東京アートポイント計画通信
東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。
2013/12/26
大内POレポート 東京、ひろい。(8)
POレポート8回目。師走は忙しい、ということでブログも滞りがちです。年末年始はゆっくり過ごしたいものです。そこで「ゆっくり」という速度について。
先月、フェスティバル/トーキョー13で中野成樹、長島確*1の作品『四谷雑談集』+『四家の怪談』を観劇(体験?)しました。それぞれ四ツ谷、足立区の千住~五反野界隈を歩いて体験する演劇です。そこでスタート時に提示された「トーク・ウォーク(・パーク)」というフォーマット。言葉のリズムの心地よさもさることながら、体験の構造として、
0.後にも先にも物語を補完するブック
1.企画のガイダンス/物語の導入=トーク
2.実際にまちを歩いて物語を体験=ウォーク
3.物語を振り返る場所=パーク
となっていて、観客が入り込みやすい間口が用意されています。これらの情報をたよりに、観客は各々が歩く速度でまちを読み込み、それぞれの発見をし、物語を自分のものとして手に入れていく。そこに仕掛けられたささやかな手がかりとなるガイドの置き方・さじ加減につくり手の妙がありました。
体験としてじんわり残っている1か月後のつい先日、古巣の取手アートプロジェクト(=TAP)のまち歩き企画「アートなダンチてくてくウォーク!」に参加してきました。こちらは演劇ではありませんが、振り返ってみるとしっかりと「トーク・ウォーク・パーク」のフォーマットでした。プロジェクトサイトとなっている2ヶ所の団地を中心に、郊外都市の地域資源を味わうまち歩き。スポットごとに事務局スタッフ、アーティスト、企画担当ボランティア、カフェの店主、団地の住民がガイドとなります。参加者は3才から70代まで。かたや遊びながら、かたや四方山話を重ねながら、それぞれの関わり方でまちを体験していきます。体験の共有が互いに知らない者であるはずの参加者の間に会話を生み、コミュニケーションが生まれる。それを可能にするのが「ゆっくり」のスピードで共に歩く、という「まち歩き」のプログラムです。
TAPに関わって10年になりますが、今回も新たな発見と、人との出会いの連続でした。「プログラムへの参加」という関わりのみならず、事務局が企画作りのためにリサーチのまち歩きをすることも、まちの情報更新をつかまえる有効な手段と言えます。15年目のTAPにとっても、これから立ち上がるプロジェクトにとっても、定期的なまち歩き企画は、まちなかアートプロジェクトにおけるプラットフォームの維持管理手法のひとつ*2、ということを年の瀬にあらためて実感しました。
「ゆっくり」でないと見落としてしまうこともあるはず。一度速度を落として、振り返り、新しい年を迎えましょう。
よいお年を。
取手アートプロジェクト「アートなダンチてくてくウォーク!」 2013.12.23
*1長島確
日本におけるドラマトゥルクの草分けとして、コンセプトの立案から上演テキストの編集・翻訳・構成まで、身体や声とともにあることばを幅広く扱う。東京アートポイント計画では『墨田区/豊島区/三宅島在住アトレウス家』、『長島確のつくりかた研究所』など劇場外でのアートプロジェクトも主導。
*2
「墨東まち見世」アートプラットフォームでは、地域プラットフォームの維持管理のための事業として、毎年更新するアートスポットを掲載したMAPを制作している。また、そのMAPを用いたまち歩き企画「BOKU-to-TekuTekuまちみてさんぽ」も定期的に実施している。
【おしらせ】
TARL「プロジェクト実践ゼミ」の一環として実施している「岩田とも子のPPR空想地学研究所」のWEBサイトがオープンしました。
12月8日には最初のリサーチとなる観察会を実施。御徒町駅から研究所のあるアーツ千代田3331までの700mを2時間かけて歩きました。こちらもアーティストの視点で「まちなかにある植物」をテーマにしたまち歩き企画でした。
レポートはこちら
http://pprlab.jp/post/69563614051/1-3331-arts-chiyoda
東京アートポイント計画 プログラムオフィサー 大内伸輔