アーツカウンシル東京が主催・共催するイベント情報

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連続トーク 第3回
「まだ見ぬあなたをたずねるために」

市民講座 対話をひらく

ジャンル:
  • アートプロジェクト ,
  • 講座・シンポジウム

まだ見ぬあなたをたずねるために

春になって下神白団地(しもかじろ)に住む●●さんをたずねるとしたら、あなたは彼女に、彼に何をたずねますか?自分のことをどのように伝えますか?

「対話」は、日々繰り広げられているように感じますが、齟齬や誤解(幸福なケースもありますが)に満ちてもいると思います。他者を理解する、自分のことを伝える、さまざまな事象について丁寧に語り合う、経験を共有し合う場は、どのように立ち上がってくるのでしょうか。
出会った人たちがその一瞬を尊びながら語ること、その出来事を持って新たな世界に出かけていくこと、そのための対話の可能性を探ります。

福島県いわき市にある復興公営住宅 下神白団地に通い「ラジオ下神白*」を運営してきたアサダワタルさんを招き、春になって下神白団地を訪ねることを前提とした対話の場を設けます。
下神白団地は、東日本大震災のあと、原発事故による避難者が入居する集合住宅です。ここで暮らし始めたのは、事故を起こした福島第一原発に近い富岡町、大熊町、双葉町、浪江町の方々です。不意に襲われた巨大な理不尽を抱えながらも日々を生きる人たちをたずねるとき、あなたは何を語り、どのように人の言葉を聞くことができるでしょうか? 逆にその人生の文脈・前提にとらわれずに、自由に個と個の関係を切り結びながら、何気ない会話をつむぐことはどういった意味を持ち得るのでしょうか?自分自身に向き合うこと、そしてその自分をもって、下神白をたずねてみませんか?

*ラジオ下神白:いわき市にある県営下神白団地を舞台に展開される、音楽と対話を手掛かりにしたコミュニティプロジェクト。住民が住んでいたかつてのまちの記憶を、馴染深い音楽とともに収録するラジオ番組を制作し、ラジオCDとして住民限定に配布・リリース。この行為を軸に、立場の異なる住民間、ふるさととの交通を試みている。「復興」というキーワードからすり抜ける一人ひとりの「私」との出会いを交わすために、継続している。


《市民講座 対話をひらく》とは
メディアが伝える政治のニュースに触れる時、政治は私たちの暮らしを支える基本であるにもかかわらず、物事の決め方、決まり方のぞんざいさに驚嘆しつつもあっという間になれ親しみ、また、ネット上を飛び交う情報の数々にも、量、質を問うことなどなく、伝えられた多様さの断片を、それぞれの理解によって都合よくすくいとって何かを理解したことになっているように感じます。私は私たちが複雑で高速で変化する、とても感情的な社会を生きているように思えます。

出来事のそれぞれの相互関係や因果関係も、関係の複雑さと変化の速度の速さとともに上滑りし、出来事自体が短時間で忘れ去られていきます。苛烈な出来事や心を震わせる出来事や事件、事故が日々起こっているにも関わらず、一つ一つが絵空事のように軽薄に扱われ、明快な像を結ばない社会のありようは、まるで中空に浮いた真空地帯ともいえるかもしれません。社会全体がリアリティーを薄め、また、そこに生きる私たち一人一人の存在のリアリティーも同じように薄められていき、あたかもアミューズメントあるいはゲームの世界のような空々しさの上に漂うようです。

私たちの時代の優れたアーティストは、自覚的か無自覚かに関わらず、否応無しにこの社会の特性を端的につかみ取り、さまざまな方法で描き出していきます。アートはとても感情的な行為でもありますが、優れた表現の営みの中にはそれぞれのアーティストの真摯な探求が押し流されずに存在します。私たちはこの作品群を「今」を照らすものとしてとらえ、読み解き、既成の価値にとらわれない生のリアリティーを獲得する対話の試みを多くの人と始めてみたいと思います。

このような対話の場を市民とともに重ねていくことは、日本社会の中で萎縮し、縮小しがちな表現の可能性を拡張することにつながります。特に自己確認や承認欲求の対象としての表現ではなく、この対話の存在が表現のありようをもっと多様に、豊かに拡張していくことにつながるとしたら、それは翻って、私たちがこれからの社会を生きていくためのさまざまな可能性も同時に拡張するものとなっていくでしょう。

企画:宮下美穂(NPO法人アートフル・アクション 事務局長)

講師プロフィール

アサダワタル(文化活動家・「ラジオ下神白」ディレクター)
1979年大阪生まれ。文化活動家。地域、福祉、住居、家族、仕事のあり方など、多様な領域にまつわる「ちょっとヘンテコな別のやり方」を、アートプロジェクトや著作を通じて提案し続けている。主な手立ては、音楽と言葉と移動。近年のプロジェクトに「小金井と私 秘かな表現」(東京都小金井市 2015-2017)、「千住タウンレーベル」(東京都足立区 2016-)など。著書に『住み開き』(筑摩書房)、『コミュニティ難民のススメ』(木楽舎)、『想起の音楽』(水曜社)など多数。大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員、博士(学術)。

参加費

無料

定員

15名
※事前申込不要。当日会場にお越しください。
※本プログラムは変更になる場合があります。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ

NPO法人アートフル・アクション
TEL: 050-3627-9531
E-mail: mail@artfullaction.net

開催場所

カフェ アン(東京都小金井市本町3-8-1 第二佐藤ビル1F)

クレジット

主催
東京都、小金井市、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NPO法人アートフル・アクション