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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2013/05/27

佐藤POレポート1 時間よ、とまれ

熊谷さんの「アートプロジェクトって何?」という問いかけから始まったPOレポート。毎月更新していくレポートの最初の投稿ということで、まずは、東京アートポイント計画の頻出単語「アートプロジェクト」への自分なりの違和感から話を始めてみたいと思います。

東京アートポイント計画のリサーチプログラム Tokyo Art Research Lab(以下、TARL)では「ブレインストーミング→企画→実施→検証・評価」という運営サイクルに基づいたプログラム設計が行われてきました。その発想の基礎にあるのが『アートプロジェクトの運営ガイドライン』です。2012年度に改訂された「運用版」には具体的な手順が一覧できるマップも付き、より現場で使いやすいものになりました。アートプロジェクトの「はじまり」から「おわり」まで、そして次の「はじまり」へつなげる運営を支えるためのツールとして制作されています。便利です。

「アートプロジェクト」という言葉を使うとき、この運営サイクルが想定する時間が折り込まれているように感じます。「プロジェクト」という言葉のもつニュアンスなのかもしれません。そして、それを日々の業務で出会う現場へあてはめようとするとき、どこからともなく違和感がよぎります。果たして、その活動を「アートプロジェクト」と言っていいのだろうか、と。一言でいえば、現場の活動が直面しているのは、プロジェクトという、ある一定の「期間」を対象とした活動だけではなく、NPO(組織)、拠点、多様な関係者との付き合いといった、終わりのない「日常」と向き合うことだと思うのです。

ところで、ひとつの動向が社会化(歴史化)されるには30年の時間がかかるように思います。最初の10年に先駆的な活動が生まれ、次の10年には、それを括る言葉が使われ始め、何となく共有された価値のもと実践が広がっていく。次の10年は社会的にひとつの動向として可視化される、一方で新たな課題や次の動向も生まれてくる。そういう時間のサイクルを「アートプロジェクト」という動向へもあてはめられるのではないかと思います。

通称「電話帳」。TARLで、もっとも頁数が多いドキュメントブック『日本型アートプロジェクトの歴史と現在 1990→2012』では、日本のアートプロジェクトの始まりを1990年代に設定しています。そうすると、前述の時間の流れにあてはめれば、2010年代の現在、「アートプロジェクト」は30年代に突入しています。「アートプロジェクト」という言葉に感じる居心地の悪さは、時を重ねた現実の変化と対応しているのかもしれません。

2009年に生まれた東京アートポイント計画の立脚点も、また、この30年の境目にあるように思います。過去20年間分の多様な意味を抱えた「アートプロジェクト」という言葉を引き受けながらも、現在形の課題へ取り組んでいく。プロジェクトの「期間」ではなく、プロジェクトを回す「日常」へ目を向けることを重視する(詳しい仕事内容は、坂本さんのレポートを参照ください)。

日々の業務の流れに身を任せていると、本当に、あっという間に時間が流れていきます。それこそ、プロジェクトの時間にどうしても引っぱられてしまいます。それでも、たまに立ち止まり、少し違った時間軸で現場の動きを眺めてみる。そこから、気づいたことを、月1回、更新していければと思っています。

東京アートポイント計画 プログラムオフィサー 佐藤李青

プロフィール
国際基督教大学卒業。東京大学大学院人文社会系研究科(文化資源学)修士課程修了。同博士課程。2007~08年度、小金井市芸術文化振興計画の策定に伴う小金井市と東京大学の共同研究グループに参加。2009~10年度、小金井アートフル・アクション!実行委員会事務局長。2011年6月より現職

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