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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

文化の力・東京会議2012

東京都および東京文化発信プロジェクト室では、平成24年秋に開催予定の東京クリエイティブ・ウィークス期間中、10月19日(金)-10月20日(土)に国際会議「文化の力・東京会議」を昨年に引き続き開催します。
このブログでは、10月20日に開催される「文化の力・東京会議」の本会議に先立ち、10月19日に開催予定の分科会の事前準備会についてレポートします。

2012/10/04

国際会議「文化の力・東京会議」 第三分科会 準備会 第二回(9月6日)レポート

第三分準備会第二回が開催されました。今回はアラブ地域のネットワーク作りの活動についてご紹介されました。(前回の議論はこちらをご参照ください。)

議題
・ 西洋近代化モデルと一線を画すネットワークとは(アラブ地域、アジア地域を例に)
・ アイデンティティとネットワーク作りについて
・ モビリティとネットワーク作りについて

主な出席者
・モデレーターの久野敦子氏(セゾン文化財団)
・丸岡ひろみ氏(PARC-国際舞台芸術交流センター)
・東京都歴史文化財団 東京文化発信プロジェクト室関係者
・国際交流基金関係者 

久 野「今回は19日の分科会と、20日のパネル・ディスカッションでお話しいただくカディジャ・エル・ベナウイさんについて、ご紹介します。彼女はセゾン文 化財団のヴィジティング・フェロープログラムのために来日中で、アート・ムーブス・アフリカで活動されています。私たちがアラブ地域のことをほとんど知ら ないので、まず、世界地図を出して、地域的なことからお話を頂きました。

アラブ世界は大きく分けて西側と東側に分けられます。西側の方、 日が沈むという意味でマグレブと呼ばれます。カディジャさんの出身地であるモロッコなどフランス語をしゃべる、フランスのかつて植民地だったところです。 もう一つは東側でマシュレブと呼ばれ、イギリスの植民地だったところです。距離的にも離れていますが、アラビア語が二つの地域を結びつけているということ を忘れてはいけないとおっしゃっていました。

アラブ地域の中には大きく4つのネットワークがあるそうです。一つは国のネットワーク、つま りオフィシャルな外交的なネットワーク、これは政府の方針や政策によって決められた形で進んでいるネットワークです。二つ目はコマーシャルなネットワー ク。商業的なものに政治や経済的が大きく関与しています。三つ目は海外の文化機関によるネットワーク。例えば国際交流基金のカイロ事務所、ドイツ文化セン ター、ブリティッシュ・カウンシル、アンスティチュ・フランセなどです。四つ目はインディペンデントな機関によるネットワークで、一番私たちと関係が深い ネットワークです。まだ、2つ3つくらいしかなくて非常に数が少ないそうです。しかしながら、それぞれが現代文化、現代アートというものを奨励するために 設立されていて、政府とか外交とは別のルートで、地域の問題にアートが関わることを重視しながら地域と一緒に活動をしているというところが特徴です。

カ ディジャさんが活動されている、アート・ムーヴス・アフリカは、アラブもアフリカという同じ地域の一部であるという認識を作ることを目的としているそうで す。また、アフリカでは国の間を移動するのがコスト的にも手続き的にも非常に難しいので、まずアーティストがアフリカ国内を知るために資金提供をするそう です。モビリティ、つまりアーティストの移動を援助しているわけです。

彼女は主に音楽とダンスが専門のジャンルなのですが、アラブでは音楽やダンスのフェスティバルがとても盛んだそうです。

また現在問題になっているのは、アラブの春以降の動きです。非常に民主化が進んだかのように海外では報道されていますが、実際には選挙で宗教色が非常に強いリーダーが当選したりしています。それにより、かえって表現の自由が制限されてしまう一面も出ているそうです。」


(左:丸岡ひろみ、右:久野敦子)

丸岡 「アラブの春というものを経て、アイデンティティの問題をどう捉えてらっしゃるのでしょうか。 大雑把過ぎるかもしれませんが、世界は概ねその近代化を、民主主義を前提とした西洋近代合理主義をモデルとしてきました。また、個人主義もその近代化の過 程で多かれ少なかれセットで取り込んでいます。そのように一様な近代化のモデルを各地が追う事で、それまで個々にあったオリジナリティは失われる傾向にあ るとして、オリジナリティやアイデンティティを守ろうとしているのか、しているとしたら、そのことと民主化の両立をどのように進めているのか、進めようと しているのかに興味があります。」

久野「アラブの国々にとって旧植民地のヨーロッパの国々の影響力というのは、実際にはまだ非常に強いも のがあって、現在では、経済的な結び付きを求めて、国際交流ネットワークを進めていこうとしているようです。それに対する複雑な思いはあるようです。共有 している部分もあるけれども、様々なレベルで、確執、摩擦がある。どうやって自分の存在を認めさせるかということはまだまだ問題だそうです。」

丸岡「一言では片付かない問題と、ネットワークの重要性がどう関係しているのか。そういう話も伺いたいですね。」

久野「はい。ぜひ、伺ってみましょう。カディジャさんには今お話したようなアート・ムーヴス・アフリカとヤング・アラブ・シアター・ファンドについて伺い、それからシンガポールのテイ・トンさんにはアーティスト・ネットワーク・アジアを紹介してもらおうと思っています。

実際にネットワークを運営なさっている方々から国内のネットワークを作るということと、海外と繋げていくことの難しさを伺いたいと思います。

また、ネットワーク組織を作る以外の国際社会と繋がっていく仕組み、方法、場についてお話しいただこうと思っています。そこからネットワークの社会的役割、継続する活動方法について話し合いたいです。」

今 回はカディジャさんの活動をご紹介いただきながら、アラブ社会のネットワーク作りについてご紹介いただきました。会議当日はさらに、詳しくネットワークの 実情について伺います。さらにアジアでのネットワークについても伺い、西洋モデルとは異なる様々な実践について伺うことは、日本と世界のネットワーク作り にも大いに参考になるのではないでしょうか。


(最後に挨拶にいらしたカディジャ・エル・ベナウイ氏)

(文:国際会議分科会担当 熊谷薫)

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