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アーツカウンシル東京ブログ

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ACT取材ノート

東京都内各所でアーツカウンシル東京が展開する美術、音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクトなど様々なプログラムを外部ライターが取材し、現場の様子をお届けする取材日記です。

2018/03/12

神事体験やバックステージツアーも。知られざる能の世界に触れる特別な公演

2018年1月27日(土)。
「外国人向け伝統文化・芸能 体験・鑑賞プログラム」のひとつとして、品川区にある喜多能楽堂で「能『翁』-神々との邂逅」が行われました。

外国の方にも能楽の世界をより深く知ってもらうために、能の鑑賞と体験を組み合わせた特別なイベントです。
披露される演目は、「翁」「絵馬 女体」。開演前には体験プログラムが用意され、終演後にはバックステージツアーにも参加できるのです。

開演前、会場は多くの来場者でにぎわっていました。
伝統の日本文化が醸すおごそかな雰囲気に浸っている様子です。
そんななかロビーで行われたのは、「翁」の公演に欠かせないある神事。

「翁」は能楽のなかで最も神聖とされている演目。主人公の「翁」役を勤める役者は、開演前の楽屋で祭壇をつくって神事を執り行い、潔斎(けっさい/心身を清めること)をすると決められています。

この神事を、来場者も体験するというのが今回のプログラム。
鑑賞者も演者と同じように公演前に潔斎を行うことにより、舞台と客席の一体感を高めようという試みなのです。

能楽師に手順を教えてもらいながら、お神酒と塩で身を清めます。

一人ひとりに、能楽師が火打石で切火(きりび)を切ってくれます。
切火は、厄除けの力があるとされている日本古来の風習です。

体験プログラムを終え、能楽堂の中へ。美しい本舞台が来場者の目を引きます。

格調ある能楽堂の雰囲気を楽しみつつ、いよいよ開演。
まずは「翁」の上演です。


写真提供:前島写真店

外国人の来場者も多い今回のプログラムでは、上演中にイヤホンで解説を聞ける英語、中国語、日本語の音声ガイドが用意されています。
能は初体験の筆者も、日本語の音声ガイドを聞きつつ鑑賞。動作やセリフの意味、小道具の役割などをくわしく知ることができました。


写真提供:前島写真店

「翁」はストーリーがほとんどなく、儀式につきる演目です。
翁を勤めるは塩津哲生さん。能では、主役のことを「シテ」と呼びます。

観客たちが、息を飲むほど美しく、無駄のないその動きに見入ります。


写真提供:前島写真店

神聖な空気のなかで繰り広げられるダイナミックな舞いや、独特のリズムを刻む囃子。
その張りつめた迫力に、観客たちは見入っていました。


写真提供:前島写真店

続いての演目は、「絵馬 女体」です。
「翁」は単独で上演されることもありますが、そのあとに神々が主人公となる演目(脇能)も上演することが正式なかたちとされているそうです。

「絵馬 女体」は、天照大神(あまてらすおおみかみ)の神話を題材にしたもの。このなかに登場する天鈿女命(あめのうずめのみこと)という神の舞は、日本の芸能の始まりといわれているそうです。


写真提供:前島写真店


写真提供:前島写真店


写真提供:前島写真店

能の舞台では、囃子方の登壇や大道具・小道具の準備まですべてが観客の前で行われ、作品の一部となっています。
音声ガイドで最後に言っていた「何もない舞台から、何もない舞台に戻る。そこに何が残るのかが、能の命です」という言葉がとても心に残りました。

終演後は、バックステージツアーの始まりです。
専門家による舞台構造の解説を受けたあと、参加者たちは舞台上へ。細部を眺め、舞台からの景色を体感します。


写真提供:前島写真店

そのまま切戸口から舞台袖を通って、役者の楽屋へと移動します。

先ほどの「翁」で使われていた裳束やかつらを間近に見ることができ、参加者たちは皆、興味深そうに眺めていました。

ツアーの最後にはなんと、「絵馬 女体」の神々が舞台上の姿のままお見送り。
神々しく大迫力のその姿に圧倒されたのか、思わず写真におさめる外国人参加者の姿が印象的でした。

舞台を鑑賞するだけでなく、体験プログラムを通して能を身近に感じられた1日。
外国の方はもちろん日本人も、伝統文化のすばらしさに気づくことができる貴重な機会となったのではないでしょうか。


外国人向け伝統文化・芸能 体験・鑑賞プログラム「能『翁』-神々との邂逅」

  • 2018年1月27日(土)13:30(体験プログラム開始12:30)
  • 会場:十四世喜多六平太記念能楽堂(喜多能楽堂)
  • 主催:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
  • 助成・協力:東京都
  • イベントページ:https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/19128/

撮影:鈴木穣蔵
写真提供:前島写真店
取材・文:平林理奈

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