アーツカウンシル東京の事業

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アート&メディア・ダイアローグ
第1回「アジア型カルチュラル・レジスタンス」
第2回「地球規模のエコロジーから再考する人間社会」

2020年に世界中に広がった新型コロナウイルスは、人々の暮らしを一変させました。大都市はウイルスに対する脆弱さを露わにし、人々は直接的な接触を避けて暮らさなくてはいけなくなりました。テクノロジーはこれまで以上に欠かせないものとなり、私たちの視点や思考、行動に変革を迫り、さまざまな概念をも変えていきつつあります。社会への問いを投じてきたアートもまた、技術革新の影響を受けながら、依然として課題となっている格差社会や人々の分断、自然破壊などに切り込んでいます。

「アート&メディア・ダイアローグ」では、テクノロジーの進化と社会の変化に呼応し、デジタル技術を用いて現代社会の課題に向き合うアーティストやキュレーター、編集者をゲストスピーカーに迎えて話を聞くとともに、ダイアローグには日本からもゲストに加わっていただき、私たちひとりひとりがこれからの社会を創る自覚的な実践者となる方法をオンライン・ダイアローグ形式で探ります。

※同時通訳(日本語/英語)

企画:山峰潤也(一般財団法人東京アートアクセラレーション)、塚田有那(一般社団法人Whole Universe)
企画協力:清恵子

開催日程およびタイムテーブル

第1回:3月6日(土) 18:00〜20:30終了予定
第2回:3月7日(日) 18:00〜20:30終了予定

イントロダクション
18:00~18:05 ごあいさつ
18:05~18:10 モデレーター
プレゼンテーション
18:10~18:55 ゲストスピーカー
(休憩10分 18:55~19:05)
ダイアローグ
19:05~20:20 ゲストスピーカー、ゲスト、モデレーター
質疑応答
20:20~20:30 ゲストスピーカー、ゲスト、オーディエンス

テーマおよびゲストスピーカー

第1回「アジア型カルチュラル・レジスタンス」

ゲストスピーカー
エリック・シウ(アーティスト/“Be Water”)
アーティット・スリヤウォンクン(AI倫理、データガバナンス・リサーチャー/Thai Netizen Network)
ゲスト
清水知子(文化理論、メディア文化論/筑波大学人文社会系 准教授)
モデレーター
山峰潤也(キュレーター、一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表、ANB Tokyoディレクター)
塚田有那(編集者、キュレーター、一般社団法人Whole Universe代表理事)
グラフィックレコーダー
清水淳子

2020年、アジアでは民主主義に関する大きな出来事が起こった。香港では中国政府による国家安全法の制定、タイでは軍事政権による独裁や王室制度の腐敗、それぞれの国では、こうした自由を脅かす状況に対して、未来へと続く民主主義の確立を求める学生が中心となって大規模なデモが行われた。しかし、これらの活動はテクノロジーやポップカルチャーを巧みに用いて連帯を高め、時にウィットに富んだ方法で抵抗を重ねていく。本質的に目指すことは闘争自体ではなく、その先にある自由であり、運動は抗議である。大きな力に対して、知恵を出し合い、次々と新たなアイデアを出しながら、未来に向かって重ねられてきた活動を知る海外からのゲストに、アートとテクノロジー、社会状況やデジタル・コミュニティといった視点から話を聞く。
中心を持たない水のような流動性を持った香港のデジタルアクティビズムを総称する、「Be Water」(*1)に詳しいエリック・シウと、台湾・香港・タイのプロテスターが、連帯するミルクティー同盟(*2)や、ポップカルチャーとネットカルチャーを横断しながら大きくうねるタイのデモなど、インターネット・ミーム・アクティビズムに詳しい「Thai Netizen Network」のアーティット・スリヤウォンクンが登壇する。対して、ダイアローグでは日本のリアルな現状を識る、メディア文化論と並行してアート領域にも食い込んだ深い論考が秀逸な清水知子氏を迎え対話する。

*1 2020年、PRIXアルスエレクトロニカのデジタル・コミュニティ部門でゴールデン・ニカ(グランプリ)を受賞。
*2 中国に隣接する、お茶にミルクを入れる文化をもつ国の若いアクティビストの間でゆるやかに広がるアライアンス。ミルクティーが一種のインターネット・ミームとなって、カルチュラル・レジスタンスの手段が伝播していっている。

第2回「地球規模のエコロジーから再考する人間社会」

ゲストスピーカー
マーティン・ギナール=テリン(インデペンデント・キュレーター/Luma Foundation)
ピーター・ステフェンセン(編集長/PLETHORA MAGAZINE)
ゲスト
長谷川愛(アーティスト、デザイナー)
川崎和也(スペキュラティヴ・ファッションデザイナー、デザイン・リサーチャー、Synflux主宰)
砂山太一(建築家、アーティスト、sunayamastudio主宰)
モデレーター
山峰潤也(キュレーター、一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表、ANB Tokyoディレクター)
塚田有那(編集者、キュレーター、一般社団法人Whole Universe代表理事)
グラフィックレコーダー
清水淳子

新型コロナウイルスがもたらした状況は、現在の社会システムを揺るがし、近代以降の発達史観を否定し、都市を築き自然から分断を計った人間たちが、改めて地球という環境のなかで、他の生物たちと共存している一部であることを改めて認識させた。人新世という時代区分で定義する議論が流れているなかで、先進諸国に根付く人間中心主義に向けられた自然界からの批評と読み解くことができるかもしれない。こうした変革の時代の中、過去と未来、科学や芸術、文化などを横断する想像力が求められる。これまでの価値観から脱却しながら、新たな価値観に向かう問題提起となるキュレーションの手法とはいかなるものだろうか。
こうした問いに対して、哲学者ブルーノ・ラトゥールとともに台北ビエンナーレ2020「你我不住在同一星球上」(You and I Don’t Live on the Same Planet/あなたと私は違う星に住んでいる)を共同キュレーションしたマーティン・ギナール=テリンと、アート・サイエンス・アンソロポロジーを横断するデンマーク発のアート雑誌「プレソラマガジン」(PLETHORA MAGAZINE)を編集するピーター・ステフェンセンを招き対話する。日本からは、様々なアプローチで社会課題解決を試みているアーティストの長谷川愛氏、スペキュラティブ・デザイナーの川崎和也氏、建築家の砂山太一氏を迎え、解概念的な問いから雑誌や展覧会というメディアに落とし込んでいきながら、思考の跳躍を生み出す彼らとキュラトリアルな視点の可能性を探る。

※出演者やプログラム内容は、予告なく変更・中止になる場合がございます。

プロフィール

ゲストスピーカー

Photo: Keith Tsuji
エリック・シウ Eric Siu(アーティスト/”Be Water”)[香港/東京]
香港出身、東京在住のニューメディア・アーティスト。デバイス・アート、インタラクティブ・アートなどに幅広く興味を持ち、キネティック・アート、インスタレーション、映像、アニメーションなど多岐にわたる表現方法で活動。2010年にUCLA(カルフォルニア大学・ロサンゼルス校)デザイン・メディアアート学科でMFA(美術学修士号)取得後、東京大学・石川グループ研究室に2年間在籍、現在は国内のクリエイティブ・エージェンシーでクリエイティブ・ディレクターを務める。アジアン・カルチュラル・カウンシル財団による文化交流プログラムでアメリカ国内で12ヶ月間の研究滞在の経験を持つ。アルス・エレクトロニカ、台北当代芸術館(MOCA台北)、カールスルーエ・アート・アンド・メディアテクノロジー・センター(ZKM)、FILE、トランスメディアーレ、欧州メディアアートフェスティバル(EMAF)、WRO メディアアート・ビエンナーレ、シーグラフ・アジア(SIGGRAPH Asia)、エレクトロニック・アーツ・インターソサイエティー(ISEA)、マイクロウェーブ・インターナショナル・ニューメディアアーツ・フェスティバル(Microwave)、ソー・フォート(so fort)などで作品発表。シウの作品《Touchy》は、第15回 WRO メディアアート・ビエンナーレ(2013年、ポーランド、ヴロツワフ)で大賞を受賞。同作品はディスカバリー・チャンネル、ニューラル、ワシントン・ポスト、ハフィントンポスト、クリエイターズ・プロジェクト(VICE)など、多様なメディアで紹介されている。
https://ericsiu.net/
https://www.bewater.digital/


アーティット・スリヤウォンクン Arthit Suriyawongkul (AI倫理、データガバナンス・リサーチャー/Thai Netizen Network)[タイ]
コンピュータ科学者/人類学者。2006年以降、メコンICTキャンプ(Mekong ICT Camp)、キャンペーン・フォー・ポピュラー・メディア・リフォーム(Campaign for Popular Media Reform)、クリエイティブ・コモンズ・タイ(Creative Commons Thailand)、オープンドリーム(Opendream)などを通し、経済開発におけるICT(情報通信技術)の活用、ネット上の自由、ジャーナリズム、情報にまつわる権利などを専門に、多くの機関に対してコンサルティングを行う。2008年、タイ・ネチズン・ネットワーク(Thai Netizen Network)の共同設立に携わり、同団体にてデータ保護やオンライン上の表現活動、デジタルでの自己判断、ネットにおける参加型ガバナンスの分野に取り組む。
https://digitalreach.asia/


マーティン・ギナール=テリン Martin Guinard-Terrin(インデペンデント・キュレーター/Luma Foundation)[フランス]
キュレーター/LUMA財団。アルル在住。視覚芸術と美術史を専門領域とし、環境の変異をテーマにさまざまな学際的プロジェクトを手掛ける。第12回台北ビエンナーレのキュレーターや、「Critical Zones」展(ドイツ、カールスルーエ)の共同キュレーターとしても知られる。近年ではブルーノ・ラトゥール(哲学者、フランス)と共に「Reset Modernity!」(2016年、カールスルーエ・アート・アンド・メディアテクノロジー・センター)など、多岐にわたる海外プロジェクトを5年程実施。同プロジェクトは、「Reset Modernity! Shanghai Perspective」(上海プロジェクト2016、中国)や、「Reset Modernity! Tehran Perspective」(テヘラン大学インスティテュート・フォー・ザ・ヒストリー・オブ・サイエンス、イラン)など、ワークショップとしても巡回。その他の活動に、デンマーク・ヘアニングで開催のソウカル・デュ・モンド・ビエンナーレ(Socle du Monde Biennial)2000m²セクションの共同キュレーションなど。
https://zkm.de/en/exhibition/2020/05/critical-zones
https://www.taipeibiennial.org/2020/en-US


ピーター・ステフェンセン Peter Steffensen(「プレソラマガジン」編集長)[デンマーク]
大陸哲学を専門とし、コペンハーゲンに拠点を置く独立系アート出版社プレソラ(出版/デザイン)の代表を務める。コペンハーゲンに拠点を置く独立系アート出版社プレソラ(出版/デザイン)代表。プレソラ社の顔でもある「プレソラマガジン」は、雑誌とファインアートをハイブリッドさせ、哲学、科学、神話、民族現象、現代アートなどの普遍的なテーマの融合を、広告を一切排除した52ページのポスターサイズビジュアル(70×50cmの迫力サイズ)で紡ぎ出す、唯一無二の印刷媒体。伝統的な職人技に敬意を表するため、そして印刷物の未来を純粋なビジョンで繋げるため、プレソラ社の雑誌・書籍はすべてヒンドゥー教寺院の僧侶によって印刷されている。
http://www.plethoramag.com/

ゲスト


清水知子(文化理論、メディア文化論/筑波大学人文社会系 准教授)[日本]
愛知県生まれ。著書に『文化と暴力 揺曳するユニオンジャック』(月曜社、2013)、『ディズニーと動物 ─王国の魔法をとく』(筑摩選書、2021)、訳書にジュディス・バトラー『アセンブリ ─行為遂行性・複数性・政治─』(共訳、青土社、2018)、アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート『叛逆 マルチチュードの民主主義宣言』(共訳、NHKブックス、2013)など。


長谷川愛(アーティスト、デザイナー)[日本]
生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに、現代社会に潜む諸問題を掘り出す作品を発表している。IAMAS卒業後渡英。2012年英国Royal College of ArtにてMA修士取得。2016年MIT Media LabにてMS修士取得。2017年から2020年まで東京大学にて特任研究員。2019から早稲田大学非常勤講師。2020から自治医科大学と京都工芸繊維大学にて特任研究員。《(不)可能な子供/(im)possible baby》が第19回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞。森美術館、アルス・エレクトロニカなど国内外で多数展示。著書に『20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業 』(ビー・エヌ・エヌ新社、2020)。
https://aihasegawa.info/

Photo: KETA TAMAMURA
川崎和也(スペキュラティヴ・ファッションデザイナー、デザイン・リサーチャー、Synflux主宰)[日本]
1991年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科エクスデザインプログラム修士課程修了(デザイン)、現在同後期博士課程。主な受賞に、H&M財団グローバルチェンジアワード、文化庁メディア芸術祭アート部門、Dezeen Award Design Longlist、STARTS PRIZEなど。オランダ・ダッチデザインウィーク/南アフリカ・デザインインダバ招待作家。監修・編著書に『SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて』(ビー・エヌ・エヌ新社、2019)。


砂山太一(建築家、アーティスト、sunayamastudio主宰)[日本]
京都市立芸術大学美術学部総合芸術学科准教授。建築をは じめとした芸術領域における情報性・物質性を切り口とした制作・設計・企画・ 批評を手がける。近年の活動に「第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示」参加、 「新建築データ」ディレクションがある。
https://tsnym.nu/

グラフィックレコーダー


清水淳子(デザイン・リサーチャー、グラフィックレコーダー )[日本]
1986生まれ。2009年 多摩美術大学情報デザイン学科卒業後 デザイナーに。2013年Tokyo Graphic Recorderとして活動開始。2019年、東京藝術大学デザイン科修士課程修了。現在、多摩美術大学情報デザイン学科専任講師として、多様な人々が集まる場で既存の境界線を再定義できる状態 “Reborder”を研究中。著書に『Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディング』(ビー・エヌ・エヌ新社、2017)。

モデレーター


山峰潤也(キュレーター、一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表、ANB Tokyoディレクター)[日本]
1983年生まれ。東京藝術大学映像研究科修了。東京都写真美術館、金沢21世紀美術館、水戸芸術館現代美術センターを経て現職。メディア論を軸に、ニュー・メディアから現代美術の分野まで幅広い展覧会に従事。主な展覧会に「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」、「霧の抵抗 中谷芙二子」(以上、水戸芸術館現代美術センター)。「3Dヴィジョンズ」「見えない世界の見つめ方」「恵比寿映像祭(第4回-7回)」(以上、東京都写真美術館)。その他の活動に、IFCA(スロベニア、2011)、 Eco Expanded City(ポーランド、WRO Art Center、2016)などのゲストキュレーション、 2015年度文科省学芸員等在外派遣研修員、日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ・メンバー、Asian Art Award 2017, 2018 supported by Warehouse TERRADA選考委員など。
https://taa-fdn.org/


塚田有那(編集者、キュレーター、一般社団法人Whole Universe代表理事)[日本]
世界のアートサイエンスを伝えるメディア「Bound Baw」編集長。2010年、サイエンスと異分野をつなぐプロジェクト「SYNAPSE」を若手研究者と共に始動。2012年より、東京エレクトロン「solaé art gallery project」のアートキュレーターを務める。2016年より、JST/RISTEX「人と情報のエコシステム(HITE)」のメディア戦略を担当。近著に『ART SCIENCE IS.  アートサイエンスが導く世界の変容』(ビー・エヌ・エヌ新社、2018)、共著に『情報環世界 ─身体とAIの間であそぶガイドブック』(NTT出版、2019)、編集した書籍に『20XX年の革命家になるには─スペキュラティヴ・デザインの授業』(長谷川愛著、ビー・エヌ・エヌ新社、2019)がある。大阪芸術大学アートサイエンス学科非常勤講師。
http://boundbaw.com/

料金

無料

申込方法

事前申込制
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締め切り
各日、前日の22:00まで

※申込の自動返信を行いますのでartandmediadialogue@gmail.comからのメールを受信できるように設定ください。
※前日または当日に、視聴用URLをartandmediadialogue@mdr.co.jpよりご連絡します。
※個人情報は本事業の運営およびご案内にのみ使用します。

お問い合わせ

アート&メディア・ダイアローグ事務局(メディア・デザイン研究所)
TEL:03-5579-2877(平日10:00~17:00 ※土日・祝日は除く)
FAX:03-5579-2878
E-mail:artandmediadialogue@mdr.co.jp

開催場所

オンライン(Zoom ウェビナー/パソコンによる参加推奨)

クレジット

主催
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

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