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東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2017/09/06

東京アートポイント計画からおすすめの3冊(2017秋編)

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『JOURNAL 東京迂回路研究3』(巻頭写真|写真:齋藤陽道、ダンサー:北原倫子)

東京アートポイント計画では、毎月1回メールニュース「Artpoint Letter」を配信しています。執筆しているのはアーツカウンシル東京のプログラムオフィサー。もりだくさんのプログラム情報はもちろん、様々なまちのアートプロジェクトの舞台裏、読み物などをお届けしています。

今回は過去に配信した「Artpoint Letter」の中から、アートプロジェクトのドキュメントブックやTokyo Art Research Labの資料等を紹介する「BOOK」のコーナーの記事をご紹介します。


■港千尋『芸術祭ノート』

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近年、各地で盛り上がりを見せる芸術祭。まちや地域で展開するアート活動では、多種多様な人々が関わり支える中で独自の知見が蓄積されています。しかし、それらを共有し次の実践へ活かすことは、なかなか容易ではありません。いま、芸術祭に取り組む意義とは何か。国際的な時流を読み解きながら、どのような方法を重視し、現場を組み立てていくべきなのか。

2017年3月にTokyo Art Research Labの研究開発として公開された『芸術祭ノート』(PDFブック)では、「あいちトリエンナーレ2016」の芸術監督を務めた港千尋さんが、その経験を踏まえながら、「芸術祭」という形式の可能性について、7つの視点から考察されています。

時空をつなぐアートの「隣接性」、アートがもたらす「ライフスタイル」とは何か。知的資産への「接続力」と細部への注意深い観察「マイクロヒストリー」がもたらすもの。「アーキテクトの役割」や「関係性の変化とその再編成の実験」について。日常的なコミュニケーションの中に蓄積される知見の残し方「アーカイブの課題」や、「アーティストのグローバル化、多様化」から読み解く近代的概念の解体などなど。

港さんの経験に裏づけされた膨大な知識と思考を辿って行くと、不思議な浮遊感に包まれます。そして読み終えた後、何かが引っかかっているのに掴めない、もどかしい感覚がじわっと残ります。何とも言えない、ちょっと悔しい感じ。それはきっと、本書が答えをまとめた「解答書」ではなく、問いと実践の一部を記した『ノート』だからかもしれません。

一人で読んで熟考するのも良いですが、できれば誰かと一緒に話し合いながら読むことをオススメします。そうすることで、アートに携わる人の多様な経験と思考が交錯する議論へと発展していくと思うから。「私はこういう発見をして、こんな考察をしたんだ。で、君はどう思う?」と港さんが顔を覗かせ、豊かな視座をわたしたちに投げかけてくれる、そんな1冊です。

(プログラムオフィサー 嘉原妙)

『芸術祭ノート』
発行日|2017年3月31日
テキスト・写真|港千尋
図書設計|松田洋一
編集・制作|株式会社インスクリプト
編集協力|関川歩
発行|アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)

■NPO法人 多様性と境界に関する対話と表現の研究所
『JOURNAL 東京迂回路研究』

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「障害、ケア、労働、住処、ジェンダーやセクシュアリティ、国籍……社会のなかにある多様な生き方と、そのひとつひとつに引かれている境界線を丁寧にみていくこと」をテーマに、社会における人々の「多様性」と「境界」に関する諸問題について、調査・報告・対話・分析を試みた「東京迂回路研究」。NPO法人多様性と境界に関する対話と表現の研究所(diver-sion)が、3年間(2014~2016年度)のプロジェクトを通して、出会い、対話し、考え、見出したことをまとめた全3巻。

“多様な人々が多様なままに共にあること。それには、互いのありようやその異なりに目を向けることが不可欠なのではないか。”そうした問いをかかげながら、思考を重ねた活動の軌跡をたどることができる3冊です。

(プログラムオフィサー 坂本有理)

『JOURNAL 東京迂回路研究 1』
発行日|2015年3月15日
監修|多様性と境界に関する対話と表現の研究所
執筆|長津結一郎、井尻貴子、三宅博子
編集|井尻貴子
撮影|齋藤陽道、冨田了平
装幀|吉村雄太(スタジオ・プントビルゴラ)
発行|東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)

『JOURNAL 東京迂回路研究 2』
発行日|2016年3月
監修|多様性と境界に関する対話と表現の研究所
執筆|長津結一郎、井尻貴子、三宅博子、石橋鼓太郎
寄稿|岩川ありさ、岩田祐佳梨、沼田里衣、東濃誠
編集|井尻貴子
翻訳|片桐 聡
撮影|齋藤陽道、冨田了平
装幀|吉村雄太(スタジオ・プントビルゴラ)
発行|東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)

『JOURNAL 東京迂回路研究 3』
発行|2017年3月
監修|多様性と境界に関する対話と表現の研究所
執筆|長津結一郎、井尻貴子、三宅博子、石橋鼓太郎、五藤 真
寄稿|新澤克憲、田中みさよ、富樫悠紀子、渡辺一充、水谷みつる、入江 杏、林 建太、佐々木晃也、ササマユウコ、ロドリゲス江戸山、照山絢子
編集|井尻貴子
翻訳|片桐 聡
撮影|齋藤陽道、冨田了平
装幀|吉村雄太(スタジオ・プントビルゴラ)
発行|アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)

■ 小川希『東南アジアリサーチ紀行』

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本書は、「東南アジアの観光旅行ガイド」ではありません。TERATOTERAディレクター・小川希さんがわずか3ヶ月で、9ヶ国・83ヶ所のアートスペースをリサーチした旅の記録です。

目を惹くコバルトブルーの表紙をめくれば、オルタナティブアートスペースの多様なあり方や、ゆるやかな人の集まりを巡る、チャーミングな旅を追体験できます。各国の歴史や社会情勢と向き合いながら、自由な表現を追う人々の存在を知り、会いに行きたくなる一冊です。

また、著者の小川さんは、このリサーチ旅をきっかけに、東南アジアのアーティストを自身のアートセンターに招聘する企画「TERATOSEA(テラトセア)※」をスタートしました。(※「SEA」=South East Asia)昨年度は、ターウィーパッ・プレーヌーンさん(本書P145~160)を招き、タイと日本との繋がりを題材にした展覧会「Brackish Tomorrow」を開催。今年度も、ジェニファー・タオさん(P185~189)と「リアリー・リアリー・フリーマーケット」を展開しました。

また、東京ではこの夏から秋にかけて、東南アジア関係の企画も盛りだくさん。本書に綴られた東南アジアの「今」のアートに触れみてはいかがでしょうか。

森美術館、国立新美術館「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」
六本木アートナイト2017「東南アジア・プロジェクト」

(プログラムオフィサー 上地里佳)

『東南アジアリサーチ紀行』
発行日|2017年3月23日
著者|小川希
翻訳|弘川ゆきえ、本間順子、佐藤彩乃、地主麻衣子、高石晃、池田佳穂、本村桜アリス、太田エマ、ジョナサン・ウィストン、スザンヌ・ムーニー、ムジーブ・カーン
デザイン|原田光丞
イラストレーション|和田亜矢子
印刷・製本|株式会社シナノ
発行|アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)


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