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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2018/05/01

アーツアカデミー2017レポート第8回:「東京2020文化オリンピアード」、「東京2020 Nipponフェスティバル」の現場から[ゲスト:堀和憲さん]

アーツカウンシル東京が2012年から実施している「アーツアカデミー」。

1年を通してアートをめぐるリサーチを行いながら、東京都の文化政策や助成制度を知り、芸術文化活動の評価のあり方について考え、創造の現場が抱える問題を共有するアーツアカデミーは、これからのアートの世界を豊かにしてくれる人材を育てるインキュベーター(孵化装置)です。

当レポートでは、アーツアカデミーの1年をご紹介していきます。


12月20日のアーツアカデミーでは、オリンピック・パラリンピック組織委員会の堀和憲さんをゲストに迎え、2020年に向けた“文化の祭典”の仕事についてお話をうかがいました。

文化・芸術を通して誰もが五輪に関われるしくみを

“文化の祭典”でもあるオリンピック・パラリンピック。東京大会を芸術・文化面から盛り上げるために、現在、組織委員会ではどのような企画や調整が進んでいるのでしょうか。堀さんはまず、スポーツだけでなく、文化や教育、地域活動などを通して「誰もがオリンピックに関われるしくみ」である『東京2020参画プログラム』の枠組みについて解説します。

「『東京2020参画プログラム』には、スポーツ・健康、教育、街づくり、経済・テクノロジー、持続可能性、復興、文化、オールジャパン・世界への発信、という8つの分野があり、2017年12月時点で22,000件が認証されています。この内、たとえば教育分野ですと、小学校・特別支援学校によるマスコット投票などがあります」
https://participation.tokyo2020.jp/jp/

「そして、この8つの分野の内、文化の分野に関連する事業を『東京2020文化オリンピアード』と称しています。審査基準・要件を満たした事業であれば、『東京2020文化オリンピアード』の事業として承認されます。文化・芸術を通してできるだけ多くの方々に、東京大会に参加したと実感していただくことを目指しています」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/bunka_renkei/dai3/siryou4.pdf
似たような言葉がいくつか出てきて少し混乱されるかもしれませんが、芸術・文化面から盛り上げの気運を高めるものが『東京2020文化オリンピアード』であり、これを含むもっと大きな盛り上げの枠組みが『東京2020参画プログラム』ということです。

『東京2020文化オリンピアード』では、次代に残すべきレガシー(遺産)コンセプトとして、「日本文化の再認識と継承・発展」、「次世代育成と新たな文化芸術の創造」、「日本文化の世界への発信と国際交流」、「全国展開によるあらゆる人の参加・交流と地域の活性化」という4つの標語を掲げています。この『東京2020文化オリンピアード』を多くの方に周知していただくためのイベントも開催されています。

「2017年11月26日に、東京駅前の行幸通りで『東京2020参画プログラム 文化オリンピアードナイト』というイベントを実施しました。第一部が市川海老蔵さん、宮本亜門さんらによるトークセッション、第二部は多様なアーティストによるコンサートを繰り広げました。警備をめぐる調整など様々な課題がありましたが、シークレットゲストのゆず、義足ダンサーの大前光市さん、ソプラノ歌手やゴスペルシンガー、東日本大震災の被災地の高校の音楽部などあらゆる人を巻き込んで、かなりの盛り上がりを見せたように思います」
https://tokyo2020.jp/jp/news/event/20171128-01.html

「東京2020 Nipponフェスティバル」――垣根を超える試み

次にもうひとつ新しい言葉が出てきました――オリンピック・パラリンピック開催年に実施される『東京2020 Nipponフェスティバル』です。これは、『東京2020文化オリンピアード』を含む『東京2020参画プログラム』の集大成として、大会の盛り上げを最大化する文化の祭典です。
https://tokyo2020.jp/jp/get-involved/festival/

「『東京2020 Nipponフェスティバル』は、東京都、政府を始め、全国の自治体や文化芸術団体と組織委員会が連携し、全国展開する文化の祭典です。2020年に向けては、東京都、政府、組織委員会がそれぞれ文化プログラムを検討しています。この三者がバラバラでやるのではなく、情報を共有し、連携し、地方自治体とも協力しながら、全国で数多くのプログラムを展開し、文化で日本全体を盛り上げることを目指します」

【東京文化プログラムの発信力強化に向けてTokyo Tokyo FESTIVALを実施します】(東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/11/24/28.html
【beyond2020 プログラム】(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/beyond2020/

「分け隔てのない社会」を目指すメッセージを伝えたい

ロンドン大会の文化プログラム「ロンドン2012カルチュラル・オリンピアード」のディレクターで「ロンドン2012フェスティバル」キュレーターを務めたルース・マッケンジーさんは、「聖火リレーと連携できなかったことを後悔している」と語ったそうです。

「今回は聖火との連携が大きな課題です。また、パラリンピックに向けては、誰もが分け隔てなく新しいことにチャレンジできる社会を実現したい――そんなメッセージの伝わるアート・プログラムを発信したいですね」

ロンドン大会では、大会エンブレムから派生したフェスティバルのロゴマークが多くの団体で使用されて全国へ拡がりを見せました。堀さんは、「今回は大会エンブレムの作者でもある野老朝雄さんにフェスティバルのロゴマークを依頼しています。相当気合いを入れて下さっていて、仕上がりが楽しみです」と語っていました。

調整につぐ調整の中で、“文化の祭典”が少しずつ形を取り始めている――そんな現場ならではの手応えが伝わってくるレクチャーでした。

次回はいよいよ、調査研究員が取り組んでいる個人研究の最終発表の模様をお伝えします。ご期待ください!

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