第9回天籟能の会において、故多田富雄(東京大学名誉教授・免疫学)作の新作能『望恨歌』を、日本の伝統芸能「能」と、韓国の伝統芸能「農楽」の協同によって上演した。朝鮮が日本の植民地下にあった1930年代、日本に強制連行され、九州の炭鉱での強制労働の末に亡くなった朝鮮の若者の妻が『望恨歌』のシテ(主役)である。時は流れ、今は老女となった妻は日本の僧が持参した若者の手紙を読み、昔を想い出して舞を舞う。本事業では1993年の初演以来、『望恨歌』の上演に度々関わってきた能役者・清水寛二がシテを演じ、演出も担当した。能と農楽が協同で能を上演したのは史上初であり、日韓芸能によって『望恨歌』が上演され、芸能交流が行われたことは意義が深い。公演では『望恨歌』とともに伝統芸能の狂言や農楽も上演し、それぞれの特質も浮かび上がらせた。公演を深く鑑賞するための一般向け関連ワークショップも多角的なテーマを設定して全7回開催した。
【天籟能の会】
能楽ワキ方の安田登、笛方の槻宅聡、狂言方の奥津健太郎が同人の公演団体。現代における能楽(能と狂言)の存在意義と新たな可能性を探ることを目的に、多くの人々に能楽を深く知り楽しんでいただくことを目指して2010年に第1回公演を開催、2021年末までに9回の公演を重ねている。独自の視点で能楽を再発見する試みと発信力は高い評価を得てきた。公演前後に多角的なテーマのワークショップを複数回行うことも特色である。
天籟能の会
奥津健太郎
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国立能楽堂(東京都渋谷区)
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