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アーツカウンシル東京ブログ

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東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2019/01/25

「ひらく、出てくる」―プログラムオフィサー1年目日記(4)

“平成最後の…”というフレーズをよく耳にした、この年末年始。
終わりなのだか始まりなのだかわからない、不思議な感覚に陥りながら新年を迎えました。

そんな新年ムードも落ち着き、鏡開きも終わり。
今回はその“鏡開き”にちなみ、「ひらく」ということばについて考えてみたいと思います。

このことばとの最初の出会いは、以前このブログにも書いたTokyo Art Research Lab 思考と技術と対話の学校「東京プロジェクトスタディ」のチラシをつくっているときでした。
「人」や「町」「街」といったことばを、「ひと」や「まち」といった表記に統一するように「ひらく」、つまり漢字表記をひらがな表記にすることです。

印刷や出版に関わる方などにはなじみのある用語なのかもしれませんが、「漢字をひらがなに変換する」のを「ひらく」と呼ぶことを初めて知り、とても新鮮でした。

さて、この「ひらく」とはまた違う意味で、東京アートポイント計画やTokyo Art Research Lab を企画運営・実施していくプロセスにおいて、「ひらく」ことがたびたび求められます。

打合せや企画会議などで、やりたいことや伝えたいこと、がうまく言語化できないときに、「もう少しひらかないと伝わらないかも」「もっとひらいて」…などと声がかかります。

このことばが面白いなと思うのは、単に「説明する」、はたまた「シンプルにして分かりやすくする」とはニュアンスが異なることです。
どちらかというと“展開”といったイメージに近いのかもしれません。
まだ表面に出てきていない何かがそこにはあることを見越したうえで、重層的な、物事の核心や深みの部分へ手を伸ばさなければいけないような印象があります。

例えば、Tokyo Art Research Lab 思考と技術と対話の学校で実施している「ディスカッション」のテーマや概要テキストを練っていたとき、「ひらく」が使われました。
「ディスカッション」は、アートプロジェクトに近しかったり、必要とされたりしている分野のゲストを招いて対話するトークシリーズです。プログラムオフィサーが「今、話を聞いておきたい人/テーマ」を設定し、これからの実践を立ち上げるための新たな視座を探っています。

筆者が担当した回は、「アジアで移動、接続、越境すること」をテーマに、近年盛んになっているアジアのアートについて、実践者の話をお聞きしました。「アジア」という広いテーマに切りこむ入口には、アートだけではなくいろいろな実践者の方がいらっしゃいます。なぜ、そのなかでアートプロジェクトの実践者に話を聞きたいのか、というところについて、うまくその必然性を伝えられませんでした。それを打破すべく目指すポイントが見えなくなることもしばしば。そのように思考が迷子になっているとき、「そのあたりを、もう少しひらいてみたら?」などと言われることがありました。そこで、実践者の話から情報の解像度を改めて上げること、その姿勢をアートプロジェクトの現場でも生かすことを目指したいということを確認しました。

▲第3回のディスカッションの様子。ゲスト:居原田遥(インディペンデントキュレーター/コーディネーター/右)、堀内奈穂子(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]キュレーター/中)、モデレーター:筆者/左)

「もっとひらいて」。このことばを聞くと、うまく言語化することが求められているのと同時に、もしくはそれ以上に、「ひらかれ」た先に現れる核心や軸など、何か強いものを持つ必要性を感じさせられます。
今、言語化できていることの奥が空っぽでは、「説明」することはできても「ひらく」ことはできないのではないかと。

言語化できていない部分を「ひらく」、漢字を「ひらく」。全く文脈としては異なる使われ方だと思うのですが、核心部分に近づくために「ひらく」という行為と、細分化された意味合いが付随してしまっている漢字から、それらを含めた様々な根源的な意味を内包しているひらがなへ変換することは、奇しくもどこか似ているような気がしたりもします。

ことばは使い慣れているうちに、その根源を意識することが減ってくるはず。いつか、「ひと」や「まち」も「ひらか」ないといけないときがくるのかもしれないな、なんて思ったりもします。

普段使っていることばだけではなく、考えやイメージも、いつでもひらくことができるように、ひらかれても耐えうるようにしておきたいと思います。

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