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美術、音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクトなど幅広いジャンルでプログラムを展開する東京文化発信プロジェクト。そこでは様々な出来事が起こり、多くの人々が関わっています。 外部ライターの吉岡が文プロの現場を見て歩き、聞いてレポートするシリーズ「今日は○▲□▼に行ってみた!」

2014/05/27

TARL「思考と技術と対話の学校」【前編】森校長インタビュー

美術、音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクトなど幅広いジャンルでプログラムを展開する東京文化発信プロジェクト。そこでは様々な出来事が起こり、多くの人々が関わっています。 外部ライターの吉岡が文プロの現場を見て歩き、聞いてレポートするシリーズ「今日は○▲□▼に行ってみた!」

今年5年目を迎える東京アートポイント計画の人材育成事業TARL(TOKYO ART RESEARCH LAB)が、アートプロジェクトの事務局を担う人たちの育成スクール「思考と技術と対話の学校」を6月より開校します。5月18日(日)は、3331 Arts Chiyoda内にある東京文化発信プロジェクトRoom302にて説明会が行われました。
*学校説明会の模様をUstreamで公開しています

東京アートポイント計画では、これまでアートプロジェクトの従事者や関心のある方を対象に公開講座や研究会を行ってきました。今年度からは「学校」という形態で新しくスタート。受講生の担任的存在となる「スクールマネージャー」と共に、一年かけてしっかりと学んでいくカリキュラムになりました。いったいどのような狙いがあるのか。東京アートポイント計画ディレクターの森司さん(前編)と運営事務局を務めるアートプロデューサーの橋本誠さん(後編)に話を伺いました。

■ アートプロジェクトの実務者に必要な素地を身につける学びの場

——— 基礎プログラムの4つの軸や、講師陣のラインアップが続々と発表されていますね。プログラムではどのようなことを学ぶことができるのですか?
初年度の基礎プログラム 1)「仕事を知る」では、現場を支える若き実務者を全国各地から講師として招き、まずはアートマネジメントに携わる基本姿勢を先輩から学びます。そして 2)「現場に出会う」や、その他の現場研修を通じてアートプロジェクトのマネジメントに求められる実務者としての基礎/感覚をつくります。さらに 3)思考を深める/想像を広げる、4)情報収集力を身につける、の座学を通じてアートプロジェクトの持つ可能性を学びます。
総勢約30名の多彩な講師陣との出会いは、とても大きな学びの経験となると考えています。

全11回の講義と課題を通じて、アートプロジェクトの現場でのふるまいや心得、アーティストや全国で展開するプロジェクトの情報など、基本として身につけておくべき素地を養います。何に価値を感じるか、気をつければよいか。そのための基礎として現場で対話するための共通言語を身につけて、ワークイメージをしっかりともっていることが重要です。

例えば、先日まで千葉県の市原市で開催されていた「いちはらアート×ミックス」のようなアートプロジェクトを観に行ったときに、鑑賞者としてすごく楽しいと思って帰ってくるのか、そこで起きている事象に対して、この試みのすごさはどこだとか、出品作家の誰がすごくて、何がすごいのかとか、ということが見て取れて、自分の中に取り込めるということは、一定レベルの学習(準備)をしていなければできないことです。

■ なりたい職業:アートマネジメントのプロ と自認できるようにする3年。

———東京アートポイント計画は今年度で6年目を迎えます。これまで培われてきたノウハウを学べる場ということでしょうか。
そうですね。これまでの5年間の事業から得た、「こういう共通認識がないとアートプロジェクトの現場で動き難いよ」っていうことをケーススタディーとして学んでもらえたらいいなと考えています。現場を動かすマネジメント力は技術なので、伝授可能という前提をもっています。もともとマネジメントスキルが高いスター的な人はいます。でも不得意に感じている人でも、一定のレベルまではマネジメントスキルを身につけることができるわけです。

これから3年間で、アートプロジェクトに関わる人たちのスキルのプロ化を目指しています。リスク管理ができ、楽しんで事に当たれるアートマネージャーの育成です。我々が、教育を通じてさまざまな職種の技術者、技能者になれるように、アートプロジェクトのマネージャーも気持ちだけで従事できるものではなく、一定の学習を経てなっていくものだということを、提示しておきたいのです。体系的に学ぶことで、自分の適正も理解でき、自分の可能性も見えてくるのではないでしょうか。

■ 行政機関とNPO団体が持続可能なプログラムを組んでいくために

——なぜ、東京アートポイント計画では人材育成に力をいれるのでしょうか。
私は、アートプロジェクトをはじめアートビジネスというか、アートのフレーム周辺の業務に関わっている人が少ないと思っています。従事者が増えれば増えるほど、その世界は拡充するから、本当にアートビジネスの従事者が増えればいいと思います。それに、2020年に東京でオリンピックが開催されることが決定して、これから文化プログラムが増えていきます。それに従事する人材は足りていないと考えています。数多くの企画を実施するには、より多くのサポートスタッフが、そしてよりワクワクするプロジェクトの為にはスキルフルなアートマネジメントチームが必要となるのです。
*参考:ネットTAMコラム 2020年オリンピック・パラリンピックに文化の祭典を

それだけではなく、少子高齢社会が進み、価値観が変わっていく中で、求められるアートプロジェクトは、変わっていくんじゃないかと思っています。社会のニーズをプロジェクトに落とし込んでいける思考をもったプロジェクトマネージャーの登場が必要なんです。

——校長の言葉でも、アートプロジェクトは、人や場を「応援する(Cheer)」ことを目的とする一方、これからは人や場を「介護する(Care)」アプローチが求められてくると話されています。講義のテーマでは、コミュニティやネットワーク、公共性の他に、障がい者やジェンダーを考える境界、共生というキーワードをあげられていますね。
アーティストを呼んで展覧会などのプログラムを実施するに留まらず、社会に目を向けて、領域横断的にジャンルをつなげながら新たに展開していくことが、我々が考えているアートプロジェクトなのです。「思考と技術と対話の学校」では、新しい課題をさぐり、その先にいくための方法論を考えられるチームを育成していきたいです。

NPOは本来自分たちがやりたいことを行う独立した組織だけれど、持続可能なプログラムを行政機関と組んだり、ある目的をもった行為をしたりするとき、好き勝手ができなくなる。行政組織や他のチームとも組んでプロジェクトを執行できる人たちを必要としています。プロジェクトが求める成果を最大限引き出せる組織づくりを考え、丁寧に組み上げていける知見を持つ人たちを現場が求めているということなんです。


Tokyo Art Research Lab「集中セミナー:運営・記録・評価のサイクルをつくる」(2013年度)

——最後に、受講生に期待すること、森さんがアートプロジェクトの現場に従事するやりがいを聞かせてください。
もっとすごい現場がみたい、新しいプロジェクトが生まれてくることを期待しています。スキルフルなスタッフがいると現場はもっと楽しくなって豊かになる。アートプロジェクトというのは、日常の中に、ある種の違う世界観のようなものを挿入していくということで、定着をはかる必要をもっていると考えています。やりっぱなしにはしない、記録し評価し価値化して、更新していくものです。ふるまいとしてはイベントに見えがちで「アートプロジェクトをやっている」ってことがなかなか通じにくい。出現しにくいわけですよ。希少動物だからすぐ隠れる(笑)。それを見えるようにするための努力の過程が醍醐味かな。そんな仕事に取り組んでもらえる人たちと出会えたら良いなと思っています。

——森校長、ありがとうございました!

後編では、スクールマネージャーの一人であり、運営事務局を務める橋本誠さんに、アートプロデューサーとして現場に携わってきた経験を振り返りながらお話を伺いたいと思います。
» 後編はこちら

なお、5月18日(日)に開催された学校説明会の模様はUstreamでご覧いただけます。
http://www.ustream.tv/recorded/47706131

【受講生募集中】
思考と技術と対話の学校
締切は6月1日(日)。詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.tarl.jp/cat_lesson/313.html

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