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東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2020/01/23

表現することは「わたし」の生活をどう変える?(Artpoint Meeting #09 企画の舞台裏)

2020年2月9日、「生きやすさの回路をひらく」と題し、東京アートポイント計画のトークイベント「Artpoint Meeting」を開催します(>イベント詳細)。

テーマに込めた意味とは。そして、ゲストとしてお招きする孫大輔さん(家庭医、谷根千まちばの健康プロジェクト「まちけん」代表)の活動とは。トーク企画の舞台裏をお届けします。


「まちけん」の部活動で落語の公開練習をしている孫さん。「まちけん」はまちの人とともにさまざまな表現活動やコミュニケーションプロジェクトを展開している。

■ 2019年の歳末。忘年会での移住宣言

「プロジェクトを通して、もっとも人生が変わったのは僕です」

2019年の歳末。下町で開かれたとある忘年会の席でのこと。

孫大輔さんがぽつりぽつりと話すその瞬間に、東京アートポイント計画の企画チームは立ち会っていました。

「春になったら、東京を離れて鳥取に行きます。僕自身の興味が広がって、そこでやってみたいことができたんです」

集まった20人余りの「まちけん」関係者は、突然の発表に驚き、笑い、そして拍手。

その日、医師であり、「まちけん」代表でもある孫さんは、移住することを仲間に宣言したのでした。そして、東京における「まちけん」の活動は仲間たちが引き継ぐことになりました。

「なんだか大切な日にお邪魔しちゃいましたね。でも、今日来れてよかった」

忘年会の帰り道、わたしたち企画チームの3人は、「いい現場に出会った」実感を得ていました。

孫さんをゲストとしてお招きして、お話しいただこうと思っていたトーク企画のテーマは「生きやすさの回路をひらく」。まちなかでのプロジェクトを通し、関わる人々の心境や人生に起こる変化を見つめてみようという趣旨です。

プロジェクトの創設者であり、旗振り役である孫さん自身がプロジェクトを通して新しい人生を切り開き、それをメンバーと共有した……まさにテーマにぴったりの場に居合わせてしまったのです。

「じゃあ、逆に東京アートポイント計画のアートプロジェクトではどんなことが起きているんだろう? 関わる人の生活にどんな変化が起きているのか、ちゃんと意見交換できる場にしないといけませんね」

「がんばろう」

わたしたちは、ひとつの宿題を抱えて帰途につきました。

■ 映画も落語も演劇もみんなで取り組む「まちけん」。旗振りは家庭医の孫さん。

そもそも、孫さんに出会ったのは、アーティストで文化活動家のアサダワタルさんからのご紹介でした。

事業10周年を迎えた東京アートポイント計画を、他分野の視点で眺めてみたい。特に医療やケアの分野でユニークな実践をされている方にお会いできないだろうか。

そんな風にArtpoint Meetingの企画を考えていたとき、別のプロジェクトでアサダさんが孫さんのお名前をあげていたことを思い出したのです。

臓器や細胞という解剖的視点だけでなく、家族・地域・社会の視点からも人々の健康に寄り添う「家庭医」。

そのプロフェッショナルとして活躍されている孫さんは、病院や大学でのお仕事のほか、まちに出てさまざまなプロジェクトも展開しています。

それが2017年にスタートした楽しく健康(ウェルビーイング)を高めるプロジェクト「谷根千まちばの健康プロジェクト」。通称「まちけん」です。まちの人たちで集まり、屋台をひいて場をつくり、さまざまな人と対話する。映画づくりや落語の公演までやってみる。

表現を通して異なる人と人が対話をしするというこのプロジェクトを知ったとき、東京アートポイント計画チームは親しさを(勝手ながら)抱きました。

分野は違っても、めざすところはわたしたちが展開している「アートプロジェクト」と同じかも知れないーー。


谷根千まちばの健康プロジェクト「まちけん」のウェブサイト。東京の谷根千(谷中・根津・千駄木)エリアの人々が集まり、「地域の健康」をテーマにさまざまな活動を展開している。

「いま、演劇に興味があるんです。僕も出演しますよ。まちけんで劇団をやってみようと思って! あと同じ月に落語の発表会もやります」

初めてお会いした際、孫さんがにこっと笑っておっしゃったのがこんな一言でした。

なんて活動的……! どんどん新しい表現分野に挑戦していく孫さんと「まちけん」の活動にわたしたちはますます強い関心をいだきました。

そうして、Artpoint Meetingにお招きするだけでなく、冒頭でご紹介した忘年会のような「まちけん」の現場にもお邪魔させていただくことになったのです。


「まちけん」忘年会の記念写真。「はじめまして」の人にも柔らかく開いているコミュニティ。東京アートポイント計画チームも混ぜていただきました。

■ まちなかのプロジェクトは「生きやすさ」にどう関わるのか?

今回のArtpoint Meetingでは、そんなユニークな「まちけん」や、孫さんの考え方がどんなきっかけで生まれ、育っているのかを伺う予定です。そして同時に、東京アートポイント計画として、アートプロジェクトの社会的な価値も改めて見つめ直したいと考えています。

「まちけん」も東京アートポイント計画のアートプロジェクトも、老若男女さまざまな人が参加し、一緒になにかをつくること、表現することをまちなかで展開しています。

「健康」と「文化」。出発地点は異なるものの、活動はとても似ている。ふたつの間には違いがあるのか、それともないのか。「健康」にとって「文化」は、「文化」にとって「健康」はどんな関係があるのか。

特に東京アートポイント計画は、事業10年を記念する書籍『これからの文化を「10年単位」で語るために ― 東京アートポイント計画 2009-2018 ―』で、「“折に触れて手伝う人”が現場を豊かにしている」「時間をかけて強弱のあるネットワークを築いている」といった特徴をみずからの活動の中に見出しました。

その手応えをもう一歩踏み込んで見つめ、これからの社会における「健やかさ」「生きやすさ」について孫さんと一緒に考えてみたいと思います。

トークは2020年2月9日開催。アートプロジェクトや医療/健康についてはもちろん、まちづくりや地域活動、コミュニティ形成などに関心のある方にもぜひお越しいただきたいです。

「まちけん」やアートプロジェクトなど、参加型の地域活動が「豊かだ」と感じる瞬間の根っこを見つめ、続けていくためのヒントを得られるような場になれば幸いです。


■イベント情報

東京アートポイント計画 Artpoint Meeting #09 – 生きやすさの回路をひらく –

日時:2020年2月9日(日)14:00〜16:30(13:30開場)
会場:TOT STUDIO(THINK OF THINGS 2F/東京都渋谷区千駄ヶ谷3-62-1)
*JR原宿駅竹下口より徒歩3分
参加費:無料
定員:50名(要事前申込)
出演:孫大輔さん(家庭医、谷根千まちばの健康プロジェクト「まちけん」代表)、佐藤李青(アーツカウンシル東京)、嘉原妙(アーツカウンシル東京)
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

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*関連リンク

谷根千まちばの健康プロジェクト「まちけん」

*東京アートポイント計画からのご案内

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