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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

行ってみた!!

美術、音楽、演劇、伝統文化、地域アートプロジェクトなど幅広いジャンルでプログラムを展開する東京文化発信プロジェクト。そこでは様々な出来事が起こり、多くの人々が関わっています。 外部ライターの吉岡が文プロの現場を見て歩き、聞いてレポートするシリーズ「今日は○▲□▼に行ってみた!」

2014/07/29

アートプロジェクトを知る「入門プログラム」レポート

Tokyo Art Research Lab(TARL)「思考と技術と対話の学校」の特別プログラムとして開講された入門プログラム「アートプロジェクトを知る」へ行ってきました。(6月26日(木)、東京文化発信プロジェクトROOM302)

講師は、学校長で東京アートポイント計画ディレクターの森司さん、東京アートポイント計画プログラムオフィサー、坂本有理さん、佐藤李青さん、TARL事務局の橋本誠さん、及位(のぞき)友美さん。今年開催される横浜トリエンナーレ2014を始めとする国際的な入門プログラム芸術祭などの大規模なアートプロジェクトから、地方で多様な展開をみせる小規模なアートプロジェクトまで、事例を読み解くエッセンスや情報収集方法を学びました。

■アートプロジェクトとは一体なにか? 〜クリストを事例に

森司さんは、前職の水戸芸術館現代美術センターで学芸員として担当したクリストをアートプロジェクトの事例として紹介。

1991年にアメリカ・カリフォルニアと茨城で開催された「アンブレラ・プロジェクト」は、1本の高さが6メートルもの巨大な傘を、カリフォルニアの砂漠地帯と茨城の水田地帯に点在させた作品です。その本数は1,000本以上。プロジェクトの実行予算は、クリストのドローイングやドキュメントの売り上げ金額から、つまり彼自身が労働することで調達をしています。それは、プロジェクトを実行する決定権は、作家自身が持つことを意味します。

「クリストを知ることで、アートプロジェクトとは一体なにかわかってもらえる」と森さん。
なにを観賞するか、どこまでをアートプロジェクトと呼ぶか、誰の意思でプロジェクトは動いていくのか。
この3点が、より豊かに楽しむためのポイント。アートプロジェクトを想起し、仕掛け、“ドライブさせていく”(森さんがよく用いる言い回しです)ときに、クリストの作品はいいお手本だそうです。

■プロジェクトは、突然変異ではなく必然をもって出来上がるもの

森さんは、文献を読み、過去の事例を知識としてもっておくことの重要性を強調されました。プロジェクトは、突然変異ではなく、必然をもって形になったもの。文献を読むことで、まだ評価を得ていなかったものが、新しく生まれていく様子を振り返ることができます。

いまだから読んでおきたい文献
「ホワイトキューブとストリート」(アートマネジメント研究 (7), 4-12, 2006 美術出版社)
別府現代芸術フェスティバル 混浴温泉世界ディレクターなどを務める芹沢高志さん(P3 art and environmentディレクター)によるテキスト。

現代美術のための専門オンライン辞書
artscape | Artwords http://artscape.jp/artword/index.php
現代美術用語が専門家の言葉で丁寧にまとめられています。クリストの作品についても丁寧に解説されています。

■多様な形態/目的で行われている各地のアートプロジェクト

坂本さん、佐藤さんからは「アートプロジェクトの成り立ち/アートプロジェクトとはなにか」と題してレクチャーが行われました。美術史家の加冶屋健司さん、水戸芸術館学芸員の竹久侑さんを始めとする専門家の方はどのようにアートプロジェクトを定義しているかそれぞれの解釈を紹介、また、アーティストの川俣正さん、蔡國強さん、大友良英さん、きむらとしろうじんじんさんなどの作品をもとに、アートプロジェクトが、観賞者や参加者などとどのような関係性を作り、成立しているか解説していただきました。


川俣正《汐入タワー》
一連の作品やプロジェクトを「ワーク・イン・プログレス」と呼んで、現地で構造物が完成するまでのプロセスを作品としている。東京アートポイント計画の一貫として制作された汐入タワーは、2011年に完成。今年7月19日(土)には、メンテナンス工事がワークショップ形式で行われた。「構造物そのものというより、存在することによって現場で起きるリアクションを重要視している作品」(佐藤さん)


「オーケストラFUKUSHIMA!」(プロジェクトFUKUSHIMA! )
大友良英が中心となって、楽器の得手不得手を問わず参加者を募りオーケストラを演奏。アーティストは、参加者に「楽器を鳴らしてください」など簡易な指示を出すだけで、参加者は鳴らしたいように音を出す。福島以外に東京、愛知、青森で開催。今年は札幌国際芸術祭2014で行われる予定

■アートプロジェクトを始める動機も様々 ~TERATOTERAの場合

東京アートポイント計画は、アートNPOやアーティストと恊働しながら、様々なアートプロジェクトを展開しています。2009年にスタートした「TERATOTERA」は、東京アートポイント計画との共催事業のひとつです。吉祥寺でアートセンターOngoingを運営する小川希さんがチーフディレクターを務めるプロジェクトで、現在JR中央線の高円寺駅から国分寺駅区間、地域でいうと杉並区、武蔵野市、多摩地域と広域で活動を行っています。

アートプロジェクトが始まるきっかけは様々で、アーティストが何らかの問題意識をもって立ち上げることもあれば、行政が地域の活性化や課題解決のためにアートプロジェクトを必要として始まるケースも。
TERATOTERAは、チーフディレクターのこんな思いをきっかけに始まりました。ニューヨークにはチェルシーやSOHOのようなアートを観るべき場所があるけれど、東京には「この街にいくといまのアートシーンがわかる」という場所がない——。その思いから、小川さんは中央線エリアに点在するイベントスペース、ギャラリー、ライブハウス、アングラカルチャーのスポットをネットワーク化して盛り上げていこうと活動を始めたそうです。


加藤翼《いせやコーリング》
TERATOTERAが企画したイベント「TERATOTERA祭り」で行われた作品で、吉祥寺にある老舗の焼き鳥屋、いせやが建替えのため解体された廃材を利用している。公園で骨組みを組み立て直し、ロープで引き興して、引き倒すというプロジェクト。約500名の参加者が集まった。加藤さんの引き興しプロジェクトは、震災後に訪れた福島・いわきでの活動がきっかけに始まりました。このイベントを支えていたのは、ボランティアで集まったスタッフ、テラッコ。現在登録者数は200名ほどいるそう。

■いま注目のアートプロジェクト/芸術祭

TARL事務局の橋本さん、及位さんは、「いま注目のアートプロジェクト/芸術祭」として、国内のプログラムを紹介。

初期の事例としてはアートフロントギャラリーの北川フラムさんが仕掛けた新潟の「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」がありますが、いまや全国各地に広がり、運営母体も様々、差別化を図りアーティストや会場選び、コンセプトなど多様な取り組みが行われています。

東京から最も近い地域では、この夏、横浜トリエンナーレ2014 が開催されます。今回で5回目を迎え、横浜美術館と新港ピアを主会場として開催されますが、「まちにひろがるトリエンナーレ」として、BankART Studio NYK、初黄・日ノ出町地区、象の鼻テラス、急な坂スタジオ、ヨコハマ創造都市センター(YCC)市内に点在する文化拠点と連動したプログラムが行われる予定です。橋本さんと及位さんは、これまで横浜のプロジェクトにも数多く取り組んでおり、地域の歴史的背景からそれぞれの拠点で行われるプログラムの概要まで丁寧に紹介していただきました。

▼今年度開催される主なアートプロジェクト/芸術祭
札幌国際芸術祭2014 | http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/
大館・北秋田芸術祭2014 | http://inukuma.jp/
みちのおく芸術祭 山形ビエンナーレ2014 | http://biennale.tuad.ac.jp/
アーツ前橋(美術館)| http://artsmaebashi.jp/
・中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス[会期終了] | http://ichihara-artmix.jp/
「大地の芸術祭の里」 越後妻有2014夏 | http://echigo-tsumari.jp/news/2014/06/news_20140623_01_2014summer
PARASOPHIA京都国際現代芸術祭 | http://www.parasophia.jp/
六甲ミーツアート | http://www.rokkosan.com/art2014/
小豆島 醤の郷+坂出港プロジェクト(アート小豆島・豊島2014)| http://relational-tourism.jp/
道後オンセナート | http://www.dogoonsenart.com/
第5回福岡アジア美術トリエンナーレ | http://fukuokatriennale.ajibi.jp/
国東半島芸術祭 | http://kunisaki.asia/

■参加するほど面白い 〜どこで情報を手に入れるか

「アートプロジェクトは、関わることでおもしろくなる。観るだけではなく、参加方法を模索していくとより楽しいのではないか」と橋本さんは話します。

ここからは、講座で紹介されたアートプロジェクトの開催情報や資料の収集方法を一部ですが紹介します。当日は、情報収集先や推薦文献をまとめた資料が受講生に配布されました。

◆インターネットを活用
展示情報を紹介したポータブルサイトや雑誌は、芸術祭の情報は豊富だけれど、地域アートプロジェクトの情報は、まだ手に入れづらいようです。アートプロジェクトの開催情報に特化したポータルサイトとしては、ノマドプロダクションが運営するProjectart.JP があります。マガジンハウスが運営するコロカルにもローカルアートレポートのコーナーなどで各地のアートプロジェクトの情報がたびたび取り上げられています。人材募集に関する情報は、ネットTAM のキャリアバンクが充実しています。アートマネジメントに関する情報も豊富です。

TARLのウェブサイトでは、講座の開催情報だけではなく、これまでの研究成果物やレポートを読むことができます。
・アートプロジェクトの「言葉」を編む 第2回・第3回公開研究会レポート(2013年)
http://www.tarl.jp/cat_report/6631.html
http://www.tarl.jp/cat_report/7421.html

・成果物一覧
http://www.tarl.jp/cat_output

◆アートスクールやトークイベントに参加する
講座やイベント会場には、全国各地から様々な情報が送られてきますし、同じ興味をもった仲間が集まります。そこで、イベントのチラシを手に取ったり、情報交換をしたりして、アートプロジェクトの情報を手に入れることができます。

TARLの他にも、東京・横浜にはいくつか定期的に講座を行っているアートスクールがあります。アーツ・イニシアチブ・トウキョウ(AIT)が運営する MAD、横浜の複合文化施設 BankART が運営するBankART School、大学が共同で運営する社会人向けのアートカレッジ 藝術学舎、3331 Arts Chiyodaが運営する ARTS FIELD TOKYO など。

◆全国各地のアートプロジェクトの関連資料を収集している「P+Archive CENTER」を活用する
TARLの講座で利用している東京文化発信プロジェクトROOM302(3331 Arts Chiyoda内)には、アートプロジェクトに関する様々な資料や、東京アートポイント計画に関する情報を閲覧することができる「P+Archive CENTER」が併設されていて、毎週木・金曜の開館日には一般公開を行っています。資料は、地域や分野ごとに整理されています。


この度「思考と技術と対話の学校」のコーナーを新設。これから充実させていくそうです。

【TARL情報】
「思考と技術と対話の学校」の基礎プログラムでは、7月6日(日)からいよいよ授業が始まりました。TARLでは、今後、様々な集中講座や研究会が開催されます。

詳しくはウェブサイトをご確認ください。
http://www.tarl.jp/cat_program

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