)を張り扇で叩き、始まったのは伝統の語り芸「講談」です。講談師の神田松麻呂さんは、人間国宝・神田松鯉先生に師事し、2022年に二つ目昇進を果たした将来を嘱望される若手講談師。

講談師の神田松麻呂氏
撮影:二瓶剛(SETENV)

本来であれば30分前後の「谷風梶之助の情相撲」を、ギューっと短く“10分のショート講談”にして読んでくれます。わかりやすいストーリー、勢いと切れ味ある口演、そして熱を帯びる松麻呂さんの講談にどんどん引き込まれ、あっという間に終了。講談のおもしろさにすっかり魅了されました。

■神楽坂楽座〜講釈場|薩摩琵琶

久保田晶子氏による「薩摩琵琶」
撮影:二瓶剛(SETENV)

続いての芸は、久保田晶子さんによる「薩摩琵琶」。「薩摩琵琶」は琵琶を弾き語りながら物語を伝える語り物音楽で、戦国時代に武士の士気を鼓舞する目的で作られました。大きな鋭角のバチで力強く弦をかき鳴らし、平家物語「敦盛の最期」を歌いあげます。気づけば観客の数がどんどんふくらみ、お寺周辺にも大勢の人が集まっていました。

この後も、女流講談師・田辺銀冶さんの講談や、女流義太夫・竹本京之助さんと鶴澤賀寿さんによる浄瑠璃が披露されました。

粋な“流し”の伝統芸能 [神楽坂路上界隈]

■新内流し

新内流し 撮影:二瓶剛(SETENV)

毘沙門天善國寺周辺をはじめ神楽坂が多くの人で賑わうなか、神楽坂通りから横道に入り石畳の裏路地へ向かいます。ポロンポロンと三味線のはかない音色とともにやってきたのは「新内流し」。「新内流し」とは、浄瑠璃の一流派である新内節の演奏形態のひとつで、三味線を演奏しながらまちなかを歩き、演奏の機会を求める流しの芸能。その再現とのことです。

新内流し
撮影:二瓶剛(SETENV)

演奏するのは、神楽坂在住で新内節の人間国宝・鶴賀若狭掾一門です。情緒溢れる兵庫横丁や、黒塀が連なるかくれんぼ横丁を流す様は、まさに粋! 普段なかなかお目にかかれない“流し”を収めようと立派なカメラを構える写真愛好家の方や、思わず足を止める人をたくさん見かけました。

■城端曳山祭〈庵唄〉

「城端曳山祭[庵唄]」
撮影:二瓶剛(SETENV)

「新内流し」に続いて、宝槌会のみなさんによるしっとりと情緒溢れる「城端曳山祭〈庵唄〉」が神楽坂を流します。「庵唄」とは、江戸の端唄が富山県南砺市の城端に伝わり、その地の城端曳山祭を通して300年もの長い間唄い継がれてきた伝統芸能。そんな庵唄が、“江戸への里帰り”です。城端曳山祭は現在、国の重要無形民俗文化財に指定されているほか、ユネスコ無形文化遺産のひとつにも登録されており、毎年5月に開催される祭に全国から多くの人が訪れています。

「城端曳山祭[庵唄]」
撮影:二瓶剛(SETENV)

三味線、篠笛、太鼓からなる囃子方の演奏に合わせて、唄方の伸びやかな声が響きます。ギャラリーには海外の方も大勢いて、写真を撮ったり、興味深そうに近くに寄ってみたりと、日本の文化を大いに楽しんでいるようでした。

子どもも楽しい伝統芸能 [白銀公園]

■子ども広場|伝承遊び

子ども広場|伝承遊び
撮影:二瓶剛(SETENV)

“流し”を堪能したところで、白銀公園へ移動して小休止。ここでは、コマやけん玉など日本で古くから親しまれている伝承遊びや積み木を自由に体験できる「子ども広場」が設置されていて、たくさんの子どもたちが思い思いに遊んでいました。

■子ども広場|江戸糸あやつり人形

子ども広場|江戸糸あやつり人形
撮影:二瓶剛(SETENV)

そんな子どもたちや親御さんたちが公園の一角に大集合しました。お目当ては、江戸時代から伝わる「江戸糸あやつり人形」の実演。手板と呼ばれる四角い操作板に何十本もの糸が付き、その糸を操作して人形を操る芸です。上條充さんが巧みに操る人形は、実に繊細で表情豊か。まるで生きているかのように自在に動く人形の姿に子どもたちも見入っていました。

大人気! 神楽坂タイムスリップ「スタンプラリー」「歴史ガイド」

神楽坂タイムスリップ「スタンプラリー」「歴史ガイド」…
撮影:二瓶剛(SETENV)

神楽坂の歴史文化スポット6ヶ所をめぐりスタンプを集めたら記念品(神楽坂姉妹オリジナル手ぬぐい)がもらえる「スタンプラリー」が2日目限定で実施されました。マップを片手に歩くファミリーやカップルともよくすれ違い、「スタンプラリー」を通して多くの方が神楽坂のまち歩きを楽しんでいました。あるスポットでは、スタッフの方が「あと1ヵ所ですね。もうひと頑張り!」と参加者に言葉を掛ける温かい場面も見かけました。

このほかに、歴史ガイド役や通訳スタッフとして、各スポットで神楽坂の歴史やまちの魅力を熱心に案内する地元のボランティアの方たちの活躍も印象的でした。

ジャンルを超えた伝統芸能 [赤城神社 境内]

■神遊びライブ

異文化弦楽団 撮影:二瓶剛(SETENV)

新緑が爽やかな赤城神社の境内に到着し、次のプログラム「神遊びライブ」を待ちます。続々と人が集まってきたところで、異文化弦楽団による演奏がスタート! 異文化弦楽団は、日本の胡弓、中国の二胡、ブルガリアのガドゥルカ、西洋のチェロ、中東のパーカッション奏者からなる胡弓奏者・木場大輔さん率いる楽団です。日本の伝統楽器と世界のさまざまな楽器によるジャンルを超えた唯一無二のライブは、映画「ミッション・インポッシブル」のテーマ曲で観客の心を掴み、胡弓、二胡、ガドゥルカの独奏、最後は木場さん作曲の「シルクロード組曲 第一番」で魅せて終了。青空と風に揺れる木々をバックに、弦楽器の妙なるハーモニーがたまらなく心地いいライブでした。

豪華! 伝統芸能オンパレード [赤城神社 神楽殿]

■赤城神社夕暮れライブ

司会者のフランス人落語パフォーマー、シリル コピーニ氏
撮影:二瓶剛(SETENV)

赤城神社境内から神楽殿に場所を移し、いよいよ、2日間のフェスティバルを締めくくる「赤城神社夕暮れライブ」が幕を開けました。「ボンソワー(Bonsoir)」と登場してきたのは、司会者のフランス人落語パフォーマー、シリル コピーニさん。軽妙なトークで会場を沸かせていました。

丸一仙翁社中
寿獅子舞
撮影:二瓶剛(SETENV)

丸一仙翁社中
傘回し
撮影:二瓶剛(SETENV)

華やかにトップを飾ったのは、丸一仙翁社中のみなさんによる「江戸太神楽」。迫力ある「寿獅子舞」に続き、ジャグリングのように何本ものバチを投げる「バチ芸」や、お馴染み「傘回し」などの技が軽快な口上に合わせて次々に繰り広げられ、成功のたびに会場から「おおー」という感嘆の声が上がっていました。

真鍋尚之氏
撮影:二瓶剛(SETENV)

徐々に日が傾くなか、真鍋尚之さんによる笙(しょう)の演奏が始まりました。雅な世界へと誘う、得も言われぬ美しい和音の響き──。笙は、伝統芸能である雅楽の管楽器のひとつで、柔らかで神秘的な音が特徴です。笙の可能性をどれだけ引き出せるかを探ったという自身作曲の「呼吸III」も披露され、真鍋さんの超絶技巧演奏にただ聴き惚れるばかりでした。

常磐津和英太夫連中(常磐津節)と藤舎千穂連中(邦楽囃子)のみなさん。三味線音楽の一種「常磐津節」と、歌舞伎や文楽などを盛り上げる音楽「邦楽囃子」
撮影:二瓶剛(SETENV)

大トリは、常磐津和英太夫連中(常磐津節)と藤舎千穂連中(邦楽囃子)のみなさん。三味線音楽のひとつ「常磐津節」と、音楽のリズム面を担当し、情景描写などの役割も担う「邦楽囃子」で、常磐津節の名曲「三世相錦繍文章(さんぜそうにしきぶんしょう)」を奏でます。語りの太夫(たゆう)、三味線、笛、小鼓、大鼓、太鼓の呼吸を合わせた一糸乱れぬ演奏は、圧巻そのもの。終わった瞬間、会場から大きな拍手が巻き起こっていました。

常磐津和英太夫連中(常磐津節)と藤舎千穂連中(邦楽囃子)のみなさん。三味線音楽の一種「常磐津節」と、歌舞伎や文楽などを盛り上げる音楽「邦楽囃子」
撮影:二瓶剛(SETENV)

趣のある神楽坂というまちで、数々の素晴らしい伝統芸能に出会い、その華やかな魅力、そして奥深さに触れることができた1日。余韻に浸りながら、心地よい疲れとともに神楽坂をあとにしました。


「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり2023」映像プログラム 公開中!

日本の伝統文化にも造詣が深い日本文学研究者のロバート キャンベルさんが、神楽坂エリアにある矢来能楽堂を訪問。能楽師の観世喜正さんとともに伝統芸能を鑑賞し、その演者の方々を交えて神楽坂と伝統芸能について語らう「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり2023」映像プログラム。全3話を公式YouTubeチャンネルでご覧いただけます。ぜひご覧ください。

「神楽坂まち舞台・大江戸めぐり2023」映像プログラム


神楽坂まち舞台・大江戸めぐり2023

  • 日程:2023年5月20日(土)・21日(日)
  • 会場:神楽坂エリア
  • 主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、NPO法人 粋なまちづくり倶楽部
  • 事業ページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/58344/

撮影:二瓶剛(SETENV)
取材・文:横山史絵(鐵五郎企画)

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