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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術や音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクト、シンポジウムなど様々なプログラムのレポートをお届けします。

2023/09/13

思う存分、創作活動に専念。アーティストのための創作スペース「START Box ササハタハツ」とは

東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京は、2023年より若手アーティストの継続的な活動支援を目的とした事業「START Box」を本格始動し、4月に渋谷区笹塚と同区幡ヶ谷のそれぞれに、若手アーティストのための創作活動スペース「START Box ササハタハツ」をオープンしました。

これに続き11月には、グループでも利用可能な広さの新たな創作スペース「START Box お台場」のオープンも予定しています(現在、利用者募集中)。
今回は、そんな「START Box」の魅力をご紹介するべく、アーツカウンシル東京 企画部 連携担当の髙木絢子課長にどんなスペースなのかを詳しく教えてもらうとともに、実際に利用している3名のアーティストに使い心地なども聞いてみました。

創作スペースであり、誰もがアートに身近に触れられる場所に

──「START Box」が生まれた背景を教えてください。
髙木絢子(以下「髙木」):アーツカウンシル東京では、東京の芸術文化の魅力向上を目指して多様な事業を展開しています。若手アーティストの支援も積極的に行っており、「START Box」事業もそのひとつです。現在、若手アーティストの方々の多くは、アート活動だけの収入で生きていくのがまだ難しく、仕事と両立しながら自宅で創作に取り組んでいます。そのようななかで、「創作スペースが欲しいけど、都心は家賃が高くて難しい」という声がたびたび寄せられていました。そこで、東京都と共に都営住宅の空き店舗を活用した作品づくりのための創作スペース「START Box ササハタハツ」を開設し、若手アーティストを対象に利用しやすい料金で貸し出しています。

──現在2期目のアーティストが利用されています。1期目の反応はいかがでしたか。
髙木:本格的な事業実施に先立って、港区六本木に期間限定で「START Box Roppongi」を試行的にオープンしたところ、短い期間にもかかわらず、定員を超える応募があり、想像以上に反応があったことに驚きました。一方で、こうした創作スペースのニーズを実感する場面でもありました。アート感度の高い六本木という土地柄もあっての高い応募率かと思いましたが、「START Box ササハタハツ」1期目の募集でも、近所にお住まいだったり、仕事場が近かったりするアーティストの方をはじめ、「Roppongi」を超えるたくさんの応募がありました。実際にご利用いただいたところ、アーティストの方々にも満足いただくことができたようでうれしく思っています。
*「START Box ササハタハツ」第3期、第4期の募集は現在終了しています。

──「START Box ササハタハツ」の各スペースの面積や、利用可能期間、料金も教えてください。
髙木:笹塚は「約17㎡(約10.5畳)」、幡ヶ谷は「約15㎡(約9畳)」です。どちらもほどよくコンパクトなスペース(個室)で創作に集中しやすいと思います。2023年下半期(第3期、第4期)については、利用可能期間は「80日間の短期」と「165日間の長期」のどちらか、料金は、笹塚は「短期¥44,800/長期¥92,400」、幡ヶ谷は「短期¥39,200/長期¥80,850」があり、自分に合ったプランを選ぶことができます。1日当たりに換算すると、笹塚は「¥560/1日」、幡ヶ谷は「¥490/1日」となり、利用しやすい料金ということがよりご理解いただけると思います。

──利用アーティスト同士の「交流会」もあると聞きました。
髙木:スペースを利用するだけでなく、交流会で様々なアーティストの方と知り合っていただき、お互い受けた刺激を作品づくりに活かして欲しいと考えています。また、アーティストの創作スペースを一般の方に自由にご覧いただき、在室するアーティストと交流もできる「オープンアトリエ」というイベントも定期的に開催しています。誰もがアートを身近に感じられる機会であるとともに、アーティストにとっては一般の方とのコミュニケーションを通してモチベーションのアップや創作のヒントにつながればと思っています。

──今後の展望を教えてください。
髙木:「ササハタハツ」に続いて11月にオープンする「START Box お台場」は、「約57㎡(約35畳)」の広々としたスペースで、グループで活動されているアーティストの方や、数人でシェアしたい方にもおすすめです。こちらの利用可能期間・料金は、「137日間 ¥163,030」で、1日当たりに換算すると「¥1,190/1日」となります。
今後も引き続き、創作環境の提供を通して若手アーティストの方々の活動支援に貢献できればと思っています。また、利用いただいた方々の率直なご意見やご要望などを聞かせていただき、それらを活かしより良いスペースづくりを目指します。さらに今、利用アーティストの方々の作品を発表する機会を計画しています。創作スペースを貸し出すだけではなく、その先に展開できる事業へと拡げていきたいと思っています。
*10月5日(木)まで「START Box お台場」の利用希望アーティスト募集を行っています。


User’s Voice―利用アーティストの声

生活と切り離した場所で、作品づくりに集中できる

活動を始めてからこれまでずっと自宅で創作していました。生活と創作の場を切り離したいと思っていたときに、ちょうどSNSで広告を見て「ササハタハツ」を知りました。望んでいたものの、いざ利用し始めたら、周辺環境も含めて自宅とまるで違う場所になかなか馴染めなくて(笑)、自宅と同じ養生を床に敷いたり、木材で柱を立てたりとセルフカスタマイズしました。そんなゆるいDIYも楽しくて、今は心地よい空間に。作品づくりに集中する日々です。

西村祐美 さん
福岡県生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。Web制作会社、映像制作会社勤務経験がアナログへの回帰につながる。独学で染織を学び、あえてアナログ手法にこだわった作品づくりを行う。


作品を俯瞰して見られる場所が欲しかった

「ササハタハツ」は友人が教えてくれて即、応募しました。以前から、ある程度の広さがあって自分の作品を俯瞰できる創作スペースを探していたので。駅から通いやすい距離ですし、良心的な料金設定で「ここだ!」と。交流会ではそれぞれのアーティストの創作活動や作品へのさまざまな想いを聞くことができて、とても有意義で楽しかったです。欲を言えば、利用時間がもう少し延びるとうれしいです(笑)。
※「ササハタハツ」利用時間:9:00~21:00

澁木智宏 さん
北海道小樽市出身。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。日常の暮らしの中で、個々に記号として認識されているものごとを、連続性・集合性・一体性の観点から捉えなおした作品づくりを行う。


都内でこんなに利用しやすいスペースはない

大きな作品を描いてみたくなったときに、5.5畳の自宅が手狭でこうした広さのあるスペースを求めていました。以前、アーティスト・イン・レジデンスに参加したことがあり、さまざまな交流が作品づくりにいい影響をもたらしてくれて、この「ササハタハツ」の交流会やオープンアトリエというプログラムにも魅力を感じて応募しました。都内でこの料金、しかも個室。平面作品なのでここに釘打ち可能な壁があるとより最高です!
※アーティスト・イン・レジデンス=アーティストが一定期間ある場所に滞在して、制作活動を行うプログラム。

天草ミオ さん
埼玉県生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻修了。透明なフィルム紙の裏側から描く、レイヤーが逆転したペインティングが特徴。“視線” や“見られるもの”、“内と外のあいだ” をキーワードに記憶や物語、歴史を重ねあわせた作品づくりを行う。



「START Box」
●2023年11月6日(月)「START Box お台場」オープン
利用希望アーティスト(第1期)を募集中

※10月5日(木)応募締切
詳細はこちら
●2023年9月16日(土)「START Box ササハタハツ」オープンアトリエ開催
※入場無料
詳細はこちら
運営:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
事業ページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/support/activity/hub-formation/57718/


撮影:二瓶剛(SETENV)
取材・文:横山史絵(鐵五郎企画)

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