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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

F/T15 special

フェスティバル/トーキョー(F/T)ディレクターズコミッティのメンバーで、ドラマトゥルクの横堀応彦が、今年のF/Tの見どころを独自の視点でお伝えする限定ブログ。

2015/11/13

新作や初演の作品がひしめくフェスティバルでは、初めての《ドキドキ感》こそが醍醐味!

先日とあるミュージカルを観に行った帰り道、「今日のお芝居、なんだか難しかったわね。」という声を耳にしました。確かに1万円近い金額のチケットを買って楽しみにしていたお芝居が期待ハズレなものだとしたら、それは残念なことかもしれません。演劇に限らず、一般的に高価なものを購入する際には、その《安心性》が決め手である場合が多いように思います。「ちょっと高いけど、きっとこれなら間違いないだろう」と思って買い物をした経験は、誰にでもあるはずです。

いつでも好きなだけ観られるテレビ番組や、どんな作品でも一律料金で観られる映画と異なり、作品によって値段の異なる演劇では「どれを観たらいいのか分からない」という問題が頻繁に生じます。その際多くの場合で決め手になるのは「テレビによく出ている誰々さんが出演しているから」とか「海外有名オペラハウスの引っ越し公演だから」とか「有名なお話で楽しめそうだから」といった予測ではないかと思います。せっかく高いお金を払ってチケットを買うのですから、《いい作品》(=《安心させてくれる作品》)を観たいのは当然のことです。その《安心》の裏には《既に一定の(高い)評価が定まっている》ことがあるわけですが、少し穿った見方をすれば《既存の価値観に甘んじている》と言うこともできます。

「多様な価値が出合い、互いを刺激しあうことであらたな可能性を拓く場」(開催趣旨より)を目指したフェスティバル/トーキョー(F/T)では、《新たな価値観に取り組む》作品を多く紹介しています。それはもしかすると《安心させてくれない》ものかも知れませんが、知らない人に初めて出会うときの《ドキドキ感》を楽しみながら(先ほどとは別の意味での)《いい作品》を見つけていただきたいと思います。

11月12日(木)から15日(日)にかけて上演されるゾンビオペラ『死の舞踏』は、世界初演ということもあり今年のF/Tで最も《ドキドキ感》の高まる作品です。「海外有名オペラハウスの引っ越し公演」のような《安心感》はありませんが、従来の《オペラ》の価値観を打ち破る新作を是非目撃してください!

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《ゾンビ》というのは自動演奏吹奏楽器。写真は稽古場でゾンビと戯れるアーティスト達。写真左から:渡邊未帆(ドラマトゥルク)、安野太郎(コンセプト・作曲)、危口統之(美術)

「1度にたくさんの作品が観たい!」という方には、5つの作品の上演が重なる11月21日(土)〜23日(月・祝)の3連休を活用したプランをオススメします。「3演目セット」をお買い求めいただくと、前回のブログでご紹介した『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』をはじめとする3作品が約1万円でご覧いただけます。

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筆者イチオシの『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』
(C)Ricardo Carrillo de Albornoz

『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』と同じ東京芸術劇場で上演される『Being Faust – Enter Mephisto』は、ゲーテの『ファウスト』を現代のデジタル空間に落とし込んだ参加型ゲーム作品です。21日(土)と22日(日)は『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』とのハシゴも可能です(同じ建物内につき移動時間の心配もありません)。

また池袋近郊の劇場で上演される『God Bless Baseball』と『ミステリヤ・ブッフ』も、日によってはハシゴが可能です。(※これらの作品の詳細は次回!)

例えば…


1. 気合いで3本消化プラン

11月22日(日)

12:00『Being Faust – Enter Mephisto』(東京芸術劇場)
14:00『God Bless Baseball』(あうるすぽっと)
18:00『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』(東京芸術劇場)
もしくは
19:30『ミステリヤ・ブッフ』(にしすがも創造舎)

※ただし、『Being Faust – Enter Mephisto』の上演時間が1時間30分の予定ですので、脚力に自信がないと危険です!

2. 東京芸術劇場満喫プラン

11月22日(日)

12:00『Being Faust – Enter Mephisto』
14:45 アジアシリーズvol.2 ミャンマー特集『ラウンドアバウト・イン・ヤンゴン』ミャンマー映画特集『Beauty of Tradition -ミャンマー民族音楽への旅-』
18:00『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』

※ただし、ミャンマー映画特集はセット券除外

3. のんびり散策プラン

11月23日(月・祝)

14:00『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』(東京芸術劇場)
19:30『God Bless Baseball』(あうるすぽっと)
もしくは
19:30『ミステリヤ・ブッフ』(にしすがも創造舎)


最後に、彩の国さいたま芸術劇場で上演されるパリ市立劇場『犀(サイ)』は、俳優たちの高いアンサンブル力による優れた作品。パリでは約1,000席の客席が毎回超満員の作品が、日本語字幕つきで観られるまたとないチャンスです!


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