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アーツカウンシル東京ブログ

アーツカウンシル東京のスタッフや外部ライターなど様々な視点から、多様な事業を展開しているアーツカウンシル東京の姿をお届けします。

アーツアカデミー

アーツカウンシル東京の芸術文化事業を担う人材を育成するプログラムとして、現場調査やテーマに基づいた演習などを中心としたコース、劇場運営の現場を担うプロデューサー育成を目的とするコース等を実施します。

2020/03/24

アーツアカデミー2019 第8回レポート:課題解決戦略レポートの最終発表会

アーツカウンシル東京が2012年から実施している「アーツアカデミー」。芸術文化支援や評価のあり方について考え、創造の現場が抱える問題を共有するアーツアカデミーは、これからの芸術文化の世界を豊かにしてくれる人材を育てるインキュベーター(孵化装置)です。当レポートでは、アーツアカデミーの各講座をご紹介していきます。


2019年度のアーツアカデミーもついに最終回。2020年2月25日(火)に開催された第8回目の講座では、本年度の学びの集大成ともいうべき課題解決戦略レポートを受講生11人が発表しました。今回のねらいは「芸術文化活動における課題解決の具体的な実装方法を提案、相互に思考を共有する」です。忙しい仕事の合間をぬいつつ、昨年9月からの7カ月間に亘って講座に参加してきた受講生は、毎回、芸術文化支援や評価のあり方を考え、創造の現場が抱える問題に関する学びを深めてきました。また、レポートの作成に当たっては、各々が取り上げたい課題の解決に向けた戦略と手段・方法、そして実現へ至る道のりを定め、期待される効果やインパクト、さらには今後の展望について、どのようにレポートにまとめるか、アドバイザーと個別に面談するなど、入念な準備を進めてきました。最終発表会では、受講生全員が10分間のプレゼンテーションを行い、アドバイザーを務めてきた若林朋子(わかばやし・ともこ)さんと小川智紀(おがわ・とものり)さんから、一人ひとりにフィードバックが寄せられました。会場には、アーツカウンシル東京の職員や昨年度の受講生も集まり、充実した議論の時間となりました。

課題解決戦略レポートの最終発表会の様子

課題解決戦略レポートのタイトルは以下のとおりでした(発表順)。

  • 碓井千鶴さん (国立映画アーカイブ特定研究員(教育・事業展開室)/Happy Tent ファウンダー)
    『映画・映像作品の海外展開に向けて』
  • 西崎萌恵さん (株式会社東急文化村)
    『民間企業と芸術・文化事業』
  • 根木一子さん (アーツカウンシル新潟プログラムオフィサー(社会包摂分野担当))
    『インクルーシヴな活動を求めている人へ、届けるために』
  • オリーブまちこさん(パーツ・パフォーミングアーツ(旧劇団東京人形夜)所属(マイムアーティスト・振付アシスタント))
    『少人数な運営体制でも、全てのお客様に快適な環境をつくる』

(左上)碓井千鶴さん(右上)西崎萌恵さん(左下)根木一子さん (右下)オリーブまちこさん

  • 脇坂兵吾さん(小劇場を中心とした演劇制作・プロデュース)
    『共有体験をより深め、あなたの「良い」を創り出す』
  • 五藤真さん(株式会社countroom代表取締役)
    『「楽しいバックオフィス」の輪郭を描く』
  • 細川洋平さん(演劇ユニット「ほろびて」主宰)
    『小さなカンパニーが孤立しないことから』
  • 藤岡審也さん(神奈川県 国際文化観光局 文化課 紅葉ケ丘駐在事務所 兼 県立青少年センター ホール運営課)
    『アートによる未來の人づくり―神奈川県立青少年センターにおける舞台芸術の取組の方向性について考える—』

(左上)脇坂兵吾さん(右上)五藤真さん(左下)細川洋平さん(右下)藤岡審也さん

  • 古橋果林さん(音楽ワークショップアーティスト/株式会社シアターワークショップ)
    『より開かれた「音楽の場」の創生を目指して』
  • 伊藤さやかさん(マルチリンガル演劇実行委員会(事務局、演出、ワークショップリーダー)/劇団MUSICAI(演出、作曲、ドラマツルギー、制作、プロデュース))
    『“違い”を楽しむ演劇空間を ―マルチリンガル演劇実行委員会 今までの戦略/これからの戦略―』
  • 大丸敦子さん(公益財団法人日本室内楽振興財団「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」広報担当)
    『コンクールをアップデートする −持続的なファンを作る取り組み−』

(左)古橋果林さん(右)伊藤さやかさん

オンラインで参加した大丸敦子さんの発表

碓井さんは、自らの経験に基づいて、日本の短編映画・映像を紹介する英語版データベースの構築の必要性について語りました。発表では、講座でも取り上げられた助成金やクラウドファンディング、プロボノの活用、他の組織と連携といった具体的な案が飛び出し、「データベースを基盤に、作家の海外展開をサポートしていきたい」と展望を述べました。
細川さんの発表は、「小さな単位で演劇活動を行っている人たちのカンパニーが長期的に活動するためにはどうしたらいいか」という問いに対する答えに迫るものでした。第1・2回の講師を務めた山元圭太(やまもと・けいた)さんの講座で登場した『ビジネスプラン見える化BOOK』(日本政策金融公庫)で示された「仲間・協力者を見つける」というポイントに着目して、立場や目線の近い関係者を募って対話の機会を設け、孤立しそうなカンパニーを対象としたシンポジウムの開催や資料のアーカイブ化、そして、SNSのグループ機能などを活用したオンラインでの意見交換の場作りといったアイデアを提案しました。そして、「孤立の回避や情報交換のために、こうした取組を通じて、緩やかな連帯を作りたい」とまとめました。
オンラインで発表に参加した大丸さんは、第3回の講師、伊藤美歩(いとう・みほ)さんの「ファンドレイジングとは“ファン度”を上げること」という言葉が響いたと言います。1993年以来3年に1度開催している「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」の広報を担当されていることから、大丸さんが見出した課題は「(個人の)応援者の顔が見えてこない、接点が薄い」という実状です。そこで、ファンドレイジングの手法を活用できるのではないかと考え、“ポスターアンバサダー”、サポーター(会員)制度の創設、Thank Youレター、過去の入賞団体のコンサートといった具体的な施策のアイデアが示されました。
いずれの発表も、講座を通じて得たアイデアや視点を踏まえつつ、受講生自身が抱える問題意識や課題を分析し、その解決策を探るという熱意に満ち溢れた濃密なものでした。会場で仲間の発表を聴く受講生にもしばしば深く頷く姿が見られました。発表後に寄せられた、アドバイザーからの温かくも、的確なコメントによって、俯瞰的な立場から新たな気づきも得られたのではないでしょうか。

若林朋子さん、小川智紀さんからの講評

全員の発表が終わって、小川さんは「社会と関わらない芸術というのは存在しない。『じゃあ、どう関われば世の中がちょっとおもしろくなるのか』というのを、皆さんと考えることができたのはすごく大きかった。場所は違うかもしれないけれど、これからも一緒に考えていきたい」と総括し、受講生全員の今後に期待を寄せました。また、若林さんからは、「11人のプレゼンテーションはそれぞれに違った内容であったけれども、要所、要所には通じる部分があったと思います。その共通点を大事にして欲しいと思いました。また、自分以外の視点を日頃からいかに取り込んでいくかというのも大事だと思います。この8回の講座を通じて、それを体感していただけたのではないでしょうか」との言葉が送られました。
今回の講座を通じて生まれた繋がりは、芸術領域や立場の垣根を超えた関係の始まりを強く予感させます。最後に修了証書を手にした受講生の顔には達成感と自信を見ることができました。受講生一人ひとりの次なる挑戦に期待がもたれます。
受講生11人の真摯な課題解決戦略レポートと、本事業の今年度の活動をまとめた報告書は2020年4月に公開予定です。ファシリテーター兼アドバイザーの小川さん、若林さんからの熱量のあるテキストも掲載します。是非、ご期待ください!

修了証書を手にした受講生とアーツアカデミー運営チーム

文責:大野はな恵
運営:特定非営利活動法人舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)

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