ACT取材ノート
東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。
2017/11/24
風情あふれる都会の庭園で、はじめての茶席体験
2008年から毎年開催され、今や秋の風物詩となっている「東京大茶会」。2009年からは、今回取材チームが訪れた浜離宮恩賜庭園のほか、江戸東京たてもの園でも行われています。
2017年10月21日(土)、子供や茶道初心者、外国人、そして上級者まで誰もが楽しめるお茶会に、秋雨がしとしとと降るなかでもたくさんの人が集まりました。
庭園内では同日開催のイベントとして、「外国人向け伝統文化体験プログラム」が行われていました。外国人の方々が華道、江戸指物、着物の着付けを楽しみ、着物姿で町カゴに乗る体験も。
メインステージでは女優・内山理名さんのトークショーがスタート。このステージでは1日を通して、能楽のステージや1枚の紙からいろいろな形を切り出す「紙切り」、三味線演奏など、さまざまな伝統芸能も披露されました。
広大な庭園の中を進み、次に出合ったのは都内の高校の茶道部による「高校生野点」です。野点(のだて)とは、屋外で楽しむピクニックのような茶会のこと。集まった老若男女に、制服姿の高校生たちが丁寧にお茶やお菓子をふるまっていました。
続いて取材チームは、「花木園」に移動。ここでは、「茶道はじめて体験」が行われます。初心者向けのこのプログラムなら…!と、茶席未体験の筆者も参加してみました。
子供や若者、お年寄り、海外の人までいろいろな人が集まり、なごやかなムードで茶会がスタート。着物姿の先生方が、笑顔でお茶菓子を配っていきます。
茶席といえば、お菓子のお皿代わりにする懐紙や菓子きりを持参するのが作法ですが、初心者にもひらかれた東京大茶会では道具を持参しなくても楽しめるんです。
お菓子はお茶が出される前にいただくのがルール。先生に「おまんじゅうの場合は、手で割って食べるのがいいですよ」と教えてもらい、おいしくいただきました。
中央の小上がりではホスト役=「亭主」によるお点前が始まりました。
参加者たちは写真を撮ったり、間近で眺めたりと、その美しい所作に興味津々。点てられたお茶は、「正客」に選ばれた外国人女性にふるまわれました。
続いて一人ひとりに茶碗が配られ、お茶を点てる体験が始まりました。先生に道具の使い方を教わり、筆者もぎこちない手つきながらもなんとか完成。はじめて自分で点てた抹茶はほろ苦くて温かく、想像以上においしかったです。
お茶をいただいた後、先生が茶席についてさらにいろいろ教えてくれました。
茶碗の正面の見分け方や、季節に合わせた茶器や飾るお花の選び方、基本の作法など。これまで触れてこなかったことがもったいないと感じるくらい、はじめての茶席は奥ゆかしく刺激的でした。
最後は、屋内の茶室で本格的な茶席を見学。経験者も多く参加するプログラムですが、もちろん初心者でも楽しめます。
茶席のルールをまったく知らない状態で参加したので、最初は少し緊張していましたが、とても楽しいひと時でした。
すべての道具が由来や意味をもち、一つひとつの所作ややり取りに心を込めたおもてなしは、温かく心地よいものです。日本の文化の奥深さにあらためて触れる、貴重な機会になりました。
- 日程:2017年10月21日(土)・22日(日)
- 会場:浜離宮恩賜庭園
- 主催:東京都、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
- 「東京大茶会2017」(浜離宮恩賜庭園):https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/21240/
撮影:鈴木穣蔵
取材・文:平林理奈