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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2021/02/18

アーツアカデミー2020 第4回レポート:これからの活動のためのファンドレイジング力を磨く ~ファンドレイジングの理解と実践~[講師:若林朋子]

第4回は「これからの活動のためのファンドレイジング力を磨く ~ファンドレイジングの理解と実践~」と題し、アーツアカデミーのアドバイザー、ファシリテーターとして毎回受講生を明るく導いてくださっている若林朋子(わかばやし ともこ)さんが講師となり、受講生共通の悩みの種であるファンドレイジング=資金調達について学ぶ回となりました。

講師の若林朋子さんと講座の様子

活動に必要な資金の計画をするとき、すぐに助成金申請を考えてしまうかもしれませんが、その前にやることがあると若林さんは言います。それは、自分(団体)の総資産の把握、活動内容や支出の見直し、なぜ助成金が必要なのかを考えることです。つまり、自分(団体)の財政状況をきちんと把握をしたうえで、助成金が最善の方法か検証することが必要とのこと。なんとなく助成金を調べて、申請書を書いて送るということが習慣となっている人は、少し痛いところをつかれたのではないでしょうか。

具体的には、自分(団体、プロジェクト)に必要な費用をいくらに設定し、その費用を分解し吟味すること、どこからの収入をどこに割り当てるかを計画します。例えば1年間に必要な費用に対して、いくらの収入(仕事)を年間何本実施するか、もしくは支出を下げることはできないのかなど、1つ1つ分解し検討することで必要な金額やとるべき手段が見えてきます。
また、アート業界では発注側が依頼先に見積を取る習慣もなければ、契約書も結ばない、事前に報酬を提示しないというケースもあり、コロナ禍でそうした課題に注目が集まっている今こそ、アート業界の悪しき商習慣を変え始めるチャンスであるというお話も印象的でした。自身の活動の社会的尺度として、他者に提示できる単価を自ら設定することで、業界外への道も開いていけると感じました。

支出を抑えるためにできる方法はあるか分解して見直す

とはいえ、必要な資金をどのように調達していくかを考えることは重要です。そのときに芸術文化以外の分野にも目を向けると様々な可能性があります。芸術以外の助成制度を活用することや、非資金支援(お金ではない支援)の紹介もありました。
助成金申請が通っても、実はその助成金の使える範囲が限定的で使えないというケースも少なくありません。申請前にその助成金の目的や特徴、対象費目を把握することが大切です。また支援の種類は、助成、協賛、寄付、事業委託、補助、融資、出資という形式があり、それぞれ(1)責任の所在、(2)成果の帰属、(3)税の処理が違います。こうしたことを意識しながら資金調達に取り組むと良いでしょう。

4種類の財源について

また、財源を4つに分類して考える財源のマッピングについて学びました。(1)外発的財源、(2)内発的財源、(3)支援性財源、(4)対価性財源の4つに分かれる財源マップのどの位置に自分(団体)の財源が多く集まるのか現状を把握し、目標をたてて資金源のポートフォリオを作るとより資金調達がしやすくなります。また、定期的な収入と使途自由度の高い内発的財源が確保できると活動しやすいとのこと。そこで、どんな財源がありえるか実際に考えてみるために「財源100本ノック」というアイデアを出し合うグループワークが行われました。受講生からは、「ふるさと納税」や「能楽堂に宿泊する」、「認定講師制度」、「チケットへの付加価値をつける」というような様々なアイデアが出ました。なかなかアイデアが浮かばないといった時も、活動の悩みを共有することで、そこから発想が生まれたり、新しいアイデアが浮かんでくるというグループワークならではの時間となりました。
こうした、資金源開拓(ファンドディベロップメント)という発想がとても重要とのこと。芸術文化の分野だけで助成金のパイを取り合うのではなく、芸術文化以外の領域の資金にも注目して、パイそのものを広げること、資金調達ではなく資金源の開拓をしていくことで、活動の可能性もどんどん広がっていきます。

今までの3回の講座でもでてきましたが、思いを伝えるための言語化の大切さが強調されました。資金調達のときの説明に必要なことはもちろん、言語化することで資金を集めるアプローチも明確になります。行政の助成金ではなく、企業が募集しているものが合うかもしれません。もしくは、助成金という手段は今回のプロジェクトに合わないという結論になるかもしれません。やみくもに助成金申請をするというのではなく、財源を分解したり、活動を始めた思いに立ち戻ることが近道になるかもしれません。資金調達の発想を転換することで、より自由に活動を捉えられることを体感できた回でした。


講師プロフィール
若林朋子(わかばやし ともこ)

プロジェクト・コーディネーター/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授
デザイン会社勤務を経て、英国で文化政策とアートマネジメントを学ぶ。1999~2013年(公社)企業メセナ協議会勤務。プログラム・オフィサーとして企業が行う文化活動の推進と芸術支援の環境整備に従事(ネットTAMの企画・運営等)。2013年よりフリー。事業コーディネート、執筆、編集、調査研究、評価、自治体の文化政策やNPOの運営支援等に取り組む。NPO法人理事・監事(8団体)、アートによる復興支援ARTS for HOPE運営委員、助成審査委員、自治体の文化振興計画等策定委員など。2016年より立教大学大学院特任教員。社会デザインの領域で文化、アートの可能性を探る。

執筆:アーツアカデミー広報担当 山崎奈玲子(やまざき・なおこ)
運営:特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)

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