東京アートポイント計画通信
東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。
2013/07/25
長尾POレポート プロジェクト日誌(3)
墨東エリア まちあるき
墨田区の墨東エリアと、足立区の千住エリアは、電車で数分のご近所同士。両エリアでそれぞれ展開している「『墨東まち見世』アートプラットフォーム」と「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」(以下、音まち)。担当として、行き来することは多いのですが、7月20日(土)、まち見世の事務局の方々に案内役となっていただき、初めて音まちのみなさんと一緒に墨東エリアのまちあるきをしました。
音まちは、ちょうど1年前の今頃から、元お豆腐屋さんだった場所で「音う風屋(おとうふや)」という活動拠点の運営をはじめました。アーティストや住人自身によってさまざまに工夫された拠点も多い“先輩”地域である墨東エリアに出会ってみたら、何か今後へのヒントもあるかもしれない、という期待も持っての企画・・・!
当日は朝10時、東武亀戸線「小村井(おむらい)」駅に、音まちの事務局や各企画チーム、ヤッチャイ隊に携わる有志メンバーなど総勢15名が集合。
まずは、「float」、「あをば荘」という2つの拠点にうかがいました。いずれも墨東まち見世2011~2012をきっかけに、元工場や集合住宅だったところを若手メンバーが自分たちの手で改装し、住居やアトリエ、イベントの場としているところです。「音う風屋」と似た間取りの「あをば荘」で、音まちメンバーが拠点運営について積極的に尋ねる姿が印象的でした。その後、お昼休憩を挟みつつ「キラキラ橘商店街」を通り抜け、すみだ青空市ヤッチャバを見学し、写真専門のスペース「RPS(Reminders Photography Stronghold)」(こちらも元工場で昨年度オープン)で展示を拝見。そして、アート関連企画も多く開催されているカフェ「東向島珈琲店」で、今体験してきたばかりの感想を共有し、ふりかえりのひとときを持ちました。その後は有志で、ジャズイベント開催中の「鳩の街通り商店街」に足を伸ばし、まちのエネルギーを感じる時間を過ごしました。
連日の暑さに熱中症のニュースも飛び交う中、適度に吹く風に助けられながら、日よけや水分補給などの対策もしてゆっくり歩いていき、気がつくと約5時間があっという間でした。
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あらためて、墨東のまちを歩いて感じたのは、このエリアで過去にさまざまな形で行われた数々のプロジェクトの痕跡/成果物が、時間の推移に溶け込みながらも確実にまちの中に堆積しているということ。
例えば、墨東まち見世2011の「100日プロジェクト」で展開されたアーティスト谷山恭子さんのプロジェクト「Lat/Long-project “I’m here. ここにいるよ。” 」で生まれた作品は、今でも公園の滑り台や、カフェのコーヒーカップなどに見つけることができます。また、路地の植栽「路地園芸」をテーマに「京島路地園芸術祭」も開催されるほどの多彩な植物を目で楽しんだり、民家の軒先に設置された水琴窟の涼やかな音色を聞いたり。
墨東には多彩な拠点が数多くあることが特徴のひとつですが(今も少しずつ増えているようです!)、もしそれらの拠点がその日オープンしていなくても、道を歩いていくだけでも、さまざまな発見・体験ができます。
もちろん、こんなに知らない路地に迷わず、安心してまちあるきができるのは、そこに案内人として共に歩いてくださる、このエリアで10数年以上も息の長い活動を続けているNPO法人向島学会の方々や、住人として日常生活のなかで地元を知り尽くしている方たちと一緒だからこそなのです。何気ない、しかし要点の凝縮されたガイドを聞くことができます!
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墨東エリアでは「墨東まち見世」として2009年度から2012年度まで4年間、プロジェクトを展開してきました。その間に育まれたアート拠点やネットワーク資源を視覚化するマップ作りを中心に、今年度も「『墨東まち見世』アートプラットフォーム」事業に取り組んでいます。秋には、新しい情報に更新された今年度版のマップが完成する予定です。
マップ制作やまちあるきの様子はこちら「墨東ニュース」からもご覧いただけます。
『墨田のまちとアートプロジェクト [墨東まち見世2009-2012ドキュメント]』(平成25年3月発行)
墨東まち見世の4年間の活動が詰まった一冊。
東京アートポイント計画プログラムオフィサー 長尾 聡子