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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

東京アートポイント計画通信

東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。

2018/10/18

「豊か」って何?―プログラムオフィサー1年目日記(3)


【「ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―」(通称ファンファン)の打ち合わせにて。】

急激に暑さも和らぎ、実りの秋がやってまいりました。
オフィス入口を出たとたんにどこかから漂ってくる金木犀の香りには自然と口角もあがり、さらにそれを誰かと共有できたりすると、思わずこう感じてしまうのです。「うーん、満たされるなあ、豊かだなあ」と。

「豊か」。
東京アートポイント計画では、あるプロジェクトや活動について話すとき、このことばが使われることがあります。

例えば、7月29日(日)に開催され、先日レポートが公開された「Artpoint Meeting #06 –プロジェクトを育てる「活動拠点」のつくりかた」の中でも、”豊かなプロジェクトほど、豊かな活動拠点を持ち、上手に運用している”というフレーズが出てきました。

また、「小金井アートフル・アクション!」の事務局長である宮下美穂さんへのインタビューの中で、実施してきたワークショップには”豊かな細部がある”と述べられていたり、「東京ステイ」のディレクター石神夏希さんへのインタビューでは、石神さんが“いまの東京の宿泊体験は豊かと言えるのか”と問うています。

今年度4月から、さまざまなプロジェクトや活動を見聞きし、それらが「豊かである」と形容されることを見る中で、そのニュアンスの片鱗は見えてきたような気がします。

ここでいう「豊か」は、規模が大きいとか、財源が豊富であるとか、はたまた豪華で派手であるというような、経済的な余裕ではありません。感受性豊かや表情豊か、というように使われる「豊か」とも、近いようで少し違うようです。きわめてささやかな営みや、時にはある種の切実さをもった活動など、大小や多寡、数値では測りきれないものが「豊か」であることもあるのです。

それは、言いかえるのであれば、「活動や体験の強度・密度」とも言えるでしょうか。小さくても、分かりにくくても、いまの時代に必要なテーマを探求していたり、関わり方の幅があったり、プロジェクトに関わった個々人が印象強い体験をしたり。「豊か」なアートプロジェクトは、その強度や密度を求めてしっかり立とうとしている、あるいはもがいている、そんなイメージが浮かんできます。

季節としては豊かに実った穀物を収穫する時期ですが、東京アートポイント計画の共催事業はいつでも、「豊か」なプロジェクトを目指して奮闘中。特に、今年度の新規共催団体はいよいよ活動をスタートした、大事な時期です。

新規共催事業団体2件のうち、わたしは、「ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―」というプロジェクトを担当しています。いまは、共催団体の事務局の方々と一緒に事業計画を練っているところですが、ついついプロジェクトを「きれいにかたちにすること」「まとめること」を意識しすぎてしまい、プロジェクトが持っているはずの自由さや豊かさを奪ってしまっていたな、と反省することもしばしば。個人的には「プロジェクトを豊かにするための、プログラムオフィサーとしての関わり方とは?」という課題にも向き合いながら、共催団体の方々の話の中から事業を支えるキーワードを見つけたり、単年度ではなくもっと長い目で事業をイメージしてみたりしながら、模索しています。


【「学び」がひとつの軸である「ファンファン」。その軸をしっかりさせるため、改めて「ファンファンにおける『学び』ってなんだろう?」とブレストなどもしてみました。】

これがそろえば豊かになる、という基準はない。その分かりにくさ、複雑さがプロジェクトの強度であることもあるからです。ただ、十分条件はないとしても、これだけはあきらめてはいけない、という必要条件はあるはずです。その必要条件を見極めつつ、共催団体の皆さんとプロジェクトをつくっています。

「豊か」とは何か。逆説的なようですが、「豊か」ということばをつかえること、つかえる場所になること自体が豊かさへの一歩なのかもしれないなと、最近思います。「豊か」ということばは、いろいろな意味―時には正反対にも感じられる意味―を含んでいます。そのリスクを承知の上で、そのことばをつかえるということは、分かりやすい「豊かさ」ではない豊かさを知っている・信じている、そして相手ともそのマインドを共有できている、ということですから。

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