東京アートポイント計画通信
東京アートポイント計画は、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを共催することで、無数の「アートポイント」を生み出そうという取り組み。現場レポートやコラムをお届けします。
2019/06/14
開催レポート:クロストーク「まちから学ぶ、まちとつくる」(トッピングイースト×ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―)
アートプロジェクトから生まれる「気づき」や「悩み」とは? 2019年3月に開催したOpen Room2019「東京アートポイント計画の10年とこれから 2009年→2019年」の一環として、プロジェクトに伴走するプログラムオフィサーと東京アートポイント計画に参加するNPOが、1つのテーマを軸にプロジェクトを展開するなかで生まれた課題や可能性についてクロストーク「東京アートポイント計画の現在〜NPOとの5つの対話〜」を行いました。
クロストークの第2回目は「まちから学ぶ、まちをつくる」をテーマに、東京都墨田区を舞台に活動を進める2つのプロジェクト「トッピングイースト」と「ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―」(以下、「ファンファン」)が活動報告と意見交換を行いました。
登壇者:茂木紀子、花井雅保、村瀬朋桂(NPO法人トッピングイースト)、岡田千絵(BLOOMING EAST コーディネーター)、青木彬(一般社団法人うれしい予感)、ヨネザワエリカ(一般社団法人うれしい予感)
モデレーター:岡野恵未子(東京アートポイント計画 プログラムオフィサー)
トッピングイーストとは?
「トッピングイースト」は東東京エリアにおいて、パブリックな場所での音楽の展開可能性を追求するプログラムや、音楽プログラムへの多様な参加の手法を探り、音楽がまちなかでできることを拡張するプログラムを展開しています。現在は、「ほくさい音楽博」、「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」、「BLOOMING EAST」の3つのプロジェクトを並行させ活動中です。
「ほくさい音楽博」では、地域の子供達を招き、義太夫・和楽器・スティールパン・ガムランなど、馴染みの少ない音楽に触れる機会を設け、プロの音楽家との練習や、発表会などを行っています。2018年度の発表会には、約2300人が来場。人気プログラムとして定着しています。
2018年度ほくさい音楽博ダイジェスト
ほくさい音楽博 Photo Document(ドキュメントの概要はこちら)
「エレクトロニコス・ファンタティコス!」は古い電化製品を使ってオリジナルな楽器を産み出してきたアーティストの和田永が、あらゆる人を巻き込みながら新たな楽器を創作し、量産し、奏法を編み出し、徐々にオーケストラを形づくっていくプログラムとして2014年度にスタート。
現在では東京・茨城・京都など複数のエリアで活動を展開しています。
「BLOOMING EAST」は、音楽の枠に留まらずに活動する音楽家によるリサーチプロジェクト。2018年度はシンガーソングライターであり文筆家の寺尾紗穂さんが「戦争孤児」について、「水曜日のカンパネラ」を主宰するコムアイさんが「移民」のテーマのもとフィールドワークを進めました。公共の場を舞台に、これまでにない新たな音楽のありかたを目指しています。
>BLOOMING EAST × 寺尾紗穂 × CINRA.NET
「寺尾紗穂と再び東東京へ。辿り着いた、あるドイツ人宣教師の痕跡」
>BLOOMING EAST × コムアイ(水曜日のカンパネラ) × CINRA.NET
「コムアイが再び開拓する東東京。摩擦がある東京だからできること」
ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―とは?
「ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―」(通称:ファンファン)は、地域における「学び」をテーマに、2018年9月から墨田区北部墨東エリアを中心に活動を開始。既に多種多様な活動を行う人が多い同エリア。しかし、そうした活動が個々の領域で完結している、あるいは他者との共有ができていないことに着目し、地域で活動する人々に対して聞き取りを行うヒアリング・プロジェクト「WANDERING」をスタートしました。また、それぞれの経験を持ち寄りながら共有し学び合うためのレクチャーシリーズ「ラーニング・ラボ」を開催し、街をひとつの“学びの場”に見立て、地域の文化的な生態系のなかに循環を生むことを目指しています。
3月から新たに活動をコンスタントに伝えるメディアとして「ファンファンレター」を発行。月2回程度のペースで地域に向けた情報発信を試みています。
1枚の白地図を囲んでその人自身へ向き合うヒアリングプログラム「WANDERING」
ディレクターの青木彬さんよりできたての「ファンファンレターvol.1」の紹介。現在はvol.4まで発行されている。
まちから学ぶ、まちでつづける
同じ墨田区という地域で活動し、個々人のレベルでの交流はあるものの、互いのアートプロジェクトについてじっくりと言葉を交わすのは初めての機会となった両団体。彼らだけでなく、既に多様なアートプロジェクトが展開されてきた墨田区で活動しているということで、会場からは「プロジェクトの継続と経験の蓄積には、人の移動が及ぼす影響があるのではないか?」というこのエリアならではの質問があがりました。トッピングイーストのメンバーからは、「プロジェクトを進めていくにあたり、メンバーの出入りに伴い活動の詳細を繋ぎ止めていくことが難しい。対策として、記録の取り方や、ウェブツールなどの活用方法の検討が挙げられるが、それだけでは不十分であると考えています。」という現場ならではの苦労談が。一方、ファンファンの青木彬さんはその難しさに同意したうえで、「プロジェクトを見届けてもらう並走者(アーティストなど)を設けることで、活動が個人の経験として蓄積し、年月が経ったのちに様々な形で現れてくるのではないかと。そうした継承の仕方も意味のある活動だと考えています。」と話しました。
(クロストーク撮影・執筆:齋藤 彰英)
*infomation
トッピングイースト
2018年度で東京アートポイント計画としての共催を終了しました。2019年も各プロジェクト精力的に展開中です。
>Tokyo Tokyo FESTIVAL 企画公募採択事業 隅田川怒涛
ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―
2019年度のプログラムが進行中。今年度の活動拠点となる墨田区京島にあるアートスペースsheepstudioにてお披露目イベント「よ~い!ファンファン!」を実施。「ファンファンレター」もvol.4まで発行しました。7月にレクチャープログラム「ラーニング・ラボ」を予定しています。
最新情報はこちらから
クロストーク 開催レポート
>「東京の場所と物語に触れる」(東京ステイ×500年のcommonを考えるプロジェクト「YATO」)
*東京アートポイント計画からのご案内
・東京アートポイント計画について
・公式Facebookページで最新情報をお届けしています
・月刊メールニュース登録はこちらから
・書籍『これからの文化を「10年単位」で語るために ー 東京アートポイント計画 2009-2018 ー』発売中