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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2019/09/03

風に乗れる羽をつくる―Artpoint Letterより

東京アートポイント計画では、毎月1回メールニュース「Artpoint Letter」を配信しています。
2019年8月号のメールニュースより、プログラムオフィサー・岡野恵未子の記事をご紹介します。


まだまだ暑い日が続いているとはいえ、秋の気配が見え始めてきます。
そう、「とんぼ」が季語になる季節が近づいてきました。

ところで、とんぼの羽は平らではないそうです。
よくよく見ると、羽の表面には細かい凸凹がついているらしい。

その凸凹によって、羽で受ける空気の流れが乱れ、そして羽の表面に小さな空気の渦が生まれることで、とんぼは風に乗ることができるらしいのです。

そんな話を聞いたとき、「ああ、なんだか、アートプロジェクトが動いているときみたいだ」と思いました。

プロジェクトをつくっていく、もしくは伝えていくことで難しいポイントのひとつは、何を活動の軸とみなし、それに沿ってどう情報や活動のメリハリをつけるか、だと思います。

ただのっぺりと「やる」だけでも、何かが足りなくてもいけない。あのとんぼの羽のように、然るべきバランスで活動のメリハリがかたちづくられていれば、うまく風に乗る準備ができるはずです。


東京アートポイント計画「発信事業」の一環で展開する企画「Artpoint Meeting #08 -10年の“こだわり”を浴びる」の様子。単発のトークイベントではなく、次へつながる出会いの場となるような設計を試みています。

例えば、このメールニュースの発行は、「発信事業」という枠組みの一環として行っています。

個々のプロジェクトやプログラムを知ってもらうことはもちろん、東京アートポイント計画事業全体の取り組みを、メールニュースやウェブコンテンツ、イベント、フリーペーパーなどを通じて多くの人に届けるため、議論や挑戦を重ねています。

発信事業での「とんぼ」の身体は、東京アートポイント計画全体。「小さな営みを大事にする」というメッセージを軸とし、各プロジェクトのニュースや取り組みが、羽の凸凹をつくっていきます。

そんな発信事業では、今年、「ニュースを見つける」ことにチャレンジ中。年間を通して活動、中間支援を行っている東京アートポイント計画のなかから、外部視点で価値ある「ニュース」を切り出すのはなかなか難しい。

日常のなかに埋もれている大事なトピックを引き上げたり、ときにはわかりやすい活動を少し抑えて、隠れてしまっている情報を引き上げたりすることも必要です。そうやって、風にのりやすい羽をつくっていくのです。

個々の現場でも悩みは同じ。この情報は出すべきか、出さないべきか。出すとしたらどんなかたちで出すべきか。誰に向けて、どう伝えるべきか、どこまで伝えるべきか。ある出来事は「起きた」のか、「起きる」のか、「起こしたい」のか。

現場との対話からキャッチする情報の解像度を上げ、常に羽のかたちを調整する必要があります。

なかなか難しいことではありますが、もし一つでも凸凹を間違ったら、風に乗れないかもしれない。ふらふらと地面に落ちてしまうかもしれない。そんな緊張感を持ち、気を引き締めなければと思う今日この頃です。

*東京アートポイント計画からのご案内

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