ACT取材ノート
東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。
2017/11/07
街がアートに染まる特別な一夜。「六本木アートナイト2017」
六本木の街を舞台に、一夜限りの非日常体験ができる「六本木アートナイト」。今年は2017年9月30日(土)と10月1日(日)の2日間にわたって開催されました。
テーマは「未来ノマツリ」。街なかでインスタレーションやパフォーマンス、参加型イベントなど約80のアートプログラムが行われ、街がいつもと違うにぎやかな雰囲気に様変わりしました。
今回は、初日の17:30から23:30の6時間で巡った様子をお伝えします!
17:30 コアタイム・キックオフセレモニー
この日の10:00から始まった六本木アートナイト。9月30日(土)の日没から10月1日(日)の日の出までの時間帯は、メインのインスタレーションやイベントが集積する「コアタイム」です。17:30、そのキックオフセレモニーが六本木ヒルズアリーナで行われました。
今年のメインプログラム・アーティストは、写真家・映画監督の蜷川実花さん。セレモニー会場の舞台にもなっているのが、彼女の世界観がつまった作品「Tokyo Followers 1」です。
この作品は、六本木ヒルズアリーナのほか東京ミッドタウンと国立新美術館にも展示されている3つのインスタレーションからなるもの。訪れた人が中に入って自由に写真を撮ることができ、SNSへの投稿ももちろんOK。参加者が発信者にもなる作品なんです。
実行委員長の南條史生さんのあいさつから始まったセレモニー。その最後には、参加アーティストたちもアリーナに集合しました。だんだんと日が暮れていくなかでの華々しい幕開けに、会場も盛り上がります。
18:00 蜷川実花 ほか「TOKYO道中」
セレモニーに続いて始まったのは、蜷川実花さんの演出によるスペシャルパフォーマンスです。極彩色の衣装に身を包んだパフォーマーたちが客席を練り歩き、「Tokyo Followers 1」のステージへ。コアタイムの始まりを飾る斬新な「花魁道中」に、観客たちは目を奪われていました。
18:30 エネス「ソニック・ライト・バブル」
六本木ヒルズアリーナを出発し、六本木ヒルズの森タワーメインエントランス前でまず出合ったのは、オーストラリアのマルチメディア集団「エネス」によるインタラクティブ作品です。
バルーンの表面に触れると振動や光が変化するこの作品。集まった人たちが次々に手を伸ばし、写真を撮って楽しんでいました。
18:40 国立奥多摩美術館「国立奥多摩美術館 24時間人間時計 〜アジア編〜」
六本木ヒルズを離れ、いよいよ街なかへ。六本木通りに、なにやら大きな人だかりができています。
アーティスト・コレクティブ「国立奥多摩美術館」によるこのパフォーマンスは、その名の通り人間が両腕で時間を刻む時計。18:00にスタートし、24時間後の翌18:00まで続けられるのだそう……!
後日聞いた話によると、両端のふたりは交代したものの、真ん中の佐塚館長は休憩なしで24時間を完走。やり遂げたその瞬間は、観客から大きな拍手が起こったそうです。館長、本当にお疲れさまでした!
18:50 山本洋子(バルーンランド)「アジアの花」
人間時計に後ろ髪を引かれつつ、ミッドタウン方面へと移動します。
下の写真は、バルーンアート「アジアの花」があしらわれた六本木交差点の時計塔。向かいのカフェ「アマンド」の窓は蜷川実花の写真で彩られています。おなじみのランドマークにアートがプラスされ、不思議な光景が広がります。
19:25 蜷川実花「Tokyo Followers 1」
東京ミッドタウンに到着すると、エントランス前に「Tokyo Followers 1」を発見。六本木ヒルズアリーナと世界観がつながっています。ここでも写真を撮る人が多く見られました。
19:25 東京ミッドタウン メトロアベニュー
東京ミッドタウンと地下鉄の駅をつなぐ「メトロアベニュー」には、たくさんのパフォーマンスやインスタレーション作品が集まっていました。
後藤宙さんによる公開制作「構造 / 表象」。手作業で糸を留め、少しずつ作り上げていく彫刻作品です。
山口正樹さんの「遠くの山のそのまた向こう」は、「身につけられる木彫り作品」を実際にお客さんが身につけるワークショップです。いつもよりちょっと大胆になれるのも、アートナイトならでは。
子供たちがはしゃいでいる姿が印象的だったのが、FUKUPOLYの「GECKO」。作家自らが頭につけたプロジェクターからは液体のような映像が投影されていました。
nor(ノア)による「dyebirth」。水やインク、化学物質などのケミカルリアクションを利用して、常に変化する模様が描き出されていきます。
大塚功季さんによる参加型作品「Growing, Making and Creating」。糊を使って紅白ロープを八の字に留めていくと不思議なモチーフができあがります。
19:50 森と魚デザイン舎、キヲク座「にゅー KEN-KEN-PA! で六本木ジャック」
再び東京ミッドタウンのエントランス前に戻ってくると、現代風にアレンジされた童謡の生演奏に合わせて、みんなでけんけんぱを楽しむ参加型プログラムが始まろうとしていました。レベル別に3コースあり、取材チームは「中級者コース」にチャレンジすることに。
約20年ぶりのけんけんぱは意外とハード……でも、みんな自然と笑顔になっていました。
大人も子供も楽しめるシンプルな遊び。まわりで見ていた人たちも次々に参加して、大盛況でした。
20:20 国立新美術館
東京ミッドタウンのプログラムを楽しんだあとは、新国立美術館に移動。夜の闇のなか、たくさんの風車があしらわれた蜷川実花さんの「Tokyo Followers 1」が煌々と光っています。
こちらはネオ・アンゴノ・アーティスト・コレクティブが、街の人と一緒につくった巨人彫刻「ヒガンテス」。翌日にはパフォーマンスも行われました。
21:30 ナウィン・ラワンチャイクン「OKのまつり」
六本木西公園では、タイのアーティスト、ナウィン・ラワンチャイクンがお祭りを開催。取材チームが到着したのは、ちょうど異国情緒が漂う会場に集まった人たちがサルサの生演奏に合わせて踊り始めた時でした。
知らない人同士も手を取り合い、多幸感があふれる空間に。さながらフェスのような雰囲気で、大きなにぎわいを見せていました。
22:00 鄭弘敬「台北無聊風景」シリーズ
街なかのアートを楽しんだあとは、六本木ヒルズへ戻ることに。その道中、六本木通りの地下通路では写真が展示されていました。
22:15 スーザン・ドラメン「新作インスタレーション」
六本木ヒルズに到着し、けやき坂コンプレックスの作品を鑑賞。フォトジェニックな大型インスタレーションは、スーザン・ドラメンがボランティアの人たちと1週間かけてつくりあげたそうです。近くでディテールを見たり、階段の上から全体を眺めてみたりと、いろいろな視点から見たくなる作品でした。
23:00 黒田育世「IKUYO KURODA/BATIK in ART NIGHT」
最後はスタート地点の六本木ヒルズアリーナに戻り、黒田育世さんが自身のダンスカンパニー「BATIK」とともに披露するコンテンポラリーダンスを鑑賞します。深夜に近い時間帯ながら、会場にはたくさんの観客が集まっていました。
開演すると客席が静まり、大胆かつ繊細なその身体表現に引き込まれていきます。蜷川実花さんの作品を背景に繰り出されるステージは圧巻でした。
ここで終電の時間が迫り、取材チームの六本木アートナイトの旅は終了。アートに彩られた街を大勢の人が行き交う光景は、まさに非日常。特別な体験が詰まった、忘れられない一夜になりました。
今度はぜひ終電後の様子も味わってみたいなと思いつつ、次の開催を楽しみに待ちます!
六本木アートナイト2017
- 日程:2017年9月30日(土)〜10月1日(日)
- 会場:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
- 主催:東京都、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、港区、六本木アートナイト実行委員会【国立新美術館、サントリー美術館、東京ミッドタウン、21_21 DESIGN SIGHT、森美術館、森ビル、六本木商店街振興組合(五十音順)】
- 「六本木アートナイト2017」イベントページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/creation/festivals/roppong-art-night/18058/
撮影:鈴木穣蔵
取材・文:平林理奈